09:45 〜 10:00
[PCG20-04] 観測ロケットS-310-46号機による電離圏観測に向けた中性質量分析器の開発

キーワード:中性質量分析器、電離圏中性大気組成、観測ロケット
電離圏における中性大気組成は中性大気とプラズマの衝突周波数に影響するため、電離圏電流の電気伝導度を左右する。よって、電離圏電流や電流と相互作用する電場の構造を観測的に明らかにするためには、中性大気組成を観測する必要がある。観測手法としては飛翔体に中性質量分析器を搭載することが一般的であるが、中性質量分析器は大型であるために、近年では観測機会が減少している。そこで、我々は飛翔体への搭載を容易に行えるような小型の飛翔体搭載用中性質量分析器を開発した。本装置は実際に2024年夏に打ち上げが予定されている観測ロケットS-310-46号機に搭載され、高度約100kmから130kmにかけての中性大気組成を観測する予定である。
中性質量分析器の質量分析部は月極域探査ミッションLUPEXに向けて開発が進められている質量分析器TRITONと同型であり、飛行時間型のリフレクトロンを採用している。このリフレクトロンではイオン源と質量分析部の電圧を切り替えることにより、感度が高いが質量分解能の低い1回反射モードと感度は低いが質量分解能の高い3回反射モードを切り替えられるようになっている。TRITONの質量分析部は約190mmであったが、観測ロケットS-310への搭載に向けて約110mmまで小型化を行った。性能試験を通して、質量分解能は1回反射モードで100以上、3回反射モードで200以上を確認している。また、イオン源と検出器はTRITONに向けて開発されたものを使用している。イオン源は小型の電子衝撃イオン化法を用いたものであり、冗長性のために酸化イットリウムY2O3をコーティングしたイリジウムIrフィラメントを2系統備えている(Kawashima et al. 2022)。また、検出器には2段のマイクロチャンネルプレートを用いている。質量分析部、イオン源、検出器は外箱を含めて156×187×130mmに収まる大きさとなっている。
これらに加え、粒子の取込口としてイオン源の手前に直径50mmの球殻状の前室部を取り付けている。相対的に飛翔体の速度で装置に入射する中性大気粒子はイオン源に導入される前に前室部内壁と衝突を繰り返し、前室部の壁温と同等の温度まで熱化される。これにより温度の不定性が減少し、より定量性の高い観測を行うことができる。なお、反応性の高い原子状酸素などは壁との衝突の際に反応し、他の成分の観測にも悪影響を与えるが、これらを抑制するために内壁には金メッキを施している。
中性質量分析器の質量分析部は月極域探査ミッションLUPEXに向けて開発が進められている質量分析器TRITONと同型であり、飛行時間型のリフレクトロンを採用している。このリフレクトロンではイオン源と質量分析部の電圧を切り替えることにより、感度が高いが質量分解能の低い1回反射モードと感度は低いが質量分解能の高い3回反射モードを切り替えられるようになっている。TRITONの質量分析部は約190mmであったが、観測ロケットS-310への搭載に向けて約110mmまで小型化を行った。性能試験を通して、質量分解能は1回反射モードで100以上、3回反射モードで200以上を確認している。また、イオン源と検出器はTRITONに向けて開発されたものを使用している。イオン源は小型の電子衝撃イオン化法を用いたものであり、冗長性のために酸化イットリウムY2O3をコーティングしたイリジウムIrフィラメントを2系統備えている(Kawashima et al. 2022)。また、検出器には2段のマイクロチャンネルプレートを用いている。質量分析部、イオン源、検出器は外箱を含めて156×187×130mmに収まる大きさとなっている。
これらに加え、粒子の取込口としてイオン源の手前に直径50mmの球殻状の前室部を取り付けている。相対的に飛翔体の速度で装置に入射する中性大気粒子はイオン源に導入される前に前室部内壁と衝突を繰り返し、前室部の壁温と同等の温度まで熱化される。これにより温度の不定性が減少し、より定量性の高い観測を行うことができる。なお、反応性の高い原子状酸素などは壁との衝突の際に反応し、他の成分の観測にも悪影響を与えるが、これらを抑制するために内壁には金メッキを施している。