17:15 〜 18:45
[PCG22-P06] 原始星アウトフローにおけるCO分子の紫外線解離の重元素量依存性
138億年の宇宙史を通じて、星形成環境は絶えず変化している。特に、重元素量は宇宙の進化とともに増加しているため、低重元素量環境における星形成過程を調査することは昔の星形成過程を理解する上で重要である。星形成過程の調査によって惑星形成の初期条件を理解することにもつながる。
近傍矮小銀河である小マゼラン雲は重元素量が0.2Z☉と低く、昔の銀河系を模擬する環境である。近年、小マゼラン雲における星形成領域のCO分子輝線観測から、原始星アウトフローの強度が弱いことが報告された。この結果は低重元素量における星形成過程が、銀河系環境のものとは異なることを示唆する可能性がある。しかし、ダスト微粒子の少ない低重元素量環境では紫外線がよく透過し、CO分子が光解離されやすいため、単にCO輝線で計測できるアウトフローが見えなくなっているだけの可能性も否定できない。
本研究の目的は、観測された「小マゼラン雲の弱いアウトフロー」を、原始星紫外線によるCO分子の光解離により説明できるかを明らかにすることである。そこで、アウトフロー中の原始星紫外線のダスト吸収による減衰とCO分子の紫外線解離と生成を計算し、CO存在度を求めるモデルを構築した。これを原始星光度と重元素量を様々に振って計算を行うことで、CO存在度のそれら物理パラメタへの依存性を調べた。この際に、ダスト量は重元素量に比例すると仮定した。また、得られたCO存在度の分布からCOで観測可能なアウトフロー質量を求め、観測結果と比較した。
その結果、低重元素量ではCO存在度の減少が見られ、COで観測可能なアウトフロー質量も減少した。CO存在度の分布からアウトフローのダスト減光に対する光学的厚みが重要であることがわかった。また、光学的厚みはアウトフロー半径にも依存しているので、アウトフロー半径を変更して計算をしたところ観測結果を再現することができた。このことは重元素量が1-0.2Z☉における星形成過程の普遍性を否定するものではなかったことを示唆する。一方、光化学過程については重元素量に強く依存することが分かったため、今後は物質の形成と進化の観点からより詳細なモデル化を進めることが必要といえる。
近傍矮小銀河である小マゼラン雲は重元素量が0.2Z☉と低く、昔の銀河系を模擬する環境である。近年、小マゼラン雲における星形成領域のCO分子輝線観測から、原始星アウトフローの強度が弱いことが報告された。この結果は低重元素量における星形成過程が、銀河系環境のものとは異なることを示唆する可能性がある。しかし、ダスト微粒子の少ない低重元素量環境では紫外線がよく透過し、CO分子が光解離されやすいため、単にCO輝線で計測できるアウトフローが見えなくなっているだけの可能性も否定できない。
本研究の目的は、観測された「小マゼラン雲の弱いアウトフロー」を、原始星紫外線によるCO分子の光解離により説明できるかを明らかにすることである。そこで、アウトフロー中の原始星紫外線のダスト吸収による減衰とCO分子の紫外線解離と生成を計算し、CO存在度を求めるモデルを構築した。これを原始星光度と重元素量を様々に振って計算を行うことで、CO存在度のそれら物理パラメタへの依存性を調べた。この際に、ダスト量は重元素量に比例すると仮定した。また、得られたCO存在度の分布からCOで観測可能なアウトフロー質量を求め、観測結果と比較した。
その結果、低重元素量ではCO存在度の減少が見られ、COで観測可能なアウトフロー質量も減少した。CO存在度の分布からアウトフローのダスト減光に対する光学的厚みが重要であることがわかった。また、光学的厚みはアウトフロー半径にも依存しているので、アウトフロー半径を変更して計算をしたところ観測結果を再現することができた。このことは重元素量が1-0.2Z☉における星形成過程の普遍性を否定するものではなかったことを示唆する。一方、光化学過程については重元素量に強く依存することが分かったため、今後は物質の形成と進化の観点からより詳細なモデル化を進めることが必要といえる。
