09:00 〜 09:15
[PEM16-07] 惑星間空間シンチレーション観測・Hinode/EIS観測およびPFSSモデルから得られたplasma-upflowと低速太陽風の関係
キーワード：太陽風、惑星間空間シンチレーション、極端紫外線撮像分光装置
太陽風は太陽から定常的に吹き出すプラズマ流であり、高速太陽風 (> 500 km/s) と低速太陽風 (< 500 km/s) に大別される。太陽風の流源は長年議論されており、高速太陽風の流源はコロナホールとの関係が示唆されて理解が進んでいる。一方で、低速太陽風の流源は未だ解明されておらず、先行研究では低緯度の小規模コロナホールや極域コロナホールの境界など、様々な説が提唱されている。その中で、活動領域の端において観測されるプラズマの上昇流 plasma-upflow（以下 upflow）が低速太陽風の流源である可能性が示唆されている。
宇宙地球環境研究所（名古屋大学）では大型電波望遠鏡を用いた惑星間空間シンチレーション (IPS) 観測を実施しており、観測データをトモグラフィー解析することで source surface(2.5 太陽半径)へ投影されたグローバルな太陽風構造を得られる。また、Hinode 衛星に搭載されている極端紫外線撮像分光装置 (EIS) で観測される分光観測データからスペクトルのドップラーシフトを計測し、視線方向に対するプラズマの速度を算出することで upflow 領域が判別される。さらに、ポテンシャル磁場流源面 (PFSS) モデルによって、彩層からコロナにかけて磁力線構造を推定できる。以上のデータにより、upflow 領域から伸びる磁力線を source surface まで追うことで、upflow 領域と繋がる太陽風速度の解析が可能となる。
本研究の目的は upflow と低速太陽風の関係を明らかにし、低速太陽風の流源や加速機構を理解することである。本研究では、IPS 観測から得られる太陽風速度、EIS から得られる分光観測データ、PFSS モデルから計算される磁力線構造を解析し、upflow が低速太陽風の流源となり得るかを検証した。さらに、upflow 領域における視線方向のプラズマ速度（以下 upflow 速度）と太陽風速度の関係を調べた。
Hinode/EIS によって 2021/06/18 20:46 UT に活動領域 NOAA 12833 の東端で観測された upflow 領域の解析結果を報告する。upflow 領域から source surface へ伸びる磁力線が確認され、FeXIII（202.04 Å) のラインで upflow 速度が 10 km/s を上回る領域では、磁力線で繋がる太陽風速度は 200~450 km/s であった。以上から、本研究で解析した upflow 領域から低速太陽風が吹き出していると考えられる。また、upflow 領域内の各磁力線における upflow 速度とその磁力線に接続する太陽風速度の関係を調べた結果、両者に明確な相関関係は確認されなかった。
upflow が低速太陽風の流源であると帰結するためには、Hinode/EIS の分光観測から得られる upflow 領域のプラズマ密度や元素組成比を Solar Orbiter や Parker Solar Probe などの in-situ 観測データから得られる類似の物理量と比較して解釈する必要がある。そのためには、upflow 領域内の小さな構造の特徴を比較する必要があ り、誤差を数秒角程度まで抑えた EIS データの位置合わせが求められる。また、低速太陽風の加速機構を理解するためには Hinode/EIS の分光観測から得られる非熱的速度や PFSS モデルから得られるコロナ磁場の磁気拡大率を踏まえた検証が有効であると考えられる。
宇宙地球環境研究所（名古屋大学）では大型電波望遠鏡を用いた惑星間空間シンチレーション (IPS) 観測を実施しており、観測データをトモグラフィー解析することで source surface(2.5 太陽半径)へ投影されたグローバルな太陽風構造を得られる。また、Hinode 衛星に搭載されている極端紫外線撮像分光装置 (EIS) で観測される分光観測データからスペクトルのドップラーシフトを計測し、視線方向に対するプラズマの速度を算出することで upflow 領域が判別される。さらに、ポテンシャル磁場流源面 (PFSS) モデルによって、彩層からコロナにかけて磁力線構造を推定できる。以上のデータにより、upflow 領域から伸びる磁力線を source surface まで追うことで、upflow 領域と繋がる太陽風速度の解析が可能となる。
本研究の目的は upflow と低速太陽風の関係を明らかにし、低速太陽風の流源や加速機構を理解することである。本研究では、IPS 観測から得られる太陽風速度、EIS から得られる分光観測データ、PFSS モデルから計算される磁力線構造を解析し、upflow が低速太陽風の流源となり得るかを検証した。さらに、upflow 領域における視線方向のプラズマ速度（以下 upflow 速度）と太陽風速度の関係を調べた。
Hinode/EIS によって 2021/06/18 20:46 UT に活動領域 NOAA 12833 の東端で観測された upflow 領域の解析結果を報告する。upflow 領域から source surface へ伸びる磁力線が確認され、FeXIII（202.04 Å) のラインで upflow 速度が 10 km/s を上回る領域では、磁力線で繋がる太陽風速度は 200~450 km/s であった。以上から、本研究で解析した upflow 領域から低速太陽風が吹き出していると考えられる。また、upflow 領域内の各磁力線における upflow 速度とその磁力線に接続する太陽風速度の関係を調べた結果、両者に明確な相関関係は確認されなかった。
upflow が低速太陽風の流源であると帰結するためには、Hinode/EIS の分光観測から得られる upflow 領域のプラズマ密度や元素組成比を Solar Orbiter や Parker Solar Probe などの in-situ 観測データから得られる類似の物理量と比較して解釈する必要がある。そのためには、upflow 領域内の小さな構造の特徴を比較する必要があ り、誤差を数秒角程度まで抑えた EIS データの位置合わせが求められる。また、低速太陽風の加速機構を理解するためには Hinode/EIS の分光観測から得られる非熱的速度や PFSS モデルから得られるコロナ磁場の磁気拡大率を踏まえた検証が有効であると考えられる。