日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-ZZ その他

[M-ZZ46] ジオパークとサステナビリティ(ポスター)

2024年5月26日(日) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:松原 典孝(兵庫県立大学大学院 地域資源マネジメント研究科)、郡山 鈴夏(フォッサマグナミュージアム)

17:15 〜 18:45

[MZZ46-P01] ジオパークが発信する災害情報 ー令和6年能登半島地震を例にー

*鈴木 比奈子1,2、杉本 伸一3,4佐藤 公5,6中川 和之7 (1.栗駒山麓ジオパーク推進協議会、2.国立研究開発法人 防災科学技術研究所、3.雲仙岳災害記念館、4.島原半島ジオパーク協議会、5.磐梯山噴火記念館、6.磐梯山ジオパーク協議会、7.時事通信社)

キーワード:令和6年能登半島地震、ジオパーク、災害情報、方法発信、ネットワーク

1.目的
2024年1月1日に発生した能登半島地震(以下、2024年能登半島地震)を受け、日本ジオパークネットワーク防災ワーキンググループ(以下、JGN防災WG)では、この地震災害の概要をA0一枚にまとめたポスター(以下、概要ポスター)を作成し、JGNのウェブページおよびSNSで公開した。ポスター作成の目的は、科学的根拠に基づいた自然災害の情報を概要としてまとめたものを提供し、ネットワーク加盟地域の中で発生した自然災害への理解を促進することである。本稿では、日本全国に広がるジオパークネットワークを用いた自然現象の発信の実践事例を報告する。
2.経緯
JGNでは、災害発生時に災害に関する情報収集及び発信などを行う、「日本ジオパークネットワーク災害対応方針(2011)」がある。JGN防災WGでは、甚大な被害を与える台風や大雨など気象災害の防災学習推進と啓発を目的に、パネル展示に利用できるポスターデータ全16枚を2022年6月に公開した。この気象災害ポスターは、包括的連携協定を結ぶ(国研)防災科学技術研究所と協力し作成したもので、台風、集中豪雨など現象のメカニズムの解説や、2018年西日本豪雨などの気象災害事例の概要である。ポスターの作成は、その現象を専門とする研究者が担い、内容をジオパーク側で選択し、拠点施設等で展示可能な形式とした。これらの経緯から、2024年能登半島地震においても概要ポスターを作成し、災害情報の発信を行うこととした。
2024年能登半島地震の概要ポスターは、2024年1月4日午後に企画が立ち上がり、1月6日夜に第一稿が完成した。防災WG内で回覧し、修正を行った後に1月9日にJGNのSNS、特設ウェブページで公開した。2024年2月1日時点では、調査研究の進捗に伴い、第2版まで作成している。
3.概要ポスターの構成
ポスターの構成は、①災害全体の3文程度の要約、②災害現象の基礎的な情報、③主要な現象によって二次的に発生した現象などの紹介、④被害の概要、⑤出典から成る。1枚でまとめることとしている。出典はすべて公的機関からの情報としており、②は気象庁と防災科学技術研究所、③は国土地理院や産総研地質調査総合センター、④は被災都道府県、総務省消防庁や内閣府防災から情報を取得した。
ポスターは、ニュースのような速報性を求めるものではなく、この災害現象が、いつ、どこで、どのようなメカニズムで発生し、それによって自然界ではどのようなことが起こり、人間社会ではどのような被害が生じているのか、という点を焦点にまとめた。図表の出典は、最初期の画像をのぞき二次利用可能なものを選択した。当初は2日おきにデータを更新していたが、1月11日より週1回更新を基本として、調査結果や新しい見解が出され次第、都度更新することとした。
4.活動の展開
2024年1月11日に、JGN主催で概要ポスターの解説と当該災害の勉強会をオンライン開催した。また9日の資料公開後に複数のジオパークから、拠点施設や役場の支所に展示したと報告があり、全国のジオパークで利用・展開したことが分かった。ポスター掲示の方法は、最新の地震災害の解説資料としての利用のほか、被害状況のみ毎日更新する仕組みをつくる、募金箱と一緒に展示することで地震の説明資料として利用する、ポスターと合わせて、専門員の解説を追記する、この地震を自地域で自分事にするための勉強会の企画立案、ポスターをきっかけにより自地域向けの展示を作るなど、各地域での自然災害への解説や防災活動を促すコンテンツとしての展開が見られた。
利用したジオパークの専門員からは、複数の業務を抱える専門員が作業時間を確保するには難しいなか、JGN防災WGとしてデータ提供されたことは有用であったといった感想が寄せられた。
5.課題、まとめ
 災害WGとして今回、地震災害発生後から発生した自然災害への理解を促進するために概要ポスターを作成した。ジオパークは、日本全国にネットワークとしてつながっていることが利点であり、今回の取り組みはその仕組みが有意に働いたと考えられる。専門員が求める一定の品質の災害資料を提供したことは、必ずしも多くはない専門員の負担軽減や「地域ごと」にするきっかけとして一定の成果が得られた。今後は、更新頻度や実施期間や災害情報発信の効果的な方法について、さらなる検討をすすめる。
【参考】
・日本ジオパークネットワーク災害対応方針(2011)
https://geopark.jp/jgn/pdf/press_release20160419_02.pdf