日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-CG 宇宙惑星科学複合領域・一般

[P-CG22] 宇宙における物質の形成と進化

2024年5月27日(月) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:野村 英子(国立天文台 科学研究部)、大坪 貴文(産業医科大学)、瀧川 晶(東京大学 大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻)、荒川 創太(海洋研究開発機構)


17:15 〜 18:45

[PCG22-P02] 高温真空TPDを用いた模擬星間有機物ダストの化学構造の分析

*妹尾 梨子1、左近 樹1、吉井 丈晴2羽馬 哲也1、清水 俊介2、川口 遼2、尾中 敬1 (1.東京大学、2.東北大学)

キーワード:有機物、ダスト、赤外線

未同定赤外バンドという特徴的な一連の赤外線放射バンド群が様々な進化段階の星周環境や銀河系内外のISMにひろく観測されている。その担い手は有機物だと言われており、宇宙の物質循環を探るうえでその化学構造を知ることは重要であるが、詳細な化学構造は未だ明らかにされていない。 我々の研究グループは、新星周りに見られる未同定赤外バンドとよく似たIRスペクトルを示す模擬有機物ダスト(Quenched Nitrogen included Carbonaceous Composite (QNCC); 固体炭化水素と窒素ガスからなるプラズマを急冷凝縮してできる、C,H,Nで構成される物質)を作成した(Endo et al. 2021)。新星周囲に観測されるの未同定赤外バンドは8 um付近にピークを持つ幅の広い構造を示すことが特徴的で、Endo et al. (2021)よりその担い手がアミンに起因するものであることが示唆された。

本研究ではQNCCの化学構造をより詳細に調べるため、東北大学の吉井助教らが開発した高温真空TPD分析装置を用いた。比較のため、QNCCの材料物質として用いたfilmy QCC (Quenched Carbonaceous Composite; Sakata et al. 1984; メタンガスから作成したプラズマを急冷凝縮してできる、C,Hからなる物質)の化学構造の分析も行った。 高温真空TPD分析では、X-ray Photoelectron Spectroscopy (XPS)と組み合わせて議論することによって、C, H, Nからなる炭素材料の詳細な化学構造を調べることができる。

その結果、filmy QCCはHで終端された構造が多くアルキル基はそれより少ないこと、sp3-Cを多く含む物質であることがわかった。QNCCはHで終端された構造が多くアルキル基は少ないこと、filmy QCCよりもsp2-Cが多いこと、Nの存在形態はgraphicit-NやNV centerでの取り込みは少なく、pyrrolic-Nの他、pyridinic-N および/またはアミン修飾ナノダイヤモンドに類似する構造が存在していることが示唆された。