日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 O (パブリック) » パブリック

[O-08] 高校生ポスター発表

2024年5月26日(日) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、道林 克禎(名古屋大学 大学院環境学研究科 地球惑星科学系 岩石鉱物学研究室)、久利 美和(文部科学省)、紺屋 恵子(海洋研究開発機構)

13:45 〜 15:15

[O08-P98] 鳴かない砂はなぜ鳴かないのか

*大谷 はるか1、*篠原 悠里1、*竹下 莉子1、*土江 美羽1 (1.島根県立大田高等学校)

キーワード:琴ヶ浜海岸、鳴き砂、パックテスト、アンモニウム態窒素

1 研究目的

「鳴かない砂はなぜ鳴かないのか」を実験により追究する。浜田高校の先行研究から島根県内の海岸の砂は洗浄すれば鳴くことを知ったため、鳴かない原因である汚染物質を探る。

2 実験及び結果

(1)フィールドワーク

大田市内の3地点の砂を採取し、海岸の様子を調べた。(図1)
1 仁摩町:琴ヶ浜海岸  2 久手町:久手海岸  3 波根町:波根海岸
(琴ヶ浜海岸と波根海岸は鳴き砂海岸)

(2)観察

〈結果〉 透明な粒(石英)の割合  低) 久 手 < 波 根 < 琴ヶ浜 (高
     黒色の粒の割合    低) 琴ヶ浜 < 波 根 < 久 手 (高  (図2)

(3)実験① パックテスト(排水検査や飲料水検査などに利用されている水質検査キットのこと)

〈手順〉砂に水を加えて、パックテストでCOD、アンモニウム態窒素、亜硝酸態窒素、硝酸態窒素、リン酸態窒素の5項目について調査した。

〈結果〉久手海岸、波根海岸とも汚れが多く、琴ヶ浜海岸の汚れが少ない。(表1)

〈考察〉アンモニウム態窒素、亜硝酸態窒素、硝酸態窒素は、波根海岸が最も多いが、波根海岸は鳴き砂海岸であるため、鳴くかどうかに影響していないと考えられる。

(4)実験② 汚染物質と鳴き方の関係

〈手順〉鳴き砂である琴ヶ浜の砂に様々な物質(石けん、牛脂、NaNO₃、Na₃PO₄、NH₄Cl、MgCl₂)を加え、音とパックテストの値の変化を調べる。パックテストの値を無加工の琴ヶ浜の砂と比較して汚れが多いかどうか確認する。鳴き方は、よく鳴く(〇)・少し鳴く(△)・鳴かない(×)の3段階で評価する。

〈結果〉CODの値はどの物質を加えても低かった。牛脂はアンモニウム態窒素が琴ヶ浜の砂より多かったが鳴った。牛脂以外のアンモニウム態窒素が琴ヶ浜の砂より値が高かった砂は、鳴かなかった。亜硝酸態窒素、硝酸態窒素、リン酸態窒素については、値が高くても鳴く砂や値が低くても鳴かない砂があった。(表2)

〈考察〉塩化アンモニウムの砂が鳴っていない、かつ、この砂のパックテストでのアンモニウム態窒素の濃度が非常に高いことからアンモニウム態窒素は鳴り方に影響しているのではないか。

〈仮説〉実験①の結果・考察も考慮すると、「アンモニウム態窒素はある値までは、鳴くかどうかに影響を与えないが、多すぎると砂を鳴かなくさせる」という仮説を立てた。

(5)実験③ アンモニウム態窒素の量と鳴き方の関係

 上記の仮説を確かめるために、アンモニウム態窒素の量と音の変化を調べた。

〈手順〉5種類の濃度の塩化アンモニウム水溶液を作り、琴ヶ浜の砂にそれぞれ浸す。乾燥後、音の変化とパックテストの値の変化を調べる。また、アンモニウム態窒素が多く含まれているが、よく鳴く波根の砂でもパックテストを再度行い、数値を比較する。

〈結果〉塩化アンモニウム水溶液の濃度が高いほど、パックテストの色が濃くなった。また、水溶液のモル濃度によって、砂の鳴き方に違いが出た。モル濃度が0.25mol/Lより大きい砂は鳴かず、0.25mol/Lより小さい砂はよく鳴いた。鳴いた砂はパソコンのグラフ上でも、鳴き砂特有の規則的な波形が確認できた。(表3)

〈考察〉パックテストと音の実験から、アンモニウム態窒素が多く含まれるほど、鳴かなくなるということがいえる。アンモニウム態窒素は鳴き砂を鳴かなくさせる汚染物質の一つではないか。

3 まとめ

 今回はアンモニウム態窒素の実験を行ったが、他の付着物質でも同様に実験をすれば、より正確なデータがとれると思う。アンモニウム態窒素は川や水路を通じ、生活排水や田畑からの肥料分が流れ込むことで値が高くなる。そのため、砂浜に流れ込む川の流域面積や周辺地域の人口が少ない琴ヶ浜がよく鳴くことは納得できる。

4 参考文献

(1)山陰中央新報 2023年8月5日
(2)清ヶ浜の鳴り砂調査報告書
(3)鳴り砂ノート──川村国夫、真柄建設株式会社技術研究所
(4)浜田高校 令和5年度作品 大田高校 令和2年度研究