日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

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[O-07] キッチン地球科学:多様な到達点を生む実験

2024年5月26日(日) 09:00 〜 10:15 国際会議室 (IC) (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:熊谷 一郎(明星大学理工学部)、鈴木 絢子(東洋大学)、下川 倫子(奈良女子大学)、栗田 敬(東京工業大学 地球生命研究所)、座長:熊谷 一郎(明星大学理工学部)、鈴木 絢子(東洋大学)、下川 倫子(奈良女子大学)、栗田 敬(東京工業大学 地球生命研究所)

09:00 〜 09:15

[O07-01] 東京スカイツリーで気圧をはかろう

★招待講演

*はしもと じょーじ1、千秋 博紀2、仙田 明大3、堀籠 美枝子3 (1.岡山大学学術研究院自然科学学域、2.千葉工業大学惑星探査研究センター、3.日本科学協会)

キーワード:気圧、電子工作

上に載っている空気の重さが気圧になる.すなわち,上に上がれば気圧は下がり,下に下がれば気圧は上がる.これが事実であることは,1648年にフロリン・ペリエが平地と山上で気圧を測定して確認した.この歴史的な気圧の測定を再現するべく,気圧計を持って東京スカイツリーのエレベーターに乗ってみた.
今回,気圧の測定にはラズパイマガジン2018年10月号で取り上げられていた IoTCAP を使用した.IoTCAP は Raspberry Pi の GPIO に取り付けて使用する拡張ボードで,温度,湿度,気圧を測定するセンサーと,測定値を表示する液晶ディスプレイを備えている.IoTCAP は全部品を実装した完成品が販売されていたので,それを購入した(部品を買って自分で組み立ててもよいのだが,小さい部品も多いのではんだ付けに自信がない人は完成品を購入するのがよいと思う).IoTCAP を Raspberry Pi Zero WH に接続して電源をオンにするだけで,液晶ディスプレイに温度,湿度,気圧などが表示される.また,ネット上で配布されているスクリプトをインストールすれば,温度・湿度・気圧を自動的に記録することもできる.
エレベーターに乗る前に,まず地上で気圧の測定をおこなう.できれば2つの高さ,例えば机の上と下で,気圧を測定する.それぞれの高さで1秒ごとに30回の測定をおこなって,気圧の平均を求める.机の上と下の気圧差は小さいので1回だけの測定だとランダム誤差に埋もれてしまうが,30回くらい測定して平均をとると机の上と下の気圧差を求めることができる.机の上と下の気圧差が測定できたら,机の高さと組み合わせてスカイツリー展望台(地上350m)に上がったときの気圧を予想する.
エレベーターに乗ったら,気圧計の表示から目を離さないようにする.上昇(下降)するにつれて,気圧はどんどん下がって(上がって)いくことを確認する.気圧の時間変化率を記録すれば,そこからエレベーターの上昇(下降)速度を求めることができる.東京スカイツリーのエレベーターは日本最速を謳っているので,上昇(下降)速度を測定して嘘がないか確認する.スマホに加速度計測のアプリをインストールしてあるなら,エレベーターで上昇中(下降中)の加速度を見るのもいいかもしれない.
展望台に到着してエレベーターを降りたら,気圧を測定して,エレベーター乗車前に計算した予想気圧と比べてみる.また,展望台と地上の気圧差と展望台の高さから,空気の密度を計算する.さらに,状態方程式を使うと,密度から大気の温度を計算することができる.
高いところに上がるときは,気圧計を持っていくことをお勧めする.