日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG44] 地球惑星科学におけるレオロジーと破壊・摩擦の物理

2024年5月26日(日) 15:30 〜 17:00 304 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:桑野 修(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、清水 以知子(京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻)、田阪 美樹(静岡大学 )、東 真太郎(東京工業大学 理学院 地球惑星科学系)、座長:田阪 美樹(静岡大学)、東 真太郎(東京工業大学 理学院 地球惑星科学系)

16:45 〜 17:00

[SCG44-06] フェーズフィールド法によるゲルマニウムかんらん石の変形条件下での相転移挙動モデリング

★招待講演

*澤 燦道1武藤 潤1、長濱 裕幸1 (1.東北大学大学院理学研究科地学専攻)

キーワード:相転移、フェーズフィールド法、ゲルマニウムかんらん石、深発地震

かんらん石のスピネル相への相転移は,沈み込む海洋プレートのレオロジーや深発地震の発生メカニズムに大きな影響を及ぼす(e.g., Rubie, 1984; Green and Burnley, 1989).相転移のカイネティクスに対する,粒界エネルギーや塑性ひずみなどの微細組織の特性や変形による差応力の効果を調べるため,かんらん石(Mg2SiO4)のアナログ物質であるゲルマニウムかんらん石(Mg2GeO4)のフェーズフィールド法によるシミュレーションを行った.シミュレーションの条件は,封圧1-5 GPa,温度は1000,1200 K,粒界エネルギー(0.5-1.5 J/m2)であり,塑性ひずみや変形を考慮する場合としない場合に分けてシミュレーションを行った.かんらん石は準安定状態を仮定しているため,温度圧力条件はスピネル相の安定領域である.シミュレーションの結果,過剰圧(封圧)の増加に伴いスピネルへの相転移率は減少した。これは,過剰圧による大きな弾性歪みエネルギーが,スピネル相の粒成長を抑制するためである。相転移によって形成したスピネルの形には変形方向に平行な“スピネルニードル”と,変形方向に垂直な“スピネルプレート”の2種類存在した。スピネルニードルは元素の粒界拡散速度に支配された定常的な成長をした.一方,スピネルプレートでは,相転移や変形に伴う塑性ひずみによって弾性ひずみエネルギーの増加が抑制され,成長速度の上昇が見られた。塑性変形下でのスピネル相の粒成長は塑性ひずみのさらなる増加につながる.したがって,高温高圧の塑性変形下では,正のフィードバックによりスピネル相の粒成長(相転移)が加速度的に進行する可能性が示唆される(Sawa et al., 2023)。この加速度的な相転移の進行は深発地震における断層形成に必要な変形の局所化の鍵となるかもしれない.