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[O08-P47] 仙台高校周辺にある油膜状物質と赤褐色沈殿物
キーワード:鉄バクテリア、三滝玄武岩、酸化鉄
仙台高校周辺にある油膜状物質と赤褐色沈殿物の調査
3年小野寺凛太郎 2年鈴木陸斗 今野巧 戸羽拓海 奈良坂源斗
仙台市立仙台高等学校
1. 研究の背景と目的
仙台高校周辺の側溝や池などの多くの水辺で、赤褐色の沈殿物や油膜状物質を発見した。
(写真1,2)
見た目が油のようで、環境や人体に害があるのではないかと感じ調査を開始した。また、実は以前ほかの場所でも同じような現象を発見しており、以前発見した地点や周辺地層との関係も気になった。
文献などで調査した結果、仙台高校周辺で確認したものと同様の赤褐色沈殿物や油膜状物質について、全国様々な地域での報告があり、それらは[鉄バクテリア]という物質による現象との記述があった。
本研究では文献や実験、学校周辺の視察などを基に発見した赤褐色沈殿物:油膜状物質が鉄バクテリアによるものなのか、また発見した物質の発生原因は何なのかを調査する。
2.調査結果
:油膜状物質と赤褐色沈殿物は環境や人体に害はなく鉄バクテリアの繁殖によってできるものだった。
:鉄バクテリアの発生原因は仙台高校の周辺の地質である[三滝玄武岩]が原因だと考える。
3.発見した物質が鉄バクテリアによるものかの調査
1.調査方法(試料採取場所に関しては地図1を参照)
(1)油との比較
油膜状物質とキャノーラ油を比較。
臭い:沈降法 の2つ比較を行う。
:沈降法の手順:油膜状物質とその周りの水、キャノーラ油と純水をそれぞれコップに入れ軽く振り安置する。数分後、様子を観察する。
(2)光学:電子顕微鏡で観察
油膜状物質:赤褐沈殿物を光学顕微鏡、電子顕微鏡で観察。文献1,2に記載された特徴と比較する。
(電子顕微鏡では赤褐色沈殿物のみ観察)
(3)水中の鉄分濃度測定(フェナントロリン吸光光度法)
赤褐色沈殿物の発生している地点の水を採取し、吸光光度計でFe²⁺濃度を測定する。発色は現地で行った。
*文献1より鉄バクテリアはFe²⁺を多く含む水で繁殖する。
2.結果
(1)油との比較
キャノーラ油:油の臭いあり:純水に浮いた
油膜状物質:油の臭い無し:沈殿した
*油膜状物質は油ではないことが分かった。
(2)光学:電子顕微鏡観察
:光学顕微鏡
油膜状物質は写真3のような板状の物質が確認された。
赤褐色沈殿物は写真4のような線状の物質が確認された。
:電子顕微鏡(赤褐色沈殿物のみ調査)
写真5のような筒状の物質が確認できた。
*油膜状物質は酸化鉄被膜で、赤褐色沈殿物は鉄バクテリアと鉄の酸化物だと考える。
(3)水中の鉄分濃度測定
仙台高校側溝の水のFe²⁺濃度は10.45μg/mlと非常に高い結果となった。
3.考察
実験結果より発見した赤褐色沈殿物、油膜状物質は鉄バクテリアによるものと考える。またフェナントロリン吸光光度法の結果より、発見した赤褐色沈殿物・油膜状物質の発生する場所の水は、鉄バクテリアが繁殖しやすい環境だと考えられる。
4.鉄バクテリアの発生原因
赤褐色沈殿物・油膜状物質が確認された場所のほとんどに三滝玄武岩層が分布しており、鉄バクテリアとの関係が考えられる。
文献3より三滝玄武岩は鉄分を多く含む。
1.調査方法
三滝玄武岩の分布する地域で、これまで発見した場所とは別の地点に赤褐色沈殿物・油膜状物質が発生していないか調査する。
2.結果
新たに2つの地点で赤褐色沈殿物:油膜状物質が確認された。(地図2)
3.考察
地質図1は仙台高校周辺の地質図だ。仙台高校周辺の青の地層は三滝層と呼ばれており、調査より、星印で示した場所が赤褐色沈殿物・油膜状物質が確認されたところである。確認されたところのほとんどが三滝層である。(三滝層を構成する岩石は三滝玄武岩である)
水中の鉄濃度を測定した結果、多量の二価鉄が確認された。また採取した場所の特徴として、採取場所付近の崖やコンクリートから赤褐色物質が垂れているのが確認された。
(例は写真6)八乙女川の周辺で確認された赤褐色沈殿物については地質図1より上流をたどっていくと三滝層の分布する地域にたどり着く。うどう沼も三滝層に分布していないが、うどう沼の位置する場所の西側に切り立った斜面があり、そのすぐそこには三滝層が分布しているので、三滝層からの二価鉄を含む地下水が湧出、うどう沼に流れる可能性は十分にあるといえる。よって調査地域で鉄バクテリアが発生する原因は、二価鉄を多く含む三滝玄武岩に分布する地下水が、崖などから湧出するためであると考える。
5.今後の展望
今回の調査した場所のほかにも仙台市内にはまだ三滝玄武岩の分布する場所が多く存在するので、そこの周辺の水辺を調査してみたい。
6.参考文献
1 小池良洋(2011)油膜と鉄バクテリアの判別方法
2 島田 武典:本田数博(2008)愛名緑地ビオトープの鉄細菌による赤褐色沈殿物の観察
3 宮本 毅:蟹澤 聰史:石渡 明:根本 潤(2013)仙台の大地の成り立ちを知る
3年小野寺凛太郎 2年鈴木陸斗 今野巧 戸羽拓海 奈良坂源斗
仙台市立仙台高等学校
1. 研究の背景と目的
仙台高校周辺の側溝や池などの多くの水辺で、赤褐色の沈殿物や油膜状物質を発見した。
(写真1,2)
見た目が油のようで、環境や人体に害があるのではないかと感じ調査を開始した。また、実は以前ほかの場所でも同じような現象を発見しており、以前発見した地点や周辺地層との関係も気になった。
文献などで調査した結果、仙台高校周辺で確認したものと同様の赤褐色沈殿物や油膜状物質について、全国様々な地域での報告があり、それらは[鉄バクテリア]という物質による現象との記述があった。
本研究では文献や実験、学校周辺の視察などを基に発見した赤褐色沈殿物:油膜状物質が鉄バクテリアによるものなのか、また発見した物質の発生原因は何なのかを調査する。
2.調査結果
:油膜状物質と赤褐色沈殿物は環境や人体に害はなく鉄バクテリアの繁殖によってできるものだった。
:鉄バクテリアの発生原因は仙台高校の周辺の地質である[三滝玄武岩]が原因だと考える。
3.発見した物質が鉄バクテリアによるものかの調査
1.調査方法(試料採取場所に関しては地図1を参照)
(1)油との比較
油膜状物質とキャノーラ油を比較。
臭い:沈降法 の2つ比較を行う。
:沈降法の手順:油膜状物質とその周りの水、キャノーラ油と純水をそれぞれコップに入れ軽く振り安置する。数分後、様子を観察する。
(2)光学:電子顕微鏡で観察
油膜状物質:赤褐沈殿物を光学顕微鏡、電子顕微鏡で観察。文献1,2に記載された特徴と比較する。
(電子顕微鏡では赤褐色沈殿物のみ観察)
(3)水中の鉄分濃度測定(フェナントロリン吸光光度法)
赤褐色沈殿物の発生している地点の水を採取し、吸光光度計でFe²⁺濃度を測定する。発色は現地で行った。
*文献1より鉄バクテリアはFe²⁺を多く含む水で繁殖する。
2.結果
(1)油との比較
キャノーラ油:油の臭いあり:純水に浮いた
油膜状物質:油の臭い無し:沈殿した
*油膜状物質は油ではないことが分かった。
(2)光学:電子顕微鏡観察
:光学顕微鏡
油膜状物質は写真3のような板状の物質が確認された。
赤褐色沈殿物は写真4のような線状の物質が確認された。
:電子顕微鏡(赤褐色沈殿物のみ調査)
写真5のような筒状の物質が確認できた。
*油膜状物質は酸化鉄被膜で、赤褐色沈殿物は鉄バクテリアと鉄の酸化物だと考える。
(3)水中の鉄分濃度測定
仙台高校側溝の水のFe²⁺濃度は10.45μg/mlと非常に高い結果となった。
3.考察
実験結果より発見した赤褐色沈殿物、油膜状物質は鉄バクテリアによるものと考える。またフェナントロリン吸光光度法の結果より、発見した赤褐色沈殿物・油膜状物質の発生する場所の水は、鉄バクテリアが繁殖しやすい環境だと考えられる。
4.鉄バクテリアの発生原因
赤褐色沈殿物・油膜状物質が確認された場所のほとんどに三滝玄武岩層が分布しており、鉄バクテリアとの関係が考えられる。
文献3より三滝玄武岩は鉄分を多く含む。
1.調査方法
三滝玄武岩の分布する地域で、これまで発見した場所とは別の地点に赤褐色沈殿物・油膜状物質が発生していないか調査する。
2.結果
新たに2つの地点で赤褐色沈殿物:油膜状物質が確認された。(地図2)
3.考察
地質図1は仙台高校周辺の地質図だ。仙台高校周辺の青の地層は三滝層と呼ばれており、調査より、星印で示した場所が赤褐色沈殿物・油膜状物質が確認されたところである。確認されたところのほとんどが三滝層である。(三滝層を構成する岩石は三滝玄武岩である)
水中の鉄濃度を測定した結果、多量の二価鉄が確認された。また採取した場所の特徴として、採取場所付近の崖やコンクリートから赤褐色物質が垂れているのが確認された。
(例は写真6)八乙女川の周辺で確認された赤褐色沈殿物については地質図1より上流をたどっていくと三滝層の分布する地域にたどり着く。うどう沼も三滝層に分布していないが、うどう沼の位置する場所の西側に切り立った斜面があり、そのすぐそこには三滝層が分布しているので、三滝層からの二価鉄を含む地下水が湧出、うどう沼に流れる可能性は十分にあるといえる。よって調査地域で鉄バクテリアが発生する原因は、二価鉄を多く含む三滝玄武岩に分布する地下水が、崖などから湧出するためであると考える。
5.今後の展望
今回の調査した場所のほかにも仙台市内にはまだ三滝玄武岩の分布する場所が多く存在するので、そこの周辺の水辺を調査してみたい。
6.参考文献
1 小池良洋(2011)油膜と鉄バクテリアの判別方法
2 島田 武典:本田数博(2008)愛名緑地ビオトープの鉄細菌による赤褐色沈殿物の観察
3 宮本 毅:蟹澤 聰史:石渡 明:根本 潤(2013)仙台の大地の成り立ちを知る