[S-CG41] 地殻表層の変動・発達と地球年代学／熱年代学の応用

[SCG41-P01] 棚倉破砕帯の中期中新世以降の右横ずれ運動：構造地質及び年代学的制約

★招待講演

*細井 淳^1,2、檀原 徹³、岩野 英樹^3,4 (1.産業技術総合研究所地質調査総合センター地質情報研究部門、2.茨城大学理学部地球環境科学コース、3.（株）京都フィッション・トラック、4.東京大学大学院理学研究科附属地殻化学実験施設)

キーワード：棚倉断層帯、日本海拡大、ジルコン、アパタイト、放射年代測定、カタクレーサイト

棚倉断層帯は日本海拡大時の主要な横ずれ断層の一つと考えられている．当時の棚倉断層帯の運動史は日本列島がアジア大陸から離れて現在に至るまでのテクトニクスを理解するのに役立つ．本研究では中新統の棚倉断層帯の活動を知るために，棚倉断層帯周辺の野外地質調査と各種分析を実施した．具体的には棚倉断層帯を構成する棚倉破砕帯西縁断層の解析，中新統を構成する変形礫の解析と礫の後背地推定，中新統礫岩中のカタクレーサイトのジルコンとアパタイトによる熱史解析を実施した．
　調査及び解析の結果，以下のことが判明した．1）断層沿いに発達する変形礫は見かけ上は延性変形しているが，実際は風化や圧密，右横ずれセンスの脆性破壊等によって形成されたことがわかった．すなわち，変形礫は脆性破壊された岩片から構成されており，熱史解析からも被熱を被っているとは考えられなかった．変形礫の分布，変形の長軸方向等を考慮すると，変形礫は西縁断層の右横ずれ運動によるPせん断帯の発達によって形成されたと考えられた．2）カタクレーサイト（原岩は礫岩）試料は古生界のジルコンを含み，礫岩の後背地の一つとして，日立変成岩類が考えられた．現在のカタクレーサイト試料採取地と日立変成岩類の分布地は離れている．礫岩形成時には両者が隣接していたと推定されるので，礫岩形成後に棚倉断層帯（特に棚倉破砕帯東縁断層）は右横ずれ運動をした可能性が高い．3）棚倉破砕帯西縁断層の新第三系の露頭そのものからは，ほぼ水平方向の右横ずれ運動が示唆された．上記全てのデータを踏まえると，西縁断層も東縁断層も礫岩形成後に右横ずれの運動をしたと考えられる．