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[O08-P37] 熊本県玉名郡和水町の放置竹林における土壌断面と土壌物理性
キーワード:竹林管理、森林生態系、土壌情報
<背景・目的>
森林が抱える諸問題の一つに“竹害”がある。竹林は正しい整備を行えば、タケノコが採れ、竹材を利用することが可能であるが、放置するとたちまち竹藪となる(野中, 2018)。
本研究では、竹林生態系の中心に位置する土壌のポテンシャルを評価し、今後の伐竹や施肥等の管理に関する方向性を見出すことを目的とした。
<タケについて(梅村, 2021)>
タケ類(Bambuseae)は、イネ科植物のタケ亜科に属する。タケ類は、樹木と違い、幹ではなく稈をもつ。タケ類の稈には形成層がなく維管束が散在し、経年的に肥大成長しない。国内には、タケ亜科は14属99種が分布し、タケ類は23種で残りはササ類である。国内では、マダケ属のモウソウチク(Phyllostachys edulis)、ハチク(Phyllostachys nigra var. henonis)、マダケ(Phyllostachys bambusoides)がよく知られる。モウソウチクは外来種である。モウソウチクの成長速度はタケ類の中で特に速く、地下茎は1年で平均1 – 3 m伸長する。タケノコは地上に出てからわずか数ヶ月程度で伸長成長をほぼ完了させる。タケノコは、親竹や地下茎に蓄えられた養分を利用して成長する。このため、みずから光合成を行わずとも、生育のよいモウソウチクでは20 mを超える高さまで到達することができる。国内に生育するタケ類は、春にタケノコを出し、夏から秋にかけて地下茎を成長させる。
<調査地点>
調査地は、熊本県玉名郡和水町に位置し、標高は95.8 m、菊池川水系流域に属する。現地は、約50年前までみかん畑として利用され、現在はモウソウチク(Phyllostachys edulis)が植栽されていた。
<調査内容>
目視調査、ドローン調査、地形調査、土壌断面調査、土壌貫入強度、土壌三相分布、土壌透水性調査
<結果及び考察>
調査は2023年9月に実施した。
目視調査およびドローン調査により、竹林内は薄暗く放置竹林の様相を呈していた。
地形調査の結果、調査地は人工改変地であり、比較的平坦面で構成されていたことから、過去に棚田として利用されていた可能性が示唆された。
土壌断面調査は、土壌調査ハンドブック改訂新版(2021)に準じて実施した。深度60 cm程度の試孔の結果、表層に2 cmの有機物層、0 – 16 cmにA層、16 – 26 cmにB層、26 -60 cm+にBw層を確認した。土色は7.5YR、60 cmまで有機物を含み、土性は軽埴土および重埴土、礫は見られず、粘着性・可塑性は中~強、ち密度は20~24であり、特に問題となる土壌層位は確認されなかった。
土壌貫入強度は、土壌断面近傍で長谷川式土壌貫入計H – 60を用いて実施した。深度50 cm付近まで、0.7 – 4.0 cm drop-1の範囲であり、調査地の土壌は、植物の支持基盤として機能し、根系の発達を阻害する層位は見られなかった。
土壌三相分布は、土壌断面からコアサンプルを採取し、デジタル実容量測定装置(Daiki DIK-1150)を用いて測定した。固相率は30 – 40 %、液相率は30 – 50 %であり、植物根にとって良い土壌環境であると考えられた。
土壌透水性は、土壌断面近傍でK&M式現場土壌透水性測定装置(Daiki AF-173)を用いて、対象土壌が不飽和および飽和状態で実施した。その結果、最終減水量は388 mm hr-1となり、K&M式判断基準にあてはめると“良好”と判定された。これは、根の呼吸や養水分の吸収に問題がないことを示している。
本研究により、作物にとって調査地の土壌は土壌物理性の観点から、特に問題ないことを確認した。
<今後>
今後、管理された竹林、近隣の他の植生等土壌物理性の観点から比較検討を進める。また、土壌pHや土壌養分分析等、土壌化学性について調査し、総合的な竹林土壌環境の評価としたい。
<引用文献>
1) 野中重之, 2018. 明るさが見えてきたタケノコ栽培, 熊本県和水町求職者向け農業技術セミナー, 発表資料.
2) 梅村光俊. 2021. タケの生理生態, 森林額の百科事典, 日本森林学会編, 丸善出版, 84 – 85.
<謝辞>
本研究は、ジャパンフィールドリサーチの一貫として行われました。本研究を遂行するにあたり、前和水町教育長・元和水町立三加和中学校長 岡本 貞三 先生、九州大学大学院教授 平舘俊太郎 先生、東海大学特任教授 井上 弦 先生、ひふみ亭の皆様に多大なるご協力を頂きました。また、調査は、熊本県立第二高校、熊本県立鹿本高校のみなさんの協力をもとに行いました。さらに、本校教諭 谷口 悟 先生、山脇 正資 先生、岡本 勇輝 先生、勝間 典司 先生にご指導を承りました。厚く御礼申し上げます。
森林が抱える諸問題の一つに“竹害”がある。竹林は正しい整備を行えば、タケノコが採れ、竹材を利用することが可能であるが、放置するとたちまち竹藪となる(野中, 2018)。
本研究では、竹林生態系の中心に位置する土壌のポテンシャルを評価し、今後の伐竹や施肥等の管理に関する方向性を見出すことを目的とした。
<タケについて(梅村, 2021)>
タケ類(Bambuseae)は、イネ科植物のタケ亜科に属する。タケ類は、樹木と違い、幹ではなく稈をもつ。タケ類の稈には形成層がなく維管束が散在し、経年的に肥大成長しない。国内には、タケ亜科は14属99種が分布し、タケ類は23種で残りはササ類である。国内では、マダケ属のモウソウチク(Phyllostachys edulis)、ハチク(Phyllostachys nigra var. henonis)、マダケ(Phyllostachys bambusoides)がよく知られる。モウソウチクは外来種である。モウソウチクの成長速度はタケ類の中で特に速く、地下茎は1年で平均1 – 3 m伸長する。タケノコは地上に出てからわずか数ヶ月程度で伸長成長をほぼ完了させる。タケノコは、親竹や地下茎に蓄えられた養分を利用して成長する。このため、みずから光合成を行わずとも、生育のよいモウソウチクでは20 mを超える高さまで到達することができる。国内に生育するタケ類は、春にタケノコを出し、夏から秋にかけて地下茎を成長させる。
<調査地点>
調査地は、熊本県玉名郡和水町に位置し、標高は95.8 m、菊池川水系流域に属する。現地は、約50年前までみかん畑として利用され、現在はモウソウチク(Phyllostachys edulis)が植栽されていた。
<調査内容>
目視調査、ドローン調査、地形調査、土壌断面調査、土壌貫入強度、土壌三相分布、土壌透水性調査
<結果及び考察>
調査は2023年9月に実施した。
目視調査およびドローン調査により、竹林内は薄暗く放置竹林の様相を呈していた。
地形調査の結果、調査地は人工改変地であり、比較的平坦面で構成されていたことから、過去に棚田として利用されていた可能性が示唆された。
土壌断面調査は、土壌調査ハンドブック改訂新版(2021)に準じて実施した。深度60 cm程度の試孔の結果、表層に2 cmの有機物層、0 – 16 cmにA層、16 – 26 cmにB層、26 -60 cm+にBw層を確認した。土色は7.5YR、60 cmまで有機物を含み、土性は軽埴土および重埴土、礫は見られず、粘着性・可塑性は中~強、ち密度は20~24であり、特に問題となる土壌層位は確認されなかった。
土壌貫入強度は、土壌断面近傍で長谷川式土壌貫入計H – 60を用いて実施した。深度50 cm付近まで、0.7 – 4.0 cm drop-1の範囲であり、調査地の土壌は、植物の支持基盤として機能し、根系の発達を阻害する層位は見られなかった。
土壌三相分布は、土壌断面からコアサンプルを採取し、デジタル実容量測定装置(Daiki DIK-1150)を用いて測定した。固相率は30 – 40 %、液相率は30 – 50 %であり、植物根にとって良い土壌環境であると考えられた。
土壌透水性は、土壌断面近傍でK&M式現場土壌透水性測定装置(Daiki AF-173)を用いて、対象土壌が不飽和および飽和状態で実施した。その結果、最終減水量は388 mm hr-1となり、K&M式判断基準にあてはめると“良好”と判定された。これは、根の呼吸や養水分の吸収に問題がないことを示している。
本研究により、作物にとって調査地の土壌は土壌物理性の観点から、特に問題ないことを確認した。
<今後>
今後、管理された竹林、近隣の他の植生等土壌物理性の観点から比較検討を進める。また、土壌pHや土壌養分分析等、土壌化学性について調査し、総合的な竹林土壌環境の評価としたい。
<引用文献>
1) 野中重之, 2018. 明るさが見えてきたタケノコ栽培, 熊本県和水町求職者向け農業技術セミナー, 発表資料.
2) 梅村光俊. 2021. タケの生理生態, 森林額の百科事典, 日本森林学会編, 丸善出版, 84 – 85.
<謝辞>
本研究は、ジャパンフィールドリサーチの一貫として行われました。本研究を遂行するにあたり、前和水町教育長・元和水町立三加和中学校長 岡本 貞三 先生、九州大学大学院教授 平舘俊太郎 先生、東海大学特任教授 井上 弦 先生、ひふみ亭の皆様に多大なるご協力を頂きました。また、調査は、熊本県立第二高校、熊本県立鹿本高校のみなさんの協力をもとに行いました。さらに、本校教諭 谷口 悟 先生、山脇 正資 先生、岡本 勇輝 先生、勝間 典司 先生にご指導を承りました。厚く御礼申し上げます。