17:15 〜 18:45
[PPS02-P05] 2層粒子層標的におけるクレーター形成と衝突励起振動
キーワード:クレーター、レゴリス、衝突励起振動、衝突実験、層状
小惑星の中には,岩塊が重力的に再集積したラブルパイル天体が存在することが知られており,その表層はサイズ分布を持つ強度の小さなボルダーで覆われている.例えばイトカワやリュウグウ,ディディモスなどはラブルパイル天体であると考えられていて,これらの天体における衝突現象に伴う地質活動の解明の重要性は増している.小惑星イトカワは,レゴリスやボルダーの分布に地域性があり,ボルダーが極端に少ない平坦な地域も存在する.これは衝突励起振動によって天体表面のレゴリスが流動化したことが原因であると考えられている.リュウグウ表面に形成された,SCIクレーターは衝突点付近にピットがあり,表面の結合強度を持たないレゴリス層の下には数100Paの比較的硬い層が存在することが示唆された (Arakawa et al. 2020).一方で,イトカワとは異なり,全球的にボルダーが分布しており,振動による地形は確認できていない.また,SCIクレーター形成時にも衝突励起振動によるボルダーの移動はほとんどなかった.イトカワとリュウグウの衝突励起振動による地形緩和の程度の違いは,天体の構成粒子の物性の違いや,内部構造の違いによる可能性が考えられる.そこで,本研究では,2種類のサイズの異なる風化凝灰岩粒子を用いた層構造標的に対して衝突実験を行った.クレーターサイズと衝突励起振動を計測することで,構成粒子の強度やサイズ,層構造がクレーター形状と衝突励起振動に及ぼす影響を調べた.
衝突実験はJAXAの縦型二段式軽ガス銃を用いて実施した.弾丸は1mmのアセテート球と4.7mmのナイロン球を用いた.衝突速度4km/sと6km/sで標的表面に対して垂直に衝突させた.標的は直径1~4 mm(細粒)と1~4 cm(大玉)の風化凝灰岩を用いて,細粒粒子が下層に,大玉粒子が上層になるようにタライに充填した.層の厚みを,大玉:細粒= 80:80,60:100,50:110,30:130 (mm)となるように変化させた.加速度計を大玉層に1個,細粒層に2個埋め込み,それぞれ衝突点からの距離を変化させて設置した.
アセテート弾丸を衝突速度4km/sで衝突させた結果,弾丸が直径2mmの大玉粒子標的に衝突して,大玉1粒子だけが貫入破壊された.ナイロン弾丸を4km/sで衝突させた結果,クレーターサイズは始めに衝突した標的粒子の大きさや場所によって変化していて,大きな粒子に衝突するほどクレーターサイズは小さくなった.本研究の衝突条件範囲では,クレーターサイズは大玉層の厚さに依存しなかった.クレーター深さ直径比を調べたところ,0.2~0.4の範囲で変化した.同じ衝突速度のとき,大玉層が浅くなるほど,深さ直径比が小さくなった.また,大玉層の厚さが同じとき,衝突速度が大きくなるほど,深さ直径比が小さくなった.したがって,本実験の層構造標的では,下層の粒子層にクレーター掘削流が進展しにくいことが考えられる.発表では,各地点における衝突励起振動の大きさや,伝搬速度についても報告する.
衝突実験はJAXAの縦型二段式軽ガス銃を用いて実施した.弾丸は1mmのアセテート球と4.7mmのナイロン球を用いた.衝突速度4km/sと6km/sで標的表面に対して垂直に衝突させた.標的は直径1~4 mm(細粒)と1~4 cm(大玉)の風化凝灰岩を用いて,細粒粒子が下層に,大玉粒子が上層になるようにタライに充填した.層の厚みを,大玉:細粒= 80:80,60:100,50:110,30:130 (mm)となるように変化させた.加速度計を大玉層に1個,細粒層に2個埋め込み,それぞれ衝突点からの距離を変化させて設置した.
アセテート弾丸を衝突速度4km/sで衝突させた結果,弾丸が直径2mmの大玉粒子標的に衝突して,大玉1粒子だけが貫入破壊された.ナイロン弾丸を4km/sで衝突させた結果,クレーターサイズは始めに衝突した標的粒子の大きさや場所によって変化していて,大きな粒子に衝突するほどクレーターサイズは小さくなった.本研究の衝突条件範囲では,クレーターサイズは大玉層の厚さに依存しなかった.クレーター深さ直径比を調べたところ,0.2~0.4の範囲で変化した.同じ衝突速度のとき,大玉層が浅くなるほど,深さ直径比が小さくなった.また,大玉層の厚さが同じとき,衝突速度が大きくなるほど,深さ直径比が小さくなった.したがって,本実験の層構造標的では,下層の粒子層にクレーター掘削流が進展しにくいことが考えられる.発表では,各地点における衝突励起振動の大きさや,伝搬速度についても報告する.