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[O08-P90] 地質的要素に基づいた奄美群島の水の比較
キーワード:水の硬度、誘導プラズマ発光分析装置、奄美群島、水道水、健康
鹿児島県奄美群島には8つの島があり、それぞれ地質が異なっている。奄美群島の各島の地質は、奄美大島は砂岩や泥岩であり、与論島、沖永良部島、喜界島の大部分は海成層石灰岩である。また、与論島には山や川がなく、水道水等の水源は地下水を利用している。奄美大島の水源地は川であり、沖永良部島、喜界島の水源地は地下水や湧水である。与論高校の生徒や教師を対象に行ったアンケート調査結果によると、回答を得られた39名のうち約半数にあたる19名は、主に飲料水として市販のミネラルウォーターを購入している。与論の水道水は硬度が高いため、与論島民のなかには高硬度の水を飲み続けることによる健康への影響を危惧している人もいる。本研究では、奄美群島の島々と与論島の水の硬度を比較し、地質的な違いにより、水の成分にどのような差が生まれるのか、またその水の成分の違いにより健康に影響する可能性があるのか、研究を行った。
本研究では、2023年6月16日〜25日にかけて、与論島内の原水(立長予備水源、麦屋2号、古里第1水源、古里第4水源)、水道水(町内3小学校の水道と冷水機、軟水機を通した水道水)、与論町浄水場の水および沖永良部島、奄美大島、喜界島の水道水の採水を行なった。採取した水は東京大学大気海洋研究所の誘導結合プラズマ発光分析装置(ICP-AES)を使用し、Ca、Mg、Naの含有量を求めた。それらの値を用いて、水の硬度を式(1)を用いて計算した。水が健康に与える影響を評価するための判定基準として、健康な水指標(K index)を式(2)(橋本,1988)を用いて算出し、奄美群島内および与論島内における値の比較を行なった。K indexが5.2を超えた場合、「健康な水」と分類する。(橋本, 1988)
硬度=Ca(mg/L)×2.5+Mg(mg/L)×4.1・・・式 (1)
K index=Ca(mg/L) -0.87Na(mg/L)・・・式(2)
研究の結果、与論町の水道水の硬度は、原水の平均393.25mg/L、浄化処理直後の水209.86mg/L、水道水の平均214.41mg/Lとなった。このため、与論島の水道水は「非常な硬水」ということができる。また、与論島内の水道水を比較したところ、地域差は見られなかった。したがって、本研究では、与論の水道水の代表値として、浄水場で採取した浄化処理直後の水の数値を議論に用いた。
奄美群島の他の島々の水道水の硬度は、奄美大島は29.88mg/L、沖永良部島274.42mg/L、喜界島90.09mg/Lとなっていた。日本全国の水道水の硬度の平均48.9mg/L (Hori et al.,2021) と比較すると、与論島、沖永良部島、喜界島の3島の水道水の硬度は非常に高いが、奄美大島は日本平均を下回っていた。これは、地質(奄美大島は堆積物、与論島、沖永良部島、喜界島は海成層石灰岩)や水源(奄美大島は川、与論島、沖永良部島、喜界島は地下水や湧水)(喜界町役場まちづくり課,2020)が異なっていたため、硬度にも差が生まれたと考えられる。
式(2)を用いて、各水道水の、 K indexの値を算出したところ、与論島内の水道水は48、沖永良部島は73、喜界島が7.3、奄美大島は0.5となっていた。これらの結果から、硬度の高い水であってもK indexでは「健康な水」に分類されることが判明した。
参考文献
喜界町役場まちづくり課. 喜界町水道事業ビジョン 〜安全でおいしい水を安定供給する〜 (令和2年度〜令和11年度)2020
http://www.town.kikai.lg.jp/mizu/documents/suidouvision.pdf(参照2024年4月5日)
橋本 奨. おいしく健康な水のミネラルバランス指標. 化学と生物. 日本農芸化学会,1988, Vol26, No.1, P.65~68
Hori et al,. A survey of monitoring tap water hardness in Japan and its distribution patterns,Scientific Reports 11,13546(2021)
本研究では、2023年6月16日〜25日にかけて、与論島内の原水(立長予備水源、麦屋2号、古里第1水源、古里第4水源)、水道水(町内3小学校の水道と冷水機、軟水機を通した水道水)、与論町浄水場の水および沖永良部島、奄美大島、喜界島の水道水の採水を行なった。採取した水は東京大学大気海洋研究所の誘導結合プラズマ発光分析装置(ICP-AES)を使用し、Ca、Mg、Naの含有量を求めた。それらの値を用いて、水の硬度を式(1)を用いて計算した。水が健康に与える影響を評価するための判定基準として、健康な水指標(K index)を式(2)(橋本,1988)を用いて算出し、奄美群島内および与論島内における値の比較を行なった。K indexが5.2を超えた場合、「健康な水」と分類する。(橋本, 1988)
硬度=Ca(mg/L)×2.5+Mg(mg/L)×4.1・・・式 (1)
K index=Ca(mg/L) -0.87Na(mg/L)・・・式(2)
研究の結果、与論町の水道水の硬度は、原水の平均393.25mg/L、浄化処理直後の水209.86mg/L、水道水の平均214.41mg/Lとなった。このため、与論島の水道水は「非常な硬水」ということができる。また、与論島内の水道水を比較したところ、地域差は見られなかった。したがって、本研究では、与論の水道水の代表値として、浄水場で採取した浄化処理直後の水の数値を議論に用いた。
奄美群島の他の島々の水道水の硬度は、奄美大島は29.88mg/L、沖永良部島274.42mg/L、喜界島90.09mg/Lとなっていた。日本全国の水道水の硬度の平均48.9mg/L (Hori et al.,2021) と比較すると、与論島、沖永良部島、喜界島の3島の水道水の硬度は非常に高いが、奄美大島は日本平均を下回っていた。これは、地質(奄美大島は堆積物、与論島、沖永良部島、喜界島は海成層石灰岩)や水源(奄美大島は川、与論島、沖永良部島、喜界島は地下水や湧水)(喜界町役場まちづくり課,2020)が異なっていたため、硬度にも差が生まれたと考えられる。
式(2)を用いて、各水道水の、 K indexの値を算出したところ、与論島内の水道水は48、沖永良部島は73、喜界島が7.3、奄美大島は0.5となっていた。これらの結果から、硬度の高い水であってもK indexでは「健康な水」に分類されることが判明した。
参考文献
喜界町役場まちづくり課. 喜界町水道事業ビジョン 〜安全でおいしい水を安定供給する〜 (令和2年度〜令和11年度)2020
http://www.town.kikai.lg.jp/mizu/documents/suidouvision.pdf(参照2024年4月5日)
橋本 奨. おいしく健康な水のミネラルバランス指標. 化学と生物. 日本農芸化学会,1988, Vol26, No.1, P.65~68
Hori et al,. A survey of monitoring tap water hardness in Japan and its distribution patterns,Scientific Reports 11,13546(2021)