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[O08-P04] 表面波探査・ボーリングデータの分析による飯山高校直下における断層変位の可能性
キーワード:表面波探査、長野盆地西縁断層帯、ボーリングコア
1.動機及び目的
1847年善光寺地震の際に生じたと考えられる段差が学校周辺に存在し(1),都市圏活断層図(2)によると断層が学校の地下にも存在する可能性もあるため断層の存在を明らかにする。
2.実験・分析方法
① ボーリングコアの観察・記載
飯山高校内に保存されていたH22No.1 ボーリングコア30mを観察し,柱状図を作成した。色,粒度,堆積構造,火山灰,有機物などの記載を行った。
②千曲川現河床の堆積物調査
飯山市千曲川河川敷で現在の千曲川の堆積物の粒度や構造について観察した。
③粒度分析
ボーリングコアの観察から,堆積物をシルト・砂・礫・シルト~礫が混ざっているものの4タイプに分け,それぞれ,わんがけ,乾燥,ふるいわけ,粒径ごとの質量測定,乾燥質量の残留率,粒度別積算曲線とヒストグラムを作成した。
④14C 放射年代測定
H22No.1 ボーリングコア深度-23.65mの植物片を用いた。
⑤ボーリング資料の比較検討
飯山高校内と学校周辺のボーリング資料のデータを比較検討した。
⑥表面波探査
飯山高校敷地内の2測線で表面波探査を行った。表面波探査とは,弾性波の一種である表面波の相対速度が主に地盤の S 波速度構造を反映することを利用し,人工的に加振して発生させた表面波の位相速度を測定して,地盤 S 波速度を推定する手法である。N 値とは,63.5±0.5kg の錘を30cm 打ち込むのに要する数である(3)。
3.結果と考察
①ボーリングコアの観察・記載
固結〜未固結の礫・砂・泥の堆積物で,泥,砂,礫が繰り返して堆積しており,クロスラミナが多く見られたことから,ボーリングコアの地層は,河川成堆積物である(4)と考えられる。-5.25〜-5.30m ではガラス質火山灰, -21.6〜-21.65m では輝石が目立つ火山灰,-23.45〜-23.50m では紫灰色火山灰が観察できた。
②千曲川現河床の堆積物調査
①で観察できたものと特徴が似た堆積物が観察できた。よって、飯山高校ボーリングコアは河川成の堆積物であると考えられる。
③粒度分析
-11.55〜-11.60mは礫主体、-26.85〜-26.90mは砂主体、-28.65〜-28.70m は砂主体だった。これらは淘汰が良く、河川の水流による堆積物だと考えられる。-17.65〜-17.70m は残留率が 77.6%で泥が比較的多く,淘汰が悪かった。淘汰が悪い層は泥流や土石流による堆積物だと考えられ(4),柱状図から複数回起きていると考えられる。
④14C 放射年代測定
-23.65m の木片の測定により、37049±311(yrBP)の値を得た。
⑤ボーリング資料の比較検討
・ H22No.2,H22.No.3,H22No.1,S57No.3ボーリングコアの比較
N 値 50 以上が 5m以上の深さ(工学的に建物の支持基盤となりうる地盤の深度)を比較すると , H22No.2,No.3,S57No.3 ,と H22No.1 では,約 3mの差があり,西側の方が高かった。また,H22No.1 ボーリングコアでみられた紫灰色火山灰の深度も約 2.5m の差があり,西側の方が高かった。よって,H22No.2,No.3 ,S57No.3と H22No.1 の間では,西側が上がり東側が下がる変位が生じていると考えられる。
・HZ-IY-B4 ボーリングコア(5)との比較
飯山高校 H22No.1 ボーリングコアでは,標高 291.1m で 37049±311yrBP の年代値が得られ,飯山高校から南に約 1km の地点の HZ-IY-B4 では,標高 304m で 38630±430yrBP の年代値が得られている(5)。2 地点の年代値がほぼ同じで,堆積物もシルト主体の細粒と同じであることから,同時代に同じような環境で堆積したと考えられる。2 地点が 37000 年前,仮に同じ標高にあったとすると,37000 年間に約13mの垂直変位が生じたと算出できる。
⑥表面波探査
H22No.1 ,H9No.1 ,H9No.2 ボーリング柱状図の N 値 40 以上の層、表面波探査結果のの N 値 40 以上の層、H22No.1 ボーリングコアの淘汰の悪い層(泥流・土石流)が一致した。N値40以上の部分がH22No.1・H9 No.2とH9No.1 の間で西が高く東が低い約3mの変位が生じている。
表面波探査結果と飯山高校内のボーリング柱状図を元に,1/200 スケールで簡易立体模型を制作し,立体的に地層の分布や構造を考察した。飯山高校内には,西上がりの逆断層が存在する可能性があり,西上がりの逆断層の性質は,長野盆地西縁断層帯の性質と一致する(6)。さらに,この断層は,長野盆地西縁断層帯のひとつである推定断層が飯山高校内へと延長したものだと考えられる。
4.まとめ
・飯山高校の地下は河川が運んだと考えられる礫・砂・泥の堆積物でできている。
・飯山高校が建っている場所には,37000年前から現在までに複数回,泥流・土石流が来ている。
・飯山高校内には,長野盆地西縁断層帯の一部と考えられる西上がりの逆断層が存在する可能性がある。
5.今後の展望
・ボーリングコアの詳細な分析(礫種、火山灰分析、C14年代測定、粒度分析)を進める。
・表面波探査を実施し,ボーリング資料と比較し,地下構造,断層の存在を明らかにしていきたい。
6.参考文献
(1)杉戸信彦(2013)・(2)地理院地図(電子国土Web)・(3)地盤工学会(2016)・(4)ウィリアム J.フリッツ・ジョニー N.ムーア著 原田憲一訳(1999)・(5)杉戸信彦・松多信尚・廣内大助・石山達(2013)・(6)地震本部 長野盆地西縁断層帯(信濃川断層帯)HP
7.謝辞
本研究は,2023年度飯山市高校生チャレンジ,2023年度長野県学校科学教育奨励基金の補助のもと行いました。
1847年善光寺地震の際に生じたと考えられる段差が学校周辺に存在し(1),都市圏活断層図(2)によると断層が学校の地下にも存在する可能性もあるため断層の存在を明らかにする。
2.実験・分析方法
① ボーリングコアの観察・記載
飯山高校内に保存されていたH22No.1 ボーリングコア30mを観察し,柱状図を作成した。色,粒度,堆積構造,火山灰,有機物などの記載を行った。
②千曲川現河床の堆積物調査
飯山市千曲川河川敷で現在の千曲川の堆積物の粒度や構造について観察した。
③粒度分析
ボーリングコアの観察から,堆積物をシルト・砂・礫・シルト~礫が混ざっているものの4タイプに分け,それぞれ,わんがけ,乾燥,ふるいわけ,粒径ごとの質量測定,乾燥質量の残留率,粒度別積算曲線とヒストグラムを作成した。
④14C 放射年代測定
H22No.1 ボーリングコア深度-23.65mの植物片を用いた。
⑤ボーリング資料の比較検討
飯山高校内と学校周辺のボーリング資料のデータを比較検討した。
⑥表面波探査
飯山高校敷地内の2測線で表面波探査を行った。表面波探査とは,弾性波の一種である表面波の相対速度が主に地盤の S 波速度構造を反映することを利用し,人工的に加振して発生させた表面波の位相速度を測定して,地盤 S 波速度を推定する手法である。N 値とは,63.5±0.5kg の錘を30cm 打ち込むのに要する数である(3)。
3.結果と考察
①ボーリングコアの観察・記載
固結〜未固結の礫・砂・泥の堆積物で,泥,砂,礫が繰り返して堆積しており,クロスラミナが多く見られたことから,ボーリングコアの地層は,河川成堆積物である(4)と考えられる。-5.25〜-5.30m ではガラス質火山灰, -21.6〜-21.65m では輝石が目立つ火山灰,-23.45〜-23.50m では紫灰色火山灰が観察できた。
②千曲川現河床の堆積物調査
①で観察できたものと特徴が似た堆積物が観察できた。よって、飯山高校ボーリングコアは河川成の堆積物であると考えられる。
③粒度分析
-11.55〜-11.60mは礫主体、-26.85〜-26.90mは砂主体、-28.65〜-28.70m は砂主体だった。これらは淘汰が良く、河川の水流による堆積物だと考えられる。-17.65〜-17.70m は残留率が 77.6%で泥が比較的多く,淘汰が悪かった。淘汰が悪い層は泥流や土石流による堆積物だと考えられ(4),柱状図から複数回起きていると考えられる。
④14C 放射年代測定
-23.65m の木片の測定により、37049±311(yrBP)の値を得た。
⑤ボーリング資料の比較検討
・ H22No.2,H22.No.3,H22No.1,S57No.3ボーリングコアの比較
N 値 50 以上が 5m以上の深さ(工学的に建物の支持基盤となりうる地盤の深度)を比較すると , H22No.2,No.3,S57No.3 ,と H22No.1 では,約 3mの差があり,西側の方が高かった。また,H22No.1 ボーリングコアでみられた紫灰色火山灰の深度も約 2.5m の差があり,西側の方が高かった。よって,H22No.2,No.3 ,S57No.3と H22No.1 の間では,西側が上がり東側が下がる変位が生じていると考えられる。
・HZ-IY-B4 ボーリングコア(5)との比較
飯山高校 H22No.1 ボーリングコアでは,標高 291.1m で 37049±311yrBP の年代値が得られ,飯山高校から南に約 1km の地点の HZ-IY-B4 では,標高 304m で 38630±430yrBP の年代値が得られている(5)。2 地点の年代値がほぼ同じで,堆積物もシルト主体の細粒と同じであることから,同時代に同じような環境で堆積したと考えられる。2 地点が 37000 年前,仮に同じ標高にあったとすると,37000 年間に約13mの垂直変位が生じたと算出できる。
⑥表面波探査
H22No.1 ,H9No.1 ,H9No.2 ボーリング柱状図の N 値 40 以上の層、表面波探査結果のの N 値 40 以上の層、H22No.1 ボーリングコアの淘汰の悪い層(泥流・土石流)が一致した。N値40以上の部分がH22No.1・H9 No.2とH9No.1 の間で西が高く東が低い約3mの変位が生じている。
表面波探査結果と飯山高校内のボーリング柱状図を元に,1/200 スケールで簡易立体模型を制作し,立体的に地層の分布や構造を考察した。飯山高校内には,西上がりの逆断層が存在する可能性があり,西上がりの逆断層の性質は,長野盆地西縁断層帯の性質と一致する(6)。さらに,この断層は,長野盆地西縁断層帯のひとつである推定断層が飯山高校内へと延長したものだと考えられる。
4.まとめ
・飯山高校の地下は河川が運んだと考えられる礫・砂・泥の堆積物でできている。
・飯山高校が建っている場所には,37000年前から現在までに複数回,泥流・土石流が来ている。
・飯山高校内には,長野盆地西縁断層帯の一部と考えられる西上がりの逆断層が存在する可能性がある。
5.今後の展望
・ボーリングコアの詳細な分析(礫種、火山灰分析、C14年代測定、粒度分析)を進める。
・表面波探査を実施し,ボーリング資料と比較し,地下構造,断層の存在を明らかにしていきたい。
6.参考文献
(1)杉戸信彦(2013)・(2)地理院地図(電子国土Web)・(3)地盤工学会(2016)・(4)ウィリアム J.フリッツ・ジョニー N.ムーア著 原田憲一訳(1999)・(5)杉戸信彦・松多信尚・廣内大助・石山達(2013)・(6)地震本部 長野盆地西縁断層帯(信濃川断層帯)HP
7.謝辞
本研究は,2023年度飯山市高校生チャレンジ,2023年度長野県学校科学教育奨励基金の補助のもと行いました。