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[MZZ42-P02] 拓洋第5海山の鉄マンガンクラスト表面で確認された微生物の局在
キーワード:鉄マンガンクラスト、成長構造、DAPI染色、CARD-FISH
鉄マンガンクラストは、産業的に価値のある金属を含むことから、次世代の金属資源の一つとして認識されている。その形成過程に関する研究は盛んに行われているが、成長速度が極めて遅いこと(100万年に数ミリメートル)や、容易にアクセスできない深海に存在することなどから、包括的な理解は得られていない。柱状、波状、斑状、層状など、数十マイクロメートルから数ミリメートルのスケールの成長構造は、一般に鉄マンガンクラストで観察され、堆積プロセスを理解する鍵の一つとなっている。先行研究では、これらの構造は鉄マンガンクラスト表面の微生物の影響を受けている可能性が示唆されている(Kato et al., 2018, Kato et al., 2019)が、詳細は不明である。本研究では、鉄マンガンクラスト上の微生物の分布パターンと成長構造との関係を調べることを目的とした。
拓洋第5海山の異なる深度(1432 m、2988 m、5373 m)から、KR16-01航海において、遠隔探査機ハイパードルフィンを用いて採取した4試料について、川本法(Kawamoto, 2003)によって凍結切片を作成した。光学顕微鏡観察により成長構造を決定し、SEM-EDS分析により主要元素の分布パターンを調べた。さらに、DAPI染色とCARD-FISH (catalyzed reporter deposition-fluorescence in situ hybridization) 法を凍結切片に適用し、各成長構造内の微生物細胞の分布パターンを確認した。
1432 mから採取した試料では斑状構造が、2988 mと5373 mから採取した試料では柱状構造が発達していた。茶色がかった領域には、DAPIで染色された微生物細胞が密集している様子が確認できた。染色された微生物細胞は、柱状構造の試料に比較的多く、斑状構造の試料では比較的少なく確認された。CARD-FISH法でも同様の細胞分布パターンが観察されたが、バックグラウンド蛍光が比較的高いため、プロトコルの改良が課題として残った。SEM-EDS分析による元素マッピングの結果、茶色がかった部分では、他の部分に比べて鉄マンガンクラストの主成分であるマンガンの量が少ないことが示され、Kato et al. (2018)による先行研究と同様の傾向が観察された。以上の結果から、柱状構造の形成と局所的な元素組成の変化に微生物が寄与している可能性が示唆された。
[Ref.] Kato et al. (2018) Microbes Environ. 33, 366-377. Kato et al. (2019) PLoS ONE 14(11): e0224888, Kawamoto (2003) Arch. Histol. Cytol. 66, 123–143.
拓洋第5海山の異なる深度(1432 m、2988 m、5373 m)から、KR16-01航海において、遠隔探査機ハイパードルフィンを用いて採取した4試料について、川本法(Kawamoto, 2003)によって凍結切片を作成した。光学顕微鏡観察により成長構造を決定し、SEM-EDS分析により主要元素の分布パターンを調べた。さらに、DAPI染色とCARD-FISH (catalyzed reporter deposition-fluorescence in situ hybridization) 法を凍結切片に適用し、各成長構造内の微生物細胞の分布パターンを確認した。
1432 mから採取した試料では斑状構造が、2988 mと5373 mから採取した試料では柱状構造が発達していた。茶色がかった領域には、DAPIで染色された微生物細胞が密集している様子が確認できた。染色された微生物細胞は、柱状構造の試料に比較的多く、斑状構造の試料では比較的少なく確認された。CARD-FISH法でも同様の細胞分布パターンが観察されたが、バックグラウンド蛍光が比較的高いため、プロトコルの改良が課題として残った。SEM-EDS分析による元素マッピングの結果、茶色がかった部分では、他の部分に比べて鉄マンガンクラストの主成分であるマンガンの量が少ないことが示され、Kato et al. (2018)による先行研究と同様の傾向が観察された。以上の結果から、柱状構造の形成と局所的な元素組成の変化に微生物が寄与している可能性が示唆された。
[Ref.] Kato et al. (2018) Microbes Environ. 33, 366-377. Kato et al. (2019) PLoS ONE 14(11): e0224888, Kawamoto (2003) Arch. Histol. Cytol. 66, 123–143.