11:00 〜 11:15
[PCG22-08] UV照射による複雑有機分子合成反応のモンテカルロシミュレーション

キーワード:複雑有機分子、原始惑星系円盤、理論化学モデル
複雑有機分子(Complex Organic Molecules: COMs)は原始惑星系円盤や分子雲など様々な宇宙環境で観測されている。COMsの合成機構の一つは紫外線照射によって駆動される氷粒子表面のラジカル反応である。これまでに多くの実験において、このような氷条件下で生体分子を含む多様な有機分子が合成されることが報告されている。一方で、照射によって起こるラジカル反応の反応ネットワークの複雑さや、実験生成物のin-situ分析の難しさからCOMs合成に関する多くの反応過程は明らかではない。したがって、COMs合成過程を解明するためには実験と相補的な数値シミュレーションが必要である。
本研究では、モンテカルロ法用いた化学反応シミュレーションスキームを新たに開発した。このモデルは、COMs合成の複雑な反応ネットワークを探索するために、反応経路を先に用意する必要がなく、かつ計算コストを抑えることを目的にデザインされた。この手法を用いることでCOMs合成反応を大域的に探索することが可能となり、COMs形成過程の包括的な理解へとつながる。本研究では、原始惑星系円盤中の氷ダストで起こるCOMs合成に注目し、そこで生成されるCOMsの種類及びその形成メカニズムを理解すること目指す。
原始惑星系円盤内の一部のダストはガスの乱流によって上層に巻き上げられ、中心星からの強い紫外線に曝される。その際、氷表面において有機物合成反応が促進されると考えられる。しかしその後、多くのダストは再び円盤に沈み、紫外線から遮断されると考えられる。このような状況を仮定し、我々のシミュレーションでは、氷ダストが紫外線に曝され分子の光解離が起きる「UVフェーズ」と、その後照射が終わり、光解離が進まなくなる「ポストUVフェーズ」という二つのフェーズを設定する。温度をT=100 Kとし、初期分子セットであるメタノール、ホルムアルデヒド、アンモニア、水分子の間で起こる化学反応のシミュレーションを行なった。
結果からは、紫外線照射による光解離反応と、それに誘発されるラジカル-ラジカル反応によって、初期分子内の共有結合がランダムに組み替えられ、多様な種類の結合や官能基などの構造が形成されることが示された。また、その結果アミノ酸や糖を含む複雑な有機分子が広い初期条件で生成された。57個の異なる初期分子セットを用いた計算結果から、多くの条件下でアミノ酸の最終存在量は糖よりも10倍以上高い一方で、それらの最終存在量はどちらも初期分子の原子比: C/H~0.1-0.3、O/H~0.3-0.5でピークを持つ、極めて似た初期原子比依存性を持つことがわかった。本研究では、初期分子の原子比からアミノ酸と糖の最終的な存在量を予測する半解析式を導き、アミノ酸と糖の生成を制御するメカニズムを明らかにした。
本研究では、モンテカルロ法用いた化学反応シミュレーションスキームを新たに開発した。このモデルは、COMs合成の複雑な反応ネットワークを探索するために、反応経路を先に用意する必要がなく、かつ計算コストを抑えることを目的にデザインされた。この手法を用いることでCOMs合成反応を大域的に探索することが可能となり、COMs形成過程の包括的な理解へとつながる。本研究では、原始惑星系円盤中の氷ダストで起こるCOMs合成に注目し、そこで生成されるCOMsの種類及びその形成メカニズムを理解すること目指す。
原始惑星系円盤内の一部のダストはガスの乱流によって上層に巻き上げられ、中心星からの強い紫外線に曝される。その際、氷表面において有機物合成反応が促進されると考えられる。しかしその後、多くのダストは再び円盤に沈み、紫外線から遮断されると考えられる。このような状況を仮定し、我々のシミュレーションでは、氷ダストが紫外線に曝され分子の光解離が起きる「UVフェーズ」と、その後照射が終わり、光解離が進まなくなる「ポストUVフェーズ」という二つのフェーズを設定する。温度をT=100 Kとし、初期分子セットであるメタノール、ホルムアルデヒド、アンモニア、水分子の間で起こる化学反応のシミュレーションを行なった。
結果からは、紫外線照射による光解離反応と、それに誘発されるラジカル-ラジカル反応によって、初期分子内の共有結合がランダムに組み替えられ、多様な種類の結合や官能基などの構造が形成されることが示された。また、その結果アミノ酸や糖を含む複雑な有機分子が広い初期条件で生成された。57個の異なる初期分子セットを用いた計算結果から、多くの条件下でアミノ酸の最終存在量は糖よりも10倍以上高い一方で、それらの最終存在量はどちらも初期分子の原子比: C/H~0.1-0.3、O/H~0.3-0.5でピークを持つ、極めて似た初期原子比依存性を持つことがわかった。本研究では、初期分子の原子比からアミノ酸と糖の最終的な存在量を予測する半解析式を導き、アミノ酸と糖の生成を制御するメカニズムを明らかにした。
