日本地球惑星科学連合2024年大会

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[O-08] 高校生ポスター発表

2024年5月26日(日) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、道林 克禎(名古屋大学 大学院環境学研究科 地球惑星科学系 岩石鉱物学研究室)、久利 美和(文部科学省)、紺屋 恵子(海洋研究開発機構)

13:45 〜 15:15

[O08-P22] 軌道計算で求める小惑星接近確率

*宮澤 悠良1、*三代 雅人1 (1.茨城県立日立第一高等学校)

キーワード:小惑星衝突、軌道計算

1. 背景
 6600年前の恐竜絶滅を始め、過去に小惑星衝突により地球に甚大な被害が及ぼされた例がいくつもある。現在でも小惑星の地球への衝突は脅威となっていて将来いつ衝突するかは分からない。そこで、私達は小惑星衝突の予測の一つの指標として小惑星の接近確率について考えたいと思いこの研究を始めた。


2. 方法

2-1 太陽系にある物体のシミュレーション
太陽系の天体(太陽、地球、木星)の引力を受ける物体の運動方程式から式1、2を得られる。初期条件(位置(x、y、z座標)(km)、速度(x、y、z座標)(km/s))を与えると、任意の時間、時間幅で式1、2を数値的に解き、そのグラフを図に示すプログラムを作成した。言語はPython、開発環境はGoogle Colaboratoryを使用し、式1、2をとくためにscipyのodeint関数を用いた。シミュレーションが正しく行われているか確かめるために(図1)。

2-2 太陽系にある架空の小惑星軌道要素(ケプラリアン)の作成
Lowell Observatoryから小惑星の軌道要素(ケプラリアン)を81613個抽出した。昇交点黄経、平均近点角を除く4つの要素に対し、カーネル密度推定を行い、確率分布関数を求めた。シンプソン法により得られるその累積分布関数と0~1をとる乱数を用いて、確率分布関数に従う乱数を作成した。この乱数から架空の小惑星の軌道要素(ケプラリアン)を生成することができる。2-1のシミュレーションで使えるようにするため、この軌道要素(ケプラリアン)をカルテシアン(x、y、z座標の位置、速度の6つの軌道要素)に変換することで目標を達成する。この方法で作成した小惑星の軌道要素を初期条件としたシミュレーションを行った。

2-3 小惑星衝接近確率の計算
太陽系内を周回している小惑星が、太陽系の天体の引力を受けることで、地球に接近または衝突するような軌道に変わると仮定した。2-2で作成した小惑星軌道要素を初期条件とし、2-1のシミュレーションを行い、小惑星と地球の最も接近した距離を計算する。これを多数の小惑星に対して行い、最接近距離ごとに個数を数える。


3. 結果

3-1 作成したプログラムで行ったシミュレーションの考察
初期条件を(0,100000000,1000000,-10,0,0)にして30年を10000刻みでプログラムを実行したところ図1を得た。

3-2 太陽系の架空の小惑星の軌道のシミュレーション
 2-2で作成した乱数から20個の軌道要素を生成し、1000年を99991刻みで2-1のシミュレーションを行った。(図2)

3-3 小惑星接近確率の計算
 20000個の架空の小惑星に対し1000年を99991刻みでシミュレーションしたところ、図3のように個数で分けて数えた。また、最接近距離の分け方を変えて11137個の架空の小惑星を同条件でシミュレーションしたところ図4を得た。図3、図4は地球と小惑星の最接近距離がx(km)以下の個数を表す。


4. 考察

4-1 3-1の考察
 図1より、物体は太陽の周りを周回して、途中で木星の軌道近くで軌道の向きが変化している。太陽、木星の引力を受けていると考えられ、太陽系にある物体のシミュレーションができているといえる。

4-2 太陽系にある架空の小惑星のシミュレーションの考察
 図2より、作成した架空の小惑星軌道は地球と木星の間に多く存在し、これは太陽系に小惑星帯があることに一致する。よって、太陽系の架空の小惑星のシミュレーションができたといえる。

4-3 小惑星接近確率の計算の考察
 図3、図4を見ると、100万㎞から1億㎞までの範囲では、接近距離が長くなるにつれて、接近した小惑星の個数が比例して増えていることがわかる。また、地球に衝突(6400㎞以下)並びに10万㎞以下の距離で接近した小惑星は無かった。合計の試行は3万回であったため、地球に10万㎞以下の距離で近づく確率は0.003%以下だと推測できる。

5. 今後の展望
 太陽系にある物体のシミュレーションでは、小惑星に影響を及ぼす天体が太陽、地球、木星であり小惑星への軌道の変動の影響が小さかったと考えられる。そのため、他の天体も加えてシミュレーションしたい。1000年に対し99991刻みで計算したため、刻み幅は1.5時間程度である。木星の軌道の内側にある小惑星の平均速度は、木星の平均速度(約13㎞/s)よりも早いため、小惑星は一刻みで約7万㎞以上移動していると見積もれる。プログラムでは時間刻みごとに小惑星と地球の距離を計算したため、実際の再接近距離はさらに短い可能性がある。一方、刻み幅を大きくするとシミュレーションに時間がかかるため、十分な量のデータを得ることが出来ない。以上のことから、丁度よい刻み幅の検討を行いたい。確率計算では、合計で3万回超のシミュレーションを行ったが、確率の精度を上げるためにもシミュレーションの回数を増やしたい。


参考文献
1)松本洋介.スクエア最新図説地学.第一学社.2021.p219
2)Lowell Observatory, Lowell Minor Planet Services, https://asteroid.lowell.edu
3)伊藤考士.小惑星の族.https://www.asj.or.jp/geppou/archive_open/2019_112_09/
112-9_596.pdf