17:15 〜 18:45
[PPS06-P12] FSI法を用いたMGS電波掩蔽観測による火星極夜域の気温の高度分布

キーワード:火星、電波掩蔽、極夜、FSI
火星は極夜域で大気主成分の二酸化炭素(CO2)が過飽和・凝結するほどの寒冷な気候を持 つ。大気主成分が凝結する現象は地球では観測されておらず、火星特有の現象である。極夜域ではCO2が降雪して地表面に堆積したり、直接地表面に凝結したりすることで、極冠を形成する。極夜が明けると、極冠から再びCO2が昇華する。このように、極夜域で大気が凝結・昇華を繰り返すことで大気量の20-30%が変動する。
大気中のCO2過飽和を研究するためには、高度・気温分解能の高い観測が必要である。そのような観測手法の一つとして、電波掩蔽観測が挙げられる。電波掩蔽観測とは、観測対象となる惑星大気を周回する探査機から地球に向けて電波を送信し、その電波が惑星大気を通過する際に受ける周波数変動を利用して惑星大気の気温と気圧の高度分布を導出できる観測手法である。従来の電波掩蔽観測では幾何光学法と呼ばれる手法を用いて周波数変動が解析されていたが、櫻井[2022]はより高い鉛直分解能にて導出可能なFull Spectrum Inversion(FSI)法[Jensen et al., 2003; Tsuda et al., 2011]を用いて、火星探査機Mars Global Surveyor (MGS)で実施された電波掩蔽観測における周波数変動を再解析し、気温の高度分布を導出することに成功した。
本研究では、FSIによる周波数解析手順の一部を見直し、櫻井 [2022]で問題となっていた鉛直波長数十m程度のノイズを大幅に低減したうえで、南半球極夜内の気温の鉛直微細構造を調べた。その結果、解析対象とした33本の気温の高度分布のほぼ全てにおいて、従来の幾何光学法では検出できなかった厚さ100mほどの中立層が存在することがわかった。極夜内のため地表面付近ではCO2の凝結温度付近まで気温が低下しており、CO2凝結に伴う対流[Caillé et al. 2022]との関連が考えられる。一方、それよりも高い高度においても中立層が現れており、水氷雲に伴う対流[Hinson et al., Icarus]や大気重力波の砕波[櫻井, 2022; 福岡, 2023]との関連も考えられる。
大気中のCO2過飽和を研究するためには、高度・気温分解能の高い観測が必要である。そのような観測手法の一つとして、電波掩蔽観測が挙げられる。電波掩蔽観測とは、観測対象となる惑星大気を周回する探査機から地球に向けて電波を送信し、その電波が惑星大気を通過する際に受ける周波数変動を利用して惑星大気の気温と気圧の高度分布を導出できる観測手法である。従来の電波掩蔽観測では幾何光学法と呼ばれる手法を用いて周波数変動が解析されていたが、櫻井[2022]はより高い鉛直分解能にて導出可能なFull Spectrum Inversion(FSI)法[Jensen et al., 2003; Tsuda et al., 2011]を用いて、火星探査機Mars Global Surveyor (MGS)で実施された電波掩蔽観測における周波数変動を再解析し、気温の高度分布を導出することに成功した。
本研究では、FSIによる周波数解析手順の一部を見直し、櫻井 [2022]で問題となっていた鉛直波長数十m程度のノイズを大幅に低減したうえで、南半球極夜内の気温の鉛直微細構造を調べた。その結果、解析対象とした33本の気温の高度分布のほぼ全てにおいて、従来の幾何光学法では検出できなかった厚さ100mほどの中立層が存在することがわかった。極夜内のため地表面付近ではCO2の凝結温度付近まで気温が低下しており、CO2凝結に伴う対流[Caillé et al. 2022]との関連が考えられる。一方、それよりも高い高度においても中立層が現れており、水氷雲に伴う対流[Hinson et al., Icarus]や大気重力波の砕波[櫻井, 2022; 福岡, 2023]との関連も考えられる。