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[PEM10-08] 波長427.8nmのオーロラを計測するファブリ・ペロー干渉計の最適化:ノルウェー・シーボトンでの2023-2024冬季観測

キーワード:共鳴散乱によるオーロラ、イオン上昇流、窒素分子イオン、427.8 nm、ファブリ・ペロー干渉計
地球の周辺の宇宙空間では1960年代から数々の人工衛星ミッションにより、磁気圏中で地球電離圏由来のイオンが観測されている。電子やO+に加えて、あけぼの衛星ではN2+のような重い分子イオンも高高度に輸送されていることが分かっている(Yau et al., 1993)。しかしN2+が電離圏で上向きに加速され磁気圏まで輸送される過程はよくわかっていない。
電離圏でのN2+の上昇流により引き起こされている現象として、太陽光をN2+が共鳴散乱することで発光する波長427.8 nmの青いオーロラが挙げられる(e.g., IAGA, 1963、Shiokawa et al., 2019)。ファブリ・ペロー干渉計(FPI)を用いてこのオーロラを観測すると、地上からはドップラーシフトにより少し長い波長が観測されると期待され、これを通してN2+の上昇速度が計測できる可能性がある。私たちは2022-2023年の冬期に、ノルウェーのEISCATトロムソ観測所でFPIによる427.8nmのオーロラ発光を観測した。しかし観測結果の画像に映る干渉縞の数は少なく、測定誤差もとても大きかった。そこで、この観測をモデル計算で再現することで、十分なカウント数を得られていないことによるドップラーシフトの不確かさが、大きな測定誤差を引き起こしていることを明らかにした。さらにこの十分なカウントを得られない原因の一つとして、多波長FPIの計測における波長427.8 nmでの焦点位置のずれがあることを推定した。
2023年10月にノルウェーのシーボトンで波長427.8 nmの光に焦点を合わせたキャンペーン観測を実施した。固定方向(北向きで天頂角45度)の観測時に粒子降下による窒素分子イオンオーロラの観測に成功した。フリンジの数はこれまでの3から15と大幅に増加し、ドップラーシフトのより正確な計測ができるようになった。固定方向観測のため、このデータからはN2+の運動速度変化のみ計算することができた。その結果、カメラ調整前に夜間平均干渉縞画像から得られる速度の標準偏差が52m/s だったのに対し、今回の観測では9分の時間分解能、標準偏差69m/sでN2+の速度変化を求めることができた。本発表ではこれらの観測・解析結果を報告する。また、2024年3月にもう一度焦点を合わせたキャンペーン観測をノルウェーのシーボトンで予定しており、その結果についても報告予定である。
電離圏でのN2+の上昇流により引き起こされている現象として、太陽光をN2+が共鳴散乱することで発光する波長427.8 nmの青いオーロラが挙げられる(e.g., IAGA, 1963、Shiokawa et al., 2019)。ファブリ・ペロー干渉計(FPI)を用いてこのオーロラを観測すると、地上からはドップラーシフトにより少し長い波長が観測されると期待され、これを通してN2+の上昇速度が計測できる可能性がある。私たちは2022-2023年の冬期に、ノルウェーのEISCATトロムソ観測所でFPIによる427.8nmのオーロラ発光を観測した。しかし観測結果の画像に映る干渉縞の数は少なく、測定誤差もとても大きかった。そこで、この観測をモデル計算で再現することで、十分なカウント数を得られていないことによるドップラーシフトの不確かさが、大きな測定誤差を引き起こしていることを明らかにした。さらにこの十分なカウントを得られない原因の一つとして、多波長FPIの計測における波長427.8 nmでの焦点位置のずれがあることを推定した。
2023年10月にノルウェーのシーボトンで波長427.8 nmの光に焦点を合わせたキャンペーン観測を実施した。固定方向(北向きで天頂角45度)の観測時に粒子降下による窒素分子イオンオーロラの観測に成功した。フリンジの数はこれまでの3から15と大幅に増加し、ドップラーシフトのより正確な計測ができるようになった。固定方向観測のため、このデータからはN2+の運動速度変化のみ計算することができた。その結果、カメラ調整前に夜間平均干渉縞画像から得られる速度の標準偏差が52m/s だったのに対し、今回の観測では9分の時間分解能、標準偏差69m/sでN2+の速度変化を求めることができた。本発表ではこれらの観測・解析結果を報告する。また、2024年3月にもう一度焦点を合わせたキャンペーン観測をノルウェーのシーボトンで予定しており、その結果についても報告予定である。