日本地球惑星科学連合2024年大会

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[O-08] 高校生ポスター発表

2024年5月26日(日) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、道林 克禎(名古屋大学 大学院環境学研究科 地球惑星科学系 岩石鉱物学研究室)、久利 美和(文部科学省)、紺屋 恵子(海洋研究開発機構)

13:45 〜 15:15

[O08-P15] 8500万年前の堆積環境から推測されるスフェノセラムスの生態

*濱 絢心1、*小多 美幸1、*吉田 莉乃1 (1.熊本県立天草高等学校)

キーワード:スフェノセラムス、深海、低酸素、生痕化石、コドラート、カイ二乗検定

研究背景
熊本県天草市御所浦町に、地殻変動により隆起して形成された「スフェノセラムスの壁」(写真1)と呼ばれる層理面が地表に露出した場所がある。この壁はその名の通り、スフェノセラムスが多産するが、現在までに化石の種類や分布などの正式な調査は行われていなかった。そこで私達はそれらを調査して堆積環境から当時の環境を推測し、未だ未解明な部分が多いスフェノセラムス(写真2)の生態に迫ろうと思い、研究を始めた。堤(2018)よりスフェノセラムスの壁は8500万年前付近(白亜紀後期の前半)の地層であることがわかっている。

研究目的
1.スフェノセラムスが現地性か異地性かどうかを調査する
2.現地性の場合…当時の環境とスフェノセラムスの生態を推測する
  異地性の場合...当時の環境を推測する。

研究方法
コドラート法(写真1)を利用してスフェノセラムスや生痕化石の分布を調査する。
私たちが考案した、k-means法とカイ二乗検定を組み合わせて化石群集がコロニーかどうかを調べる方法を用いて壁にコロニーがあるかを調べる。
[コロニーの検定方法]
1.k-means法を用いて各コドラート内をグループにわける。(図1)
2.貝が9個以上含まれるグループを「貝の向きに偏りはない」という帰無仮説を立て、カイ二乗検定を行う。
3.仮説が棄却される確率が80%以上のグループをコロニーと判定する。(図2)

結果
①:4個のスフェノセラムスのコロニーを発見した。  
②:壁ではCosmorhaphe(写真3)、Spirorhaphe(写真4)、Lorenzinia(写真5)等の生痕化石が見られた。

考察
①壁は現地性であると考えられる。
Cosmorhapheがあったことから、小幡(1999)より当時は低酸素環境であったと推測される。
また野田(1993)より、当時は深海であったことも推測される。またCosmorhaphe、Spirorhaphe、Lorenziniaがあったため、小幡(2005)より(図3)漸深海帯・深海帯であることがわかる。

結論
スフェノセラムスは8500万年前に深海の低酸素環境に生息していたことが明らかになった。このことは田代(1998)で示された低酸素環境への適応年代(白亜紀後期の後半)よりも古いことがわかった。(図4)このことは新知見である可能性がある。

参考文献
田代1992より 白亜紀二枚貝Sphenoceramus schmidti(Michael)の産状と古生態
田代1998より 白亜紀における二枚貝類の深海と古環境の変遷
小幡1999より 関東産地北東部のジュラ紀・白亜紀から発見された生痕化石
小幡2005より 底質の硬さと生痕相との関係
堤ほか2018より 九州中部天草・御船地域の白亜系砂岩と砕屑性ジルコンU−Pb 年代