17:15 〜 18:45
[PPS07-P18] ペーストのポリゴン状亀裂パターンにおける異方性の転移と火星地形への応用に関する研究
キーワード:火星、ポリゴン、レオロジー
火星斜面に見られるガリーは、水が流れたことによって形成された可能性が高いとされてきた。ただし、形成説は諸説あり、議論に決着はついていない。そこで、ガリーに見られる熱収縮ポリゴンの形状に着目し、ガリー形成プロセスに制限がつけられないかと仮説を立てた。熱収縮破壊と同様の収縮破壊現象において、異方的な亀裂形状が形成される現象としてペーストのメモリー効果が知られている。ペーストのメモリー効果は、塑性によってペーストが加振時に揺れたり流れたりした方向を記憶し、それに応じた方向に亀裂が伝播しやすくなる現象を指す。粉の体積比率が高く、加振時にペーストが揺れる動きをした場合は振動方向に対して垂直に割れやすくなる揺れの記憶効果が現れる。一方で、体積比率が低く、加振時にペーストが流れる動きをした場合は振動を受けて流れた方向に対して平行に割れやすくなる流れの記憶効果が現れる。この効果によって過去の流動履歴に応じた異方的な亀裂形状が形成されることから、火星ポリゴンの形成プロセスの解釈にも応用できないかと考えた。しかし、これまではメモリー効果における揺れの記憶から流れの記憶への転移がどのパラメーターによって発生するのかが明確でなかった。そこで、本研究ではメモリー効果における亀裂方向の転移条件をレオメーターを用いた実験により調べ、メモリー効果が火星地形の解釈に応用できるかを検討した。
まず、メモリー効果の転移に振動剪断ひずみの振幅と周波数が与える影響を確認するため、ペーストに振動剪断ひずみを直接与える実験を行った。実験の結果、塑性を持つ範囲であれば、振動剪断ひずみの振幅を変えることで揺れの記憶から流れの記憶への転移が発生し、周波数やペーストの体積比率の影響が小さいことを明らかにした。また、流れの記憶であれば振動は与えずとも一方向剪断を与えるだけでも現れることを確認し、惑星表面でも見られる可能性が高いことを示した。
次に、これらの結果を踏まえ、地上でのペーストの乾燥破壊実験と火星表面との比較を行った。惑星表面で想定される斜面流による一方向の剪断をペーストに与え、その後現れる乾燥亀裂パターンを観察した。火星画像の解析結果と比較し、斜面を土砂が流れることで流れの記憶が現れ、異方的な亀裂パターンが現れたと考えても矛盾がないことも明らかにした。メモリー効果による解釈を応用することで、形成時の土砂の流量などに制限をつけられる可能性がある。今後、火星ポリゴンの亀裂方向に異方性を与える他の要因についても合わせて検討し、惑星表面地形へのメモリー効果の応用可能性を議論したい。
まず、メモリー効果の転移に振動剪断ひずみの振幅と周波数が与える影響を確認するため、ペーストに振動剪断ひずみを直接与える実験を行った。実験の結果、塑性を持つ範囲であれば、振動剪断ひずみの振幅を変えることで揺れの記憶から流れの記憶への転移が発生し、周波数やペーストの体積比率の影響が小さいことを明らかにした。また、流れの記憶であれば振動は与えずとも一方向剪断を与えるだけでも現れることを確認し、惑星表面でも見られる可能性が高いことを示した。
次に、これらの結果を踏まえ、地上でのペーストの乾燥破壊実験と火星表面との比較を行った。惑星表面で想定される斜面流による一方向の剪断をペーストに与え、その後現れる乾燥亀裂パターンを観察した。火星画像の解析結果と比較し、斜面を土砂が流れることで流れの記憶が現れ、異方的な亀裂パターンが現れたと考えても矛盾がないことも明らかにした。メモリー効果による解釈を応用することで、形成時の土砂の流量などに制限をつけられる可能性がある。今後、火星ポリゴンの亀裂方向に異方性を与える他の要因についても合わせて検討し、惑星表面地形へのメモリー効果の応用可能性を議論したい。