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[SCG42-P06] フィリピン海四国海盆土佐メガムリオンカンラン岩の構造岩石学的特徴とその形成過程

中央海嶺の低速拡大軸や背弧海盆の拡大域にはメガムリオンと呼ばれる表面に畝のような凹凸のあるドーム状地形が部分的に存在する.メガムリオンには下部地殻と上部マントルの物質が延性変形した断層岩が確認され,メガムリオン地形を形成したデタッチメント断層の深部延長部の延性剪断帯起源と考えられている.背弧拡大で形成したフィリピン海四国海盆には,これまでに複数のメガムリオン地形が発見されている[1].本研究は,四国海盆の拡大初期に形成した土佐メガムリオンの超マフィック岩について,その構造発達過程を考察した.研究試料は,研究航海YK23-05Sで実施された潜水調査船しんかい6500の潜航調査によって土佐メガムリオンから採取された超マフィック岩9試料である.本研究では,面構造に垂直,線構造に平行なスラブ面 (XZ面)を研磨して観察した後,研磨薄片を作成した.岩石試料は全て著しい蛇紋岩化作用を受けていたが,部分的にカンラン岩の組織が残されていた.スラブ面観察において9試料のうち7試料は強く発達した面構造と直方輝石の残晶からなるポーフィロクラスト状組織を示した.研磨薄片で観察された主要構成鉱物は,カンラン石,直方輝石,単斜輝石,斜長石,スピネルであった.カンラン石は粒径が0.3mm程度で主に基質部を構成していた.直方輝石は粒径2~7 mmの円形の残晶と数cm程度まで伸長した残晶が観察され,伸長した残晶はマイクロキンクや波動消光などの結晶内歪を示した.単斜輝石は0.3mm程度に細粒化し多角形状であった.次に,比較的カンラン石を多く含む3試料について,走査型電子顕微鏡を用いてカンラン石の結晶方位解析を行ったところ,分析した3試料全て(001) [100]すべりを表すEタイプの結晶方位ファブリックをもつことが明らかになった.以上の結果から,土佐メガムリオンで採取された超マフィック岩は著しい延性剪断変形を受けたマイロナイトのような断層岩と考えられる.その成因として,四国海盆拡大初期の土佐メガムリオンの形成時にデタッチメント断層の深部延長部でマントルを構成するカンラン岩が断層岩へ変化し,ドーム状の地形形成によって海底面に露出したことが考えられる.
[1] Okino et al. 2023 Progress in Earth and Planetary Science 10, https://doi.org/10.1186/s40645-023-00570-2.
[1] Okino et al. 2023 Progress in Earth and Planetary Science 10, https://doi.org/10.1186/s40645-023-00570-2.