[P-PS09] 月の科学と探査

[PPS09-13] かぐや低高度観測データを用いた月ミニ磁気圏内の荷電粒子・電磁場特性の包括的研究

*荻野 晃平¹、原田 裕己¹、西野 真木²、斎藤 義文²、横田 勝一郎³、笠原 禎也⁴、熊本 篤志⁵、高橋 太⁶、清水 久芳⁷ (1.京都大学理学研究科、2.国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構、3.大阪大学理学研究科、4.金沢大学学術創成センター、5.東北大学理学研究科、6.九州大学理学研究院、7.東京大学地震研究所 )

キーワード：月、プラズマ、電磁場、ミニ磁気圏、かぐや

地球のような全球的な磁場が無い月では、局所的な地殻残留磁化（磁気異常）起源の磁場が太陽風と相互作用を起こし、「ミニ磁気圏」と呼ばれる領域を形成している。月ミニ磁気圏の空間スケールは数10 kmサイズと小さく、月周回探査機の典型的な高度（～100 km）では直接探査が難しい。そのため、太陽風と月地殻磁場が相互作用を起こす領域でのプラズマ環境や電磁場構造の全容は未解明であった。Saito et al. (2012) では、月周回衛星「かぐや」の低高度運用時の1軌道のデータから、高度30 km以下でのイオン、電子同時観測が初めて報告され、磁気異常上空に上向きの静電場の存在が示唆された。本研究では、かぐやが低高度（～数10 ㎞）運用時に取得した、イオン、電子、静磁場、波動磁場 (1-10 Hz)、波動電場 (1-10 kHz)のデータを複数軌道、複数磁気異常について解析し、太陽風月磁気異常相互作用領域でのプラズマ環境および電磁場特性について包括的に調査した。その結果、どの磁気異常でも共通して、モデル地殻磁場（Tsunakawa et al., 2015）の強度が約4 nT以上の領域において、入射太陽風電子の加速、および太陽風イオンの減速が観測されることがわかった。この領域では上向きの静電場が形成されていることが示唆されるが、領域内外の粒子・電磁場特性の解析から、上向き静電場が太陽風イオンの反射、および激しいプラズマ波動の励起に密接に関わっていることが示された。この結果は、太陽風月地殻磁場相互作用により生起する現象の多くに、低高度の強地殻磁場領域に存在する上向き静電場が重要な役割を果たしていることを意味している。現有のかぐや低高度観測データを網羅的に解析することで得られた本研究の結果が、将来的な低高度または月面でのプラズマ環境探査検討に活用できると期待される。