日本地球惑星科学連合2024年大会

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[O-04] 海洋科学の魅力の伝え方講座

2024年5月26日(日) 09:00 〜 10:30 101 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:原田 尚美(東京大学)、野口 真希(国立研究開発法人海洋研究開発機構 地球表層システム研究センター)、座長:野口 真希(国立研究開発法人海洋研究開発機構 地球表層システム研究センター)、原田 尚美(東京大学)

10:00 〜 10:15

[O04-05] 海を覗けば、地球が見える ~小中高生に伝える海洋科学~

*野口 真希1金谷 有剛1、市原 盛雄2、野牧 知美2、齊藤 ひかり3、杉浦 玲佳4 (1.国立研究開発法人海洋研究開発機構 地球表層システム研究センター、2.国立研究開発法人海洋研究開発機構 海洋科学技術戦略部 広報課、3.国立研究開発法人海洋研究開発機構 人事部 人事企画・ダイバーシティ推進課、4.国立研究開発法人海洋研究開発機構 研究推進部 研究推進第1課)

キーワード:海洋科学、STEAM教育、女子中高生の理系進路選択応援、サイエンスコミュニケーション

昨今の気候変化にともなう海洋環境の変化、例えば北海道や東北沖の海洋熱波の発生の増加や、同地域でサワラやブリが良く獲れるようになるなど、水温のみならず生物の生息域にも変化がみられ、海洋生態系に与える影響が危惧されています。このように、気候問題は、私たちの日常生活にも影響を及ぼす身近なものとなってきています。近年、テレビなどの各媒体を通じて「持続可能な開発目標:SDGs(Sustainable Development Goals)」が日本でも広く知られるようになってきました。2030年までに達成すべき持続可能な開発目標として、17の世界的目標と169のターゲットが構成されており、目標14の「海の豊かさを守ろう」では「夢のある魅力的な海」「生産的な海」「健全で回復力のある海」など7つの社会的目標が掲げられています。言い換えると、近年の「海」について目標達成には程遠い状態であり、社会全体で一刻も早く解決するべきことを意味します。この達成のためには、地球環境・気候問題を単なる海洋科学者の知識の中だけの議論に留まらせず、社会全体がサイエンスを理解した上で、様々な環境問題に関する施策に対し意思決定できるシステム作りが必要です。すなわち、人間を含む生態系を取り巻く環境にどのような課題があるのかについて関心をもってもらい、その課題に向けて私たちに何ができるのか、科学的根拠に基づいて正しく人々に伝えることで目指す方向性を一緒に考える機会を作ることが重要となります。一方で、科学技術分野(いわゆる理数系分野)は世界的に人材不足が懸念されています。海洋科学に関する専門委員会 ユネスコ政府間海洋学委員会(IOC-UNESCO)による2020年の報告書によれば、日本を含めた幾つかの先進国において、海洋に携わる研究者の50%以上が45歳以上であり、若い科学者の参加を促進することが早急に求められています。
このような中、海洋研究開発機構(JAMSTEC)では、研究者による一般向けの講演会や、学校等の授業で使える教材の制作など様々な活動を進めています。例えば、地球環境・海洋科学をより身近に感じてもらえるよう、最新の科学的知見を分かりやすく伝える「地球環境シリーズ」講演会を毎年開催し、毎回500人を超える参加者(オンライン視聴も含む)があります。また、海と地球を研究するJAMSTECが取り組む研究開発のテーマについて、これからの社会を担う若い世代の方々へ伝えるための「マリン・ディスカバリー・コース」というレクチャープログラムを学校団体向けに実施しています。さらに、課題解決型の教育手法として昨今注目されているSTEAM(Science, Technology, Engineering, Art, Mathematics,)教育によって、地域の子供たちへの海洋リテラシー向上と人材育成の実現に向けて、海洋STEAM事業を2023年度から開始しました。他にも、女子中高生の理系進路選択応援のための女性研究者による講演会イベントの開催や、中高生との対話機会の拡大などにより、学生やその保護者の興味や関心、理解を深めるための取組みを推進しています。これらの多様な活動を組織化し、効果的に科学の情報や面白さを浸透させてゆくにはどうすべきか、その課題や方向性について、議論を深める機会とします。