日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS04] Recent advances in the science of Venus

2024年5月29日(水) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:佐藤 毅彦(宇宙航空研究開発機構・宇宙科学研究本部)、はしもと じょーじ(岡山大学学術研究院自然科学学域)、McGouldrick Kevin(University of Colorado Boulder)、Persson Moa(Swedish Institute of Space Physics, Uppsala, Sweden)


17:15 〜 18:45

[PPS04-P10] あかつき中間赤外カメラから得られる温度を用いた客観解析データ作成への試行

*藤澤 由貴子1杉本 憲彦1小守 信正1安藤 紘基2高木 征弘2村上 真也3神山 徹4 (1.慶應義塾大学、2.京都産業大学、3.宇宙航空研究開発機構、4.産業技術総合研究所)

キーワード:データ同化、金星大気、あかつき

金星大気におけるデータ同化研究は、金星探査機「あかつき」観測データの長期間の蓄積により現実的なものとなってきている。Fujisawa et al. [1] では、紫外カメラの雲追跡から得られる水平風速を同化し、金星で初めての客観解析データを作成した。本研究では [1] に引き続き、金星大気大循環モデル「AFES-Venus」[2] を基にした金星大気データ同化システム「ALEDAS-V」[3] を用いて、中間赤外カメラ(LIR)から得られる温度を同化し、金星の客観解析データの作成を試みる。LIRの観測高度は出射角(観測地点から見た天頂方向と観測者の方向のなす角)により変化する。今回の実験では同化高度は一律65 kmとし、出射角を40度以下、及び75度以下に限定した観測データを用いることにより、出射角による同化への影響を調査した。

図は、東西時間平均の東西風(カラー, m/s)と温度(コンター, K)の緯度高度図である。観測を同化せずに行った実験(free run; 図a)では、スーパーローテーション(高度70 km付近における自転速度を超える東西風)の速度は約130 m/sほどであり、これまでに観測されている速度(~100 m/s)に比べて速い。LIRの出射角40度以下に限定した観測データを同化した実験(em40; 図b)では、観測と同等速度のスーパーローテーションが得られ、同化によりスーパーローテーションの速度が改善された。また、中高緯度のさらに多くの観測データを同化に含めるため、LIRの出射角75度以下に限定した観測データを同化した実験を行ったところ(em75;図c)、スーパーローテーションは観測に比べ遅くなった。出射角の高い観測データが本来の高度に同化されず、中高緯度を過剰に温めていることが原因と考えられる。

[1] Fujisawa, Y., Sy. Murakami, N. Sugimoto, M. Takagi, T. Imamura, T. Horinouchi, G. L. Hashimoto, M. Ishiwatari, T. Enomoto, T. Miyoshi, H. Kashimura and Y.-Y. Hayashi, Y.-Y. (2022), Sci. Rep. 12, 14577.
[2] Sugimoto, N., M. Takagi, and Y. Matsuda (2014a), J. Geophys. Res. Planets, 119, 1950–1968.
[3] Sugimoto, N., A. Yamazaki, T. Kouyama, H. Kashimura, T. Enomoto, and M. Takagi (2017), Sci. Rep., 7(1), 9321.