11:45 〜 12:00
[PPS08-11] Northwest Africa 13679隕石の岩石組織観察およびU-Pb年代測定によるウィノナイト母天体の熱進化史推定
キーワード:ウィノナイト、岩石学、局所ウランー鉛年代測定、熱史
ウィノナイトは,コンドライト隕石に似た主要元素組成と溶融分化した組織を持つ始原的エコンドライト隕石の一種である.ウィノナイトグループは,還元的な鉱物組成と酸素同位体比によって特徴づけられ,鉄隕石の一種であるIABと同一の母天体を起源とすることが指摘されている(Benedix et al., 2000).これらの隕石の母天体の進化史は未解明の点が多い.本研究では,ウィノナイト-IAB母天体の熱進化史を明らかにすることを目標に,ウィノナイト隕石Northwest Africa (NWA) 13679の詳細な岩石鉱物観察および、隕石中のリン酸塩鉱物(アパタイト)のウラン-鉛(U-Pb)年代測定をおこなった.
実験方法として,まずNWA 13679試料から研磨薄片を作成し,光学顕微鏡および走査型電子顕微鏡 (SEM-EDS; JSM-6390A)にて組織観察を行った.得られた後方散乱電子(BSE)像を元に疑似カラーマップを作成し,試料全体の均質性や鉱物分布を評価した.次に、主要なケイ酸塩鉱物(カンラン石,輝石,斜長石)と,金属脈(Fe-Ni),硫化物(トロイライト),および微量の窒化物(シュライバーサイト)とアパタイトの元素組成を電子プローブマイクロアナライザ (EPMA; JXA-iSP 100) を用いて測定した.さらに,東京大学大気海洋研所有の高空間解像度二次イオン質量分析計 NanoSIMS 50 (Ametec Inc.) を利用し,隕石中のアパタイトの局所U-Pb年代測定を行った.
岩石鉱物観察の結果,粒径が異なる粗粒領域と細粒領域が存在することが明らかとなった.粗粒領域と細粒領域は粒径以外にも鉱物の組成や体積比などが異なる.粗粒領域は金属脈付近にみられ,金属脈に近いほどカンラン石の鉄含有量(Fa#)が低く,カンラン石の逆ゾーニングみられた.また,Fe-Ni金属やトロイライト,高Ca輝石に隣接してアパタイトが存在した.アパタイトはケイ酸塩と金属脈の混合以降の熱変成で形成したことが示唆される.これらの特徴はNWA 13679 が金属脈の貫入に伴う岩相の混合,および,還元的環境下での顕著な熱変成を受けたことを示唆する.
U-Pb年代測定の結果,207Pb-206Pbアイソクロン年代:4216±330 Ma,238U-206Pbアイソクロン年代:3680±750 Ma,全Pb/U (3D) 年代:4186±330 Ma が得られた.これらの年代は,他のウィノナイト隕石で報告されているAr-Ar年代 (Pontlyfni;4.530-4.535 Ga, Winona; ≥4.45 Ga Mt.Morris;4.40 Ga, Benedix et al., 1998)と整合的またはやや若いと言える.アパタイトの形成過程を考えると,約4200 ± 330 Maという U-Pb年代は金属メルトの混合後のゆっくりした冷却プロセスを示していると考えられる.また,輝石温度計(Nakamuta et al., 2017)をもとにNWA 13679が経験したピーク温度を見積もると,高Ca輝石: 655±18°C (590 °C~817 °C),低Ca輝石:728±17°C (603 °C~818 °C)であった.この温度差は鉱物の形成順を反映していると考えられる.また低Ca輝石のピーク温度は,Dodson (1973)の式から見積もられたアパタイトのU-Pb系の閉鎖温度:731~844 °Cとも一致する.
以上から,ウィノナイト母天体はコンドライト的な前駆物質の部分溶融後、金属メルトが伴う物質混合と熱変成を約4200 ± 330 Maまでに経験したと考えられる.
実験方法として,まずNWA 13679試料から研磨薄片を作成し,光学顕微鏡および走査型電子顕微鏡 (SEM-EDS; JSM-6390A)にて組織観察を行った.得られた後方散乱電子(BSE)像を元に疑似カラーマップを作成し,試料全体の均質性や鉱物分布を評価した.次に、主要なケイ酸塩鉱物(カンラン石,輝石,斜長石)と,金属脈(Fe-Ni),硫化物(トロイライト),および微量の窒化物(シュライバーサイト)とアパタイトの元素組成を電子プローブマイクロアナライザ (EPMA; JXA-iSP 100) を用いて測定した.さらに,東京大学大気海洋研所有の高空間解像度二次イオン質量分析計 NanoSIMS 50 (Ametec Inc.) を利用し,隕石中のアパタイトの局所U-Pb年代測定を行った.
岩石鉱物観察の結果,粒径が異なる粗粒領域と細粒領域が存在することが明らかとなった.粗粒領域と細粒領域は粒径以外にも鉱物の組成や体積比などが異なる.粗粒領域は金属脈付近にみられ,金属脈に近いほどカンラン石の鉄含有量(Fa#)が低く,カンラン石の逆ゾーニングみられた.また,Fe-Ni金属やトロイライト,高Ca輝石に隣接してアパタイトが存在した.アパタイトはケイ酸塩と金属脈の混合以降の熱変成で形成したことが示唆される.これらの特徴はNWA 13679 が金属脈の貫入に伴う岩相の混合,および,還元的環境下での顕著な熱変成を受けたことを示唆する.
U-Pb年代測定の結果,207Pb-206Pbアイソクロン年代:4216±330 Ma,238U-206Pbアイソクロン年代:3680±750 Ma,全Pb/U (3D) 年代:4186±330 Ma が得られた.これらの年代は,他のウィノナイト隕石で報告されているAr-Ar年代 (Pontlyfni;4.530-4.535 Ga, Winona; ≥4.45 Ga Mt.Morris;4.40 Ga, Benedix et al., 1998)と整合的またはやや若いと言える.アパタイトの形成過程を考えると,約4200 ± 330 Maという U-Pb年代は金属メルトの混合後のゆっくりした冷却プロセスを示していると考えられる.また,輝石温度計(Nakamuta et al., 2017)をもとにNWA 13679が経験したピーク温度を見積もると,高Ca輝石: 655±18°C (590 °C~817 °C),低Ca輝石:728±17°C (603 °C~818 °C)であった.この温度差は鉱物の形成順を反映していると考えられる.また低Ca輝石のピーク温度は,Dodson (1973)の式から見積もられたアパタイトのU-Pb系の閉鎖温度:731~844 °Cとも一致する.
以上から,ウィノナイト母天体はコンドライト的な前駆物質の部分溶融後、金属メルトが伴う物質混合と熱変成を約4200 ± 330 Maまでに経験したと考えられる.
