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[PCG21-10] テラヘルツヘテロダイン分光による火星の大気重力波の季節・経度依存性の観測手法の検討
キーワード:テラヘルツヘテロダイン分光、火星、大気重力波
我々は現在、MACO+ (周回・探査技術実証による火星宇宙天気・気候・水環境探査)においてMars Ice Mapperなど次世代の火星探査機のサブペイロード搭載なども見据えて、テラヘルツヘテロダイン分光装置(THSS)の設計検討を進めている。THSS は、ダストやエアロゾルの吸収・散乱の影響を受けにくく、ダストストームの時期でも、火星の低高度の水蒸気や一酸化炭素、そのほか大気の酸化反応プロセスに関わる微量分子の観測が可能である。また太陽のような背景光源を必要とせず、緯度・経度、高度、local-time を広範囲に渡ってLimb-soundingできる強みをもつ他、ドップラー計測により、大気の風速場の観測も可能である。これにより表層近傍や境界層から高度100kmを超える高高度までの大気の上下結合を捉え、GCMとのデータ同化を通して火星大気の物質循環や大気ダイナミクス、気象・気候予測の理解に重要な知見が得られるものと期待される。
大気重力波は、地球では近年、突発的な気象や、雲の形成やエアロゾルなどによる放射強制力や気候への寄与も議論されている。火星でも最近ではTGOの中間赤外の観測により、高度100-130 kmで大気重力波が砕波の様子も捉えられており(Starichenko et al. JGR Planets,128, 2021)、上層の大気環境への寄与についての理解が重要視されている。本研究では黒田によるGCMのシミュレーションの温度や圧力、一酸化炭素の時間依存の3次元データを用いて、一酸化炭素の460GHz帯のスペクトルをNadirで疑似観測した。時空間分解能は10s、1.1度(67km)であり、衛星は移動中も大気が時間変動しているとし、オリンポス山や標高の低い経度などをLST15:00に高度250kmで通過していくものとして計算を行った。その結果、Ls=270度の南半球が夏の時期は、COスペクトルの吸収線の変動は、GCMから重力波によって温度の擾乱が卓越する北半球で、特にオリンポス山周辺で大きくなる様子が見てとれた。逆にLs=90度で北半球が夏の時期は、南半球で吸収スペクトルの変動の振幅が見られた。ただしその大きさと広がりはLs=270度と比べると小さいものとなった。このことから、大気重力波の季節の違いや緯度・経度の分布をTHSSで検出できる可能性が示唆された。
大気重力波は、地球では近年、突発的な気象や、雲の形成やエアロゾルなどによる放射強制力や気候への寄与も議論されている。火星でも最近ではTGOの中間赤外の観測により、高度100-130 kmで大気重力波が砕波の様子も捉えられており(Starichenko et al. JGR Planets,128, 2021)、上層の大気環境への寄与についての理解が重要視されている。本研究では黒田によるGCMのシミュレーションの温度や圧力、一酸化炭素の時間依存の3次元データを用いて、一酸化炭素の460GHz帯のスペクトルをNadirで疑似観測した。時空間分解能は10s、1.1度(67km)であり、衛星は移動中も大気が時間変動しているとし、オリンポス山や標高の低い経度などをLST15:00に高度250kmで通過していくものとして計算を行った。その結果、Ls=270度の南半球が夏の時期は、COスペクトルの吸収線の変動は、GCMから重力波によって温度の擾乱が卓越する北半球で、特にオリンポス山周辺で大きくなる様子が見てとれた。逆にLs=90度で北半球が夏の時期は、南半球で吸収スペクトルの変動の振幅が見られた。ただしその大きさと広がりはLs=270度と比べると小さいものとなった。このことから、大気重力波の季節の違いや緯度・経度の分布をTHSSで検出できる可能性が示唆された。