[P-PS08] 太陽系物質進化

[PPS08-01] 小惑星リュウグウにおける塩類と有機硫黄分子の化学進化

★招待講演

*吉村 寿紘¹、高野 淑識¹、奈良岡 浩²、Koga Toshiki¹、Araoka Daisuke³、Ogawa Nanako¹、Schmitt-Kopplin Philippe^4,5、Hertkorn Norbert⁴、Oba Yasuhiro⁶、Dworkin Jason⁷、Aponte José⁷、Yoshikawa Takaaki⁸、Tanaka Satoru⁹、Ohkouchi Naohiko¹、Hashiguchi Minako¹⁰、McLain Hannah⁷、Parker Eric⁷、Sakai Saburo¹、Yamaguchi Mihoko¹¹、Suzuki Takahiro¹¹、Yokoyama Tetsuya¹²、Yurimoto Hisayoshi⁶、Nakamura Tomoki¹³、Noguchi Takaaki¹⁴、Okazaki Ryuji²、Yabuta Hikaru¹⁵、Sakamoto Kanako¹⁶、Yada Toru¹⁶、Nishimura Masahiro¹⁶、Nakato Aiko¹⁶、Miyazaki Akiko¹⁶、Yogata Kasumi¹⁶、Abe Masanao¹⁶、Okada Tatsuaki¹⁶、Usui Tomohiro¹⁶、Yoshikawa Makoto¹⁶、Saiki Takanao¹⁶、Tanaka Satoshi¹⁶、Terui Fuyuto¹⁷、Nakazawa Satoru¹⁶、Watanabe Sei-ichiro¹⁶、Tsuda Yuichi¹⁶、Tachibana Shogo^18,16、Hayabusa2-initial-analysis SOM team (1.海洋研究開発機構、2.九州大学、3.産業技術総合研究所、4.Helmholtz Zentrum München、5.Technische Universität München、6.北海道大学、7.NASA Goddard Space Flight Center、8.堀場アドバンスドテクノ、9.堀場テクノサービス、10.名古屋大学、11.Thermo Fisher Scientific Inc.、12.東京工業大学、13.東北大学、14.京都大学、15.広島大学、16.宇宙航空研究開発機構、17.神奈川工科大学、18.東京大学)

キーワード：はやぶさ２、リュウグウ、有機硫黄分子、塩類

小惑星探査機はやぶさ２により採取された炭素質小惑星（162173）リュウグウ試料の初期分析によって，CIコンドライトとの類似性や強い水質変性を被った証拠が報告されている（Yokoyama et al., 2023；Nakamura et al., 2023など）。また可溶性有機物にも水質変質を被った証拠が認められ，またリュウグウ表面では有機分子が塩として安定して存在することが示唆された（Naraoka et al., 2023）。本研究では塩，炭酸塩，フィロケイ酸塩などの溶解度の異なる成分を溶媒（それぞれ熱水，ギ酸，塩酸抽出物）による逐次抽出の結果から，リュウグウ母天体上の主要陽イオン・陰イオンの元素分配ならびに硫黄を含む可溶性有機分子の多様性について報告する。リュウグウの塩画分ではナトリウムが最も多量に存在し（~90%），塩類が沈殿した際の主要な電解質であったと考えられる。また，陰イオンとアンモニウムイオンは炭酸塩画分やフィロケイ酸塩画分よりも塩画分に多く，主成分イオンのモル濃度はSO₄^2- ＞ Cl^- ＞ S₂O₃^2- ＞ NO₃^- ＞ NH₄⁺の順であった。塩画分の抽出物は，S_n-ポリチオン酸（n < 6），C_n-アルキルスルホン酸塩，アルキルチオスルホン酸塩，ヒドロキシアルキルスルホン酸塩，ヒドロキシアルキルチオスルホン酸塩（n < 7）などの多様なアニオン性の含硫黄有機分子が含まれることが判明した。これらの硫黄を含む化合物は，単純な有機分子から親水性，両親媒性，難溶性の多様な有機分子へ至る有機分子進化を反映していると考えられ，有機物の化学的挙動に直接影響を与えた可能性を示唆している。