日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-CG 宇宙惑星科学複合領域・一般

[P-CG19] 系外惑星

2024年5月28日(火) 13:45 〜 15:15 102 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:小玉 貴則(地球生命研究所、東京工業大学)、野津 翔太(東京大学 大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻 地球惑星システム科学講座)、川島 由依(東北大学)、森 万由子(東京大学)、座長:伊藤 祐一(国立天文台、科学研究部)、吉田 辰哉(東北大学)


14:30 〜 14:45

[PCG19-14] 恒星XUV放射のフォワードモデリング:太陽から若い太陽型星、前主系列段階へ

*庄田 宗人1、高棹 真介2行方 宏介3、仲谷 崚平4 (1.東京大学大学院 理学系研究科 地球惑星科学専攻、2.大阪大学大学院 理学研究科 宇宙地球科学専攻、3.自然科学研究機構 国立天文台、4.ジェット推進研究所)

キーワード:太陽、太陽型星、前主系列星、XUV放射

星からのXUV放射(X線+極端紫外線)は惑星大気や原始惑星系円盤の加熱・化学反応を駆動することが知られている。従って系外惑星大気や原始惑星系円盤の熱化学構造と散逸過程のモデル化には、主星のXUVスペクトルを知る必要がある。しかしながら、XUVの大部分を占めるEUVは強い星間吸収を受けるため、XUVスペクトルを直接的に測定することはできない。この問題を解決すべく、観測可能量との経験的相関からEUVを推定するという方法がいくつか提案されているが、いずれも物理的な根拠に基づくものではなく、一桁以上の誤差が生じてしまうという問題がある。このため経験的手法ではなく物理的考察に基づいた新たなXUV推定法が求められている。
そこで本研究では、温度ごとの放射強度を表す物理量であるDifferential Emission Measure (DEM)に基づく新たなXUV推定法を提案する。DEMは温度の関数であり、限られた温度帯では観測で制限可能であるが、EUV放射を引き起こす全温度帯にわたって観測することは不可能である。この困難を回避すべく、我々は数値シミュレーションを用いてDEMの推定を行う。このためには、恒星大気形成、すなわちコロナ加熱問題を定量的な精度で解く必要がある。これには膨大な数値計算コストを要することが知られているが、我々は計算負荷の小さい一次元MHDモデルにうまく加熱過程を現象論的に取り入れることでこの問題を解決した。
我々はMHDモデルで計算したDEMから太陽のXUVスペクトルが高い精度で再現されることを示した。本モデルの利点として、入力パラメータが磁束量だけであり、磁束量が測定されている任意の小質量星にも適用可能であることが挙げられる。そこで我々は若い太陽型星についてもモデル計算を実行し、太陽の100倍以上の磁束量を持つ星でもモデルが妥当であることを確かめた。さらに我々は、前主系列星でもモデル計算を行い、おおよそ観測と同程度のX線放射量を説明可能であることも示した。以上の結果は前主系列段階から主系列段階にわたって数値シミュレーションによるXUV推定が十分現実的に実行可能であることを示す。