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[O08-P06] 惑星の表面で起こる気象現象の撮影と表面現象の考察~木星を中心に~
キーワード:惑星、閃光現象、大赤斑
京都大学の観測チームが一昨年,民生品を用いた自動観測で,木星表面に起こった閃光現象を撮影することに成功した。観測に用いた機材は学校の望遠鏡よりも少し大きめの反射望遠鏡なので,自分達でも閃光現象の撮影が出来ると考え,木星・土星を中心に撮影を始めた。昨年度に続いて今年度も惑星の撮影スキルの向上を目指した。そして撮影した写真の精度を向上させて,惑星表面の大気の変化を継続的に調べることができるようにすることを目標とした。シュミットカセグレン式反射望遠鏡鏡筒に2倍バローレンズを介してカメラを接続し,カメラはノートPCに接続した。撮影は動画で行い,そのデータはHDDに保存する。惑星の撮影ではパソコン上でソフトSharpCapを起動し撮影する。Exposureで1コマあたりのカメラの露出時間,Gainで画像の解像度を選択し,惑星のピントを合わせる。惑星の撮影する動画について,撮影時間または静止画の枚数を決めて撮影を開始する。撮影後の画像処理を考慮して,撮影時間35秒・静止画枚数2000枚程度に調整する。撮影後動画データをソフトAutoStakkert!でスタックを行った。スタック処理後の画像は,まだ大気の揺らぎに由来する像のボケが残るため,RegiStax6を用いてシャープな惑星写真を完成させた。万が一,惑星の表面において閃光現象を記録した際,発生時刻の正確な時間が必要なため,星食観測で一般的に利用されるGPS受信機を活用した。このGPS受信機には1,700円程度で入手可能なUSB GPS レシーバーを使用した。このGPS受信機は星食専門家宮下和久氏作成のフリーソフトウェアHACSTIP-GPSを起動して,PC時刻を正確な時刻に補正することができる。惑星の撮影に使用するカメラは赤外線と紫外線の両方に非常に敏感であるため,惑星の写真を撮る場合はUV・IRカットフィルターを使用して赤外線と紫外線の両方を遮断する必要がある。今年度このフィルターを装着して撮影したとろ,画像の解像度が劇的に改善した。また,惑星撮影用に開発されたフリーソフト「WinJUPOS」を使い,木星の画像処理時の高精度化を図った。このソフトは,撮影時の木星自転による画像のズレを修正し,惑星面展開図の作成を現在試みている。惑星の撮影回数は去年と今年の合計で動画本数は140本である。木星の模様を撮影できたのは,昨年度で18項目中7項目の達成率39%だったが,今年度は17項目の94%達成率と大幅に向上した。得られた画像を用いて木星面展開図を作成中である。また撮影した動画を1フレーム毎に木星と土星において閃光現象が記録されていないかを確認したが,確認できなかった。木星では大赤斑の撮影に成功したので,その長径を計測したところ12.4°で縮小傾向の様子を確認できた。また木星の自転周期も推定した。今後は木星の大赤斑の渦が回転する様子を撮影し,また土星と木星で閃光現象を発見したい。木星では大赤斑の観測を今後も継続して,その大きさが今後縮小するのかを確かめたい。