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[O08-P49] 分割シンチレータを用いた放射線検出器の開発
キーワード:宇宙線、分割シンチレータ
放射線にはα線、β線、γ線、中性子線、宇宙線などがあり、その種類によって、到来頻度やエネルギーの強さは異なる。現在、飛来した放射線の種類を識別することができる検出器は、高価で、複雑な構造をしているため扱いが難しい。私たちは、安価で簡単に作成できる構造で、放射線種を識別できる検出器を開発することを目標としている。
放射線検出器は、放射線のような電気を帯びた粒子が衝突すると蛍光する「シンチレータ」と呼ばれる物質と、シンチレータからの光を電気信号に変換する「SiPM」とよばれる半導体素子を組み合わせて構成されている。シンチレータを複数枚重ね合わせたとき、SiPMに近い位置を通過した放射線は減衰が小さくなり強い光として検出されるのに対し、SiPMから遠い位置を通過した放射線は減衰が大きくなり弱い光として検出される。これを利用して、プラスチックシンチレータを空気層を介して複数枚重ね合わせ、その両端にSiPMを取り付けた「分割シンチレータ検出器」を作成した(Fig 1)。データの解析は能勢(2023)と同様に、両端のSiPMから取得した電気信号の相関をとった二次元ヒストグラムを用いて行った。(Fig 2)。ここでは、横軸にSiPM①で読み取られた値(adc1)、縦軸にSiPM②で読み取られた値(adc2)を記録し、プロットされた位置の度数をグラフ右側にあるカラーバーで表している。
実験として、検出器の角度を変えて環境放射線を測定する実験を行った。小田(2002)⁾¹より、放射線の中で宇宙線のみ天頂角(天頂を0度として放射線が検出器を通過するときの入射角)によって到来頻度が変化しないことがわかっている。このことから、分割シンチレータを天頂角0度、天頂角90度で設置してそれぞれ観測を行った。2つの観測を行ったのは別の日だが、先行研究の結果から、天気や気温の違いによる宇宙線の到来頻度に差はないことがわかっているため、実験の結果に影響はないと考えられる。
結果として、二次元ヒストグラム中の一部の領域の検出数に変化が見られた(Fig 3、Fig 4)。小田(2002)の記載より、この領域は宇宙線であると考察した。
また、3月に高エネルギー加速器研究機構(KEK)主催で行われた実験では、PF-AR テストビームラインを使用して、分割シンチレータ検出器の位置感度を調べる実験を行った。検出器の狙った位置に加速器で発生させたビームを照射し、そのときの二次元ヒストグラムの変化を調べることで、分割シンチレータ検出器の位置感度を詳しく見ることが出来ると考えた。発表では解析結果をふまえて議論をしていきたいと考えている。
今後の展望としては、宇宙線以外の放射線の領域の特定を目指している。検出器を放射線遮蔽物で覆うなど、さらなる検討を重ねることでこの目標を達成できると考えている。
参考文献
小田稔.物理学選書5宇宙線(改訂版).裳華房、2002、426p.
能勢 千鶴, 田中 香津生. 分割シンチレータを用いた教育用放射線位置検出器の開発. 日本地球惑星科学連合2023年大会, 講演要旨, G03-P05.
放射線検出器は、放射線のような電気を帯びた粒子が衝突すると蛍光する「シンチレータ」と呼ばれる物質と、シンチレータからの光を電気信号に変換する「SiPM」とよばれる半導体素子を組み合わせて構成されている。シンチレータを複数枚重ね合わせたとき、SiPMに近い位置を通過した放射線は減衰が小さくなり強い光として検出されるのに対し、SiPMから遠い位置を通過した放射線は減衰が大きくなり弱い光として検出される。これを利用して、プラスチックシンチレータを空気層を介して複数枚重ね合わせ、その両端にSiPMを取り付けた「分割シンチレータ検出器」を作成した(Fig 1)。データの解析は能勢(2023)と同様に、両端のSiPMから取得した電気信号の相関をとった二次元ヒストグラムを用いて行った。(Fig 2)。ここでは、横軸にSiPM①で読み取られた値(adc1)、縦軸にSiPM②で読み取られた値(adc2)を記録し、プロットされた位置の度数をグラフ右側にあるカラーバーで表している。
実験として、検出器の角度を変えて環境放射線を測定する実験を行った。小田(2002)⁾¹より、放射線の中で宇宙線のみ天頂角(天頂を0度として放射線が検出器を通過するときの入射角)によって到来頻度が変化しないことがわかっている。このことから、分割シンチレータを天頂角0度、天頂角90度で設置してそれぞれ観測を行った。2つの観測を行ったのは別の日だが、先行研究の結果から、天気や気温の違いによる宇宙線の到来頻度に差はないことがわかっているため、実験の結果に影響はないと考えられる。
結果として、二次元ヒストグラム中の一部の領域の検出数に変化が見られた(Fig 3、Fig 4)。小田(2002)の記載より、この領域は宇宙線であると考察した。
また、3月に高エネルギー加速器研究機構(KEK)主催で行われた実験では、PF-AR テストビームラインを使用して、分割シンチレータ検出器の位置感度を調べる実験を行った。検出器の狙った位置に加速器で発生させたビームを照射し、そのときの二次元ヒストグラムの変化を調べることで、分割シンチレータ検出器の位置感度を詳しく見ることが出来ると考えた。発表では解析結果をふまえて議論をしていきたいと考えている。
今後の展望としては、宇宙線以外の放射線の領域の特定を目指している。検出器を放射線遮蔽物で覆うなど、さらなる検討を重ねることでこの目標を達成できると考えている。
参考文献
小田稔.物理学選書5宇宙線(改訂版).裳華房、2002、426p.
能勢 千鶴, 田中 香津生. 分割シンチレータを用いた教育用放射線位置検出器の開発. 日本地球惑星科学連合2023年大会, 講演要旨, G03-P05.