17:15 〜 18:45
[PPS04-P11] 相関k分布法を導入したGCMで計算された雲層における力学・熱力学的構造
★招待講演
キーワード:放射、ストリーク構造、子午面循環、金星
金星探査機「あかつき」が取得した観測データと金星大気大循環モデル「AFES-Venus」(Sugimoto et al., 2014)を「ALEDAS-V」(Sugimoto et al., 2017)でデータ同化し、金星大気循環のより確からしい描像が得られるようになってきた(Fujisawa et al.,2022)。ただし、AFES-Venusでは、大気の熱力学的構造を計算する上で重要な放射過程は、与えられた太陽加熱とニュートン冷却の組み合わせによって簡略化されてきた。一方、精緻な放射スキームを開発導入した、金星大気大循環シミュレーションも行われている(e.g., Lebonnois et al., 2010; Yamamoto et al., 2019)。また、あかつきから、より多くの有益な情報を抽出し、データ同化により金星大気循環のより物理的・整合的な推測を得るためには、リトリーバルした量だけでなく、観測量である雲の不透明度や放射輝度(あるいはそのパターン)を同化すべきである。この目的のため、我々はTakahashi et al. (2023)で開発された、惑星大気の相関k分布法による放射スキームをAFES-Venusに導入した。発表では、この放射スキームを用いて得られた力学・熱力学的構造について報告し、簡易放射モデルを用いて得られた結果と比較する。
本研究では、AFES(e.g., Ohfuchi et al., 2005)を金星用の設定で用いるために修正されたAFES-Venusを用いる。本研究のために、惑星のエネルギーバランスを解くための放射モデルおよび地表面モデルを追加した。我々の数値モデルの制約は、定圧比熱を一定(Cp=900 J/(kg K); AFES-Venusの従来の計算では1000 J/(kg K))の理想気体を仮定したことである。また、仮定した放射活性物質と雲の分布(Crisp, 1986; Pollack et al., 1993)は、時間変化せず、圧力座標で水平一様に与えている。時間積分は平衡に達するまで(600地球年)行った。なお、定圧比熱の値は、放射平衡の場が下層(高度40km以下)の静的安定度の分布が観測と類似し、かつ雲層の比熱の値が、実際の金星のそれの良い近似となるように選んでいる。
放射平衡に達した後、子午面循環は、境界層、高度20–30km、高度50km付近にそれぞれセルをもつ3セル型の構造である。全球平均温度場は、VIRA(Seiff et al., 1985)と比較して最大25K程度の低温バイアスがあるものの、安定度や南北温度勾配は、定性的に観測と整合している。東西風は、高度90km以下の全層で、現実的な強度(最大100–130m/s)のスーパーローテーションである。雲層内の循環は簡易放射モデルを用いた場合より強化され、観測の放射輝度や簡易放射モデルを用いた高解像度実験と類似するストリーク構造(Kashimura et al. 2019)のようなパターンが、我々の低解像度の実験でも再現された。また、極域に局在した低安定度層は赤道域まで広がり、赤道域でも強い対流が生成された。
本研究では、AFES(e.g., Ohfuchi et al., 2005)を金星用の設定で用いるために修正されたAFES-Venusを用いる。本研究のために、惑星のエネルギーバランスを解くための放射モデルおよび地表面モデルを追加した。我々の数値モデルの制約は、定圧比熱を一定(Cp=900 J/(kg K); AFES-Venusの従来の計算では1000 J/(kg K))の理想気体を仮定したことである。また、仮定した放射活性物質と雲の分布(Crisp, 1986; Pollack et al., 1993)は、時間変化せず、圧力座標で水平一様に与えている。時間積分は平衡に達するまで(600地球年)行った。なお、定圧比熱の値は、放射平衡の場が下層(高度40km以下)の静的安定度の分布が観測と類似し、かつ雲層の比熱の値が、実際の金星のそれの良い近似となるように選んでいる。
放射平衡に達した後、子午面循環は、境界層、高度20–30km、高度50km付近にそれぞれセルをもつ3セル型の構造である。全球平均温度場は、VIRA(Seiff et al., 1985)と比較して最大25K程度の低温バイアスがあるものの、安定度や南北温度勾配は、定性的に観測と整合している。東西風は、高度90km以下の全層で、現実的な強度(最大100–130m/s)のスーパーローテーションである。雲層内の循環は簡易放射モデルを用いた場合より強化され、観測の放射輝度や簡易放射モデルを用いた高解像度実験と類似するストリーク構造(Kashimura et al. 2019)のようなパターンが、我々の低解像度の実験でも再現された。また、極域に局在した低安定度層は赤道域まで広がり、赤道域でも強い対流が生成された。
