17:15 〜 18:45
[SCG45-P01] 糸魚川-静岡構造線周辺に分布する深成岩類の角閃石圧力計による定置圧力推定と断層運動前の地質分布復元の検証

キーワード:糸魚川-静岡構造線、角閃石圧力計、木舟深成岩体、下諏訪深成岩体、茅野深成岩体、地質分布復元
日本陸上最大級の断層である糸魚川-静岡構造線(ISTL)周辺における変成岩類の熱構造の対比からは,ISTLに沿って10 km以上離れた場所に位置する2つの珪長質深成岩体(下諏訪岩体と木舟岩体)が,ISTL活動前には一連の深成岩体であったと予想されている.両岩体の近傍には,これらとほぼ同時期の中新世に貫入した珪長質深成岩体がISTLに沿ってさらに2つ(茅野岩体と甲斐駒ヶ岳岩体)分布しており,上記4つの深成岩体の対応関係を岩石学的に検討することは,変成岩解析に基づく地質復元結果,すなわち,ISTL変位量の検証に有用といえる.
そこで本研究では,これら4つの珪長質深成岩体がいずれも角閃石を含んでいるという共通性に着目して,木舟岩体,下諏訪岩体,および茅野岩体について角閃石Al地質圧力計を用いた定置圧力推定を行った.その際,角閃石Ti地質温度計を併用して温度条件も算出し,P–T図上でソリダス曲線付近にプロットされるデータのみを圧力推定に使用した.そして,先行研究により得られている甲斐駒ヶ岳岩体の圧力データを含めて,岩体間の比較・検討を行った.
得られた定置圧力条件は,木舟岩体が約1.9 kbar,下諏訪岩体と茅野岩体が約1.7 kbarを示し,三者は概ね類似する.一方,先行研究により同様の手法で推定された甲斐駒ヶ岳岩体の定置圧力条件は2.2〜2.4 kbarであり,他の3岩体とは明瞭に異なる.本研究結果は,ISTL活動前は木舟岩体と下諏訪岩体が一連の岩体であったとする変成岩解析に基づく復元結果を支持する.変成岩解析の地質復元結果は,茅野岩体と甲斐駒ヶ岳岩体がISTL活動前に近接していたことを示すが,定置圧力条件を考慮すると,ISTL活動前の茅野岩体は,甲斐駒ヶ岳岩体ではなく,むしろ木舟岩体および下諏訪岩体と一連であり,甲斐駒ヶ岳深成岩体に匹敵する貫入規模の “木舟–下諏訪–茅野”深成岩体を形成していた可能性を示す.このことは,現在の木舟岩体周辺における接触変成域が,木舟岩体の規模と比較して広範囲で認められるとともに,ISTLに沿って細長く分布することからも支持される.
そこで本研究では,これら4つの珪長質深成岩体がいずれも角閃石を含んでいるという共通性に着目して,木舟岩体,下諏訪岩体,および茅野岩体について角閃石Al地質圧力計を用いた定置圧力推定を行った.その際,角閃石Ti地質温度計を併用して温度条件も算出し,P–T図上でソリダス曲線付近にプロットされるデータのみを圧力推定に使用した.そして,先行研究により得られている甲斐駒ヶ岳岩体の圧力データを含めて,岩体間の比較・検討を行った.
得られた定置圧力条件は,木舟岩体が約1.9 kbar,下諏訪岩体と茅野岩体が約1.7 kbarを示し,三者は概ね類似する.一方,先行研究により同様の手法で推定された甲斐駒ヶ岳岩体の定置圧力条件は2.2〜2.4 kbarであり,他の3岩体とは明瞭に異なる.本研究結果は,ISTL活動前は木舟岩体と下諏訪岩体が一連の岩体であったとする変成岩解析に基づく復元結果を支持する.変成岩解析の地質復元結果は,茅野岩体と甲斐駒ヶ岳岩体がISTL活動前に近接していたことを示すが,定置圧力条件を考慮すると,ISTL活動前の茅野岩体は,甲斐駒ヶ岳岩体ではなく,むしろ木舟岩体および下諏訪岩体と一連であり,甲斐駒ヶ岳深成岩体に匹敵する貫入規模の “木舟–下諏訪–茅野”深成岩体を形成していた可能性を示す.このことは,現在の木舟岩体周辺における接触変成域が,木舟岩体の規模と比較して広範囲で認められるとともに,ISTLに沿って細長く分布することからも支持される.