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[PEM11-P14] 太陽X線画像におけるシグモイド構造自動検出のための機械学習モデル開発

キーワード:宇宙天気、コロナ質量放出、機械学習、X線
コロナ質量放出は太陽コロナ中のプラズマが大量に放出される現象であり、この現象により通信障害や人工衛星の機能障害、さらには宇宙飛行士の被曝といった諸問題が引き起こされる可能性がある。これらの影響を最小限に抑えるためには、コロナ質量放出の事前予測が極めて重要である。多くの場合、太陽活動領域での大規模なコロナ質量放出は、S字型のねじれた磁場構造であるシグモイド構造という前兆現象を伴うとされている。そのため、シグモイド構造を検出することは非常に重要であるが、現在、その検出プロセスには人手による解析が必要であり、リアルタイム性には問題がある。そこで本研究では、太陽観測衛星「ひので」のX線画像データからシグモイド構造を自動検出する機械学習モデルを開発した。機械学習モデルには、自然言語処理の分野において有効であったTransformerを画像処理に応用したVision Transformerを用いた。Vision Transformerでは、画像をパッチに分割してそれぞれを線形変換して埋め込んだものを入力とし、各パッチを自然言語処理における単語のように扱うことで Transformer に適用することを可能としている。これにより計算効率向上と膨大なデータを用いた事前学習が可能となり、従来の機械学習モデルより優れた性能を発揮することが報告されている。モデル構築のための学習用データセット作成にあたっては、2016年から2019年の「ひので」のX線望遠鏡の観測データとHeliophysics Events Knowledgebaseを照合することによりシグモイド構造を捉えた画像3000枚、捉えていない画像3000枚を抽出した。テスト用データも同様に450枚ずつ抽出し、構築したモデルに対して適用した。その結果、再現率は0.813、適合率は0.723となり、機械学習によるシグモイド構造自動検出の可能性を示すことができた。今学会では、Attention機構を用いた注視領域の可視化に向けた具体的方針についても議論したい。