日本地球惑星科学連合2024年大会

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[J] ポスター発表

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[O-02] なぜ生物は生体鉱物を作るのか?〜アート思考による科学の進展〜

2024年5月26日(日) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:荒木 優希(金沢大学)、豊福 高志(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、長井 裕季子(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)


17:15 〜 18:45

[O02-P01] 有孔虫が作り出す多様な殻形態 -ミクロの建築現場-

*長井 裕季子1豊福 高志1,2 (1.国立研究開発法人 海洋研究開発機構、2.東京海洋大学)

キーワード:有孔虫、形態、バイオミネラリゼーション、アート性

有孔虫は主に海洋に生息する単細胞生物で、先カンブリア時代から現在まで地球に存在する原生生物である。現生においては4000種ほど、化石種を合わせると5-10万種ほどいると推定されている分類群である。殻の配置や構造、装飾の有無などの形態によって種が分類されている。つまり、5万以上の形態種が認められる、形態的な多様性が比較的高い分類群であると言える。大きさは数マイクロメートルから手のひらサイズのものまで様々であるが、ほとんどが肉眼では砂粒にしか見えないため、一般に形態にそれほど多様性のある分類群が存在することがあまり知られていない。有孔虫は単細胞生物であるにも関わらず、その殻構造は複雑である。これは有孔虫がチャンバーと呼ばれる小さなユニットを連ねていくことで成長するためである。日本では、大型有孔虫の一種である「星砂」が広く一般に知られている。この星砂の殻も複雑な殻室と複数の棘からなっている特徴的な形態を呈している。その他にも岩礁や深海に生息する底生有孔虫や海洋の表層でプランクトン生活をしている浮遊性有孔虫などが存在しているが、我々は、この多様な殻はどのようにして形作られるのかについて多角的な観察を行うことで解き明かそうとしている。特に、有孔虫の殻形成機序について光学顕微鏡を使ったタイムラプス撮影や電子顕微鏡を用いた超微細構造観察を駆使することで、このミクロの建築現場の様子が徐々に明らかになってきつつあるところである。本発表では有孔虫の殻形成過程の機序を紹介し、その多様な殻ができる様子を観察する手法的な工夫などについても議論を行う。