16:15 〜 16:30
[SCG44-04] 多結晶体非弾性における転位の効果
キーワード:非弾性、転位、その場測定、多結晶体
観測される地震波速度や減衰から上部マントルの温度や粒径を推定するうえで、岩石非弾性は非常に重要な役割を果たしてきた(e.g., Karato, 1993; Faul & Jackson, 2005; Priestley et al., 2024)。これまでの研究において、粒界すべりに起因する多結晶体非弾性についての理解は非常に進んできたが(e.g., Gribb & Cooper, 1998; Jackson et al., 2002; Yamauchi & Takei, 2016)、転位に起因する非弾性に関してはあまりわかっていない。理論的には転位による地震波速度の分散や減衰の存在が示唆されているにも関わらず(Anderson & Minster, 1981)、実験的研究は非常に限られている(Gueguen et al., 1989; Faula et al., 2012; Sasaki et al., 2019)。さらにこれらの先行研究は、転位を導入するための高差応力下での事前変形実験と、その後の低差応力下での非弾性測定という実験手順を踏むために、転位の回復や装置と試料のカップリングの影響を排除しきれないという実験上の問題がある。そこで本研究では、高差応力下における非弾性(ヤング率および減衰)のその場測定を行い、転位が多結晶体非弾性に与える影響を調べた。
我々は岩石アナログ物質であるボルネオールの多結晶体試料を用いて実験を行った。この試料は、粒径約20 μm、温度50℃において差応力1.5 MPa以上で転位クリープ(べき乗クリープ)変形することがわかっている(Sasaki et al., 2019)。我々はクリープ変形のためのオフセット状の差応力と、非弾性測定のための振動応力を同時に印加できる装置を開発した。オフセット差応力は万能試験機(Shimadzu Corporation, AGX-V 50kN)を用いて印加した。非弾性測定のための非常に小さな振幅の振動応力は、万能試験機のピストンに取り付けた積層圧電アクチュエータ(TOKIN Corporation, ASB400C702WD1-A0LF)を用いて印加した。試料にかかる応力は三軸セルの内部に取り付けたロードセルで測定し、試料温度は三軸セル内の水温で制御した。封圧は印加しなかった。試料の振動変位は二つの高精度レーザー変位計(KEYENCE CORPORATION, CL-P015, 分解能0.003 μm)で測定した。試料のクリープ変位は万能試験機の変位計で測定した。
開発した装置を用いて、岩石アナログ試料にその場非弾性測定を非破壊的に繰り返しながら、約19時間転位クリープで変形させ、続いて7時間拡散クリープで変形させた。強制振動実験の周波数は5 Hz、測定時間は6秒、繰返し周期は100秒である。実験の結果、荷重印加時、転位クリープ時、荷重除荷時、拡散クリープ時すべてにおいて明らかなヤング率の変化は見られず、非弾性緩和における転位の効果は5 Hz以上の周波数においては非常に小さいことが示唆された。この結果は、100 Hz以上において転位由来の減衰ピークが存在し、5 Hzにおいてヤング率が約10%低下するという先行研究(Sasaki et al., 2019)とは異なることが分かった。また、本研究の結果から実験条件範囲においては微小クラックを抑制するための封圧は必要ないことも分かった。
我々は岩石アナログ物質であるボルネオールの多結晶体試料を用いて実験を行った。この試料は、粒径約20 μm、温度50℃において差応力1.5 MPa以上で転位クリープ(べき乗クリープ)変形することがわかっている(Sasaki et al., 2019)。我々はクリープ変形のためのオフセット状の差応力と、非弾性測定のための振動応力を同時に印加できる装置を開発した。オフセット差応力は万能試験機(Shimadzu Corporation, AGX-V 50kN)を用いて印加した。非弾性測定のための非常に小さな振幅の振動応力は、万能試験機のピストンに取り付けた積層圧電アクチュエータ(TOKIN Corporation, ASB400C702WD1-A0LF)を用いて印加した。試料にかかる応力は三軸セルの内部に取り付けたロードセルで測定し、試料温度は三軸セル内の水温で制御した。封圧は印加しなかった。試料の振動変位は二つの高精度レーザー変位計(KEYENCE CORPORATION, CL-P015, 分解能0.003 μm)で測定した。試料のクリープ変位は万能試験機の変位計で測定した。
開発した装置を用いて、岩石アナログ試料にその場非弾性測定を非破壊的に繰り返しながら、約19時間転位クリープで変形させ、続いて7時間拡散クリープで変形させた。強制振動実験の周波数は5 Hz、測定時間は6秒、繰返し周期は100秒である。実験の結果、荷重印加時、転位クリープ時、荷重除荷時、拡散クリープ時すべてにおいて明らかなヤング率の変化は見られず、非弾性緩和における転位の効果は5 Hz以上の周波数においては非常に小さいことが示唆された。この結果は、100 Hz以上において転位由来の減衰ピークが存在し、5 Hzにおいてヤング率が約10%低下するという先行研究(Sasaki et al., 2019)とは異なることが分かった。また、本研究の結果から実験条件範囲においては微小クラックを抑制するための封圧は必要ないことも分かった。