日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG45] 岩石・鉱物・資源

2024年5月30日(木) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:福士 圭介(金沢大学環日本海域環境研究センター)、野崎 達生(国立研究開発法人 海洋研究開発機構 海洋機能利用部門 海底資源センター)、纐纈 佑衣(名古屋大学大学院 環境学研究科)、西原 遊(愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター)

17:15 〜 18:45

[SCG45-P07] 南オーストラリア州の土壌中で沈殿するドロマイトの産状

*佐久間 杏樹1狩野 彰宏1高島 千鶴2村田 彬1山口 飛鳥3奥村 大河1長島 佳菜4 (1.東京大学理学系研究科地球惑星科学専攻、2.佐賀大学教育学部、3.東京大学大気海洋研究所、4.海洋研究開発機構地球表層システム研究センター)

キーワード:土壌成炭酸塩、ドロマイト、南オーストラリア

土壌成炭酸塩とは、蒸発の盛んな乾燥地域の土壌中で間隙水から沈殿する炭酸塩であり、様々な年代・地域の土壌中で、ノジュールや層状カルクリートといった形態で産出する。多くの場合、土壌成炭酸塩の主要な構成鉱物は高マグネシウムカルサイトであるが、ドロマイトも沈殿することが知られている(例:Kearsey et al., 2012)。地質年代の試料では続成の影響を考慮する必要があるので、その沈殿メカニズムを明らかにするためには現生の土壌成炭酸塩の観察が重要だが、現在の土壌中におけるドロマイトの沈殿の報告例は限られている(Capo et al., 2000)。さらに、第四紀の土壌成炭酸塩に関する先行研究では主に苦鉄質な成分を持つ火山岩や凝灰岩を母岩とする土壌成炭酸塩について記載されており、堆積岩や変成岩等を母岩とする土壌炭酸塩については詳細な報告がされていない。ドロマイトは熱力学的に安定して存在しうる鉱物であるが、自然環境を模した実験室での合成が非常に困難な鉱物であり、合成には微生物や高温条件が必要とされてきた(例:Greg et al., 2016)。最近では、降水量に季節性のある塩湖や海岸においてドロマイト結晶が蒸発と溶解を繰り返すことで成長する可能性が指摘されており(Kim et al., 2023)、類似した条件の土壌中で沈殿したドロマイトの産状の観察は沈殿形態やメカニズムの解明の手掛かりとなりうる。
本研究では、南オーストラリア州の異なる母岩を持つ3地点の土壌プロファイルを調査し、現世土壌成炭酸塩試料を採取した。採取した試料は偏光顕微鏡や電子顕微鏡を用いて観察し、元素分析や鉱物組成の同定、炭素・酸素同位体比分析を行った。全岩のXRD分析の結果から、カルサイト、ドロマイト、石英、長石類が主な構成鉱物であることが分かった。研磨スラブのµXRF分析、µXRD分析の結果から、堆積岩を母岩とする土壌中で沈殿した土壌成炭酸塩試料では石英や岩片粒子の周囲や縞状組織でプロトドロマイトやドロマイトが沈殿しており、弱変成岩を母岩とする土壌中で沈殿した土壌成炭酸塩試料では比較的均質に砕屑物粒子の間にドロマイトが沈殿していることが分かった。電子顕微鏡を用いた観察では、一部の試料で自形のドロマイトの菱面体結晶が観察された。酸素・炭素同位体比は土壌成炭酸塩の典型的な値を示し、母岩に含まれる炭酸塩粒子が土壌化作用で細粒化して取り込まれたというよりも、新たに沈殿したことを支持する。