11:30 〜 11:45
[SCG46-04] マントル鉱物とH2O-CO2流体との反応実験
キーワード:蛇紋岩化、炭酸塩化、水熱合成実験、海水
はじめに
天然の蛇紋岩中には、炭酸塩脈が存在したり、蛇紋岩の角礫岩のマトリックスを炭酸塩が埋めたりすることが観察される。これらをオフィカーボネイトと総称する。オフィカードネイトは海洋コアコンプレックスで海洋底付近に上昇した海洋マントル起源の蛇紋岩や、変成帯でマントルウェッジ起源と考えられる蛇紋岩などに見られる。塩水には真水よりも多くの炭酸塩イオンが溶け込めるため、著者たちは、海水や沈み込み帯流体が蛇紋岩化と、その後に続く炭酸塩化を起こしていると想像する。一方、蛇紋岩の炭酸化が完全に進むと、リストヴェナイトと呼ばれる岩石に変化する。よく研究されているのはオマーンオフィオライトのリストヴェナイトである。これら蛇紋岩の炭酸塩化の条件を理解するために、マントル岩とH2O-CO2流体を反応させる実験を行なった。
実験方法
0.08-0.2GPa、200-400℃の条件でマントル岩+シュウ酸2⽔和物±ディオプサイドを⾦パラジウムカプセルに封⼊し、水熱合成実験装置を用いて反応させた。実験終了時は圧⼒容器を電気炉から離し、圧縮空気で空冷した。その後、カプセルに⽳を開け減った質量を流体中のCO2量とし、その後オーブンで乾燥させ流体中のH2Oの量とした。研磨した実験⽣成物をラマン分光分析装置と電界放出型⾛査電⼦顕微鏡で観察した。水熱合成装置は0.2GPa程度とマントルに比べて低圧領域であるが、使い方が簡便なため、反応を理解するために適していると考え炭酸塩化実験を行なっている。実験生成物はラマン顕微鏡と電界放出走査型電子顕微鏡で化学組成マッピングを用いて同定した。従来は、MgO-SiO2-H2O-CO2 系での実験がなされていた[Johannes (1969) American Journal of Science, 267, 1083-1104]が、その系にディオプサイドを加えた実験はこれまでに報告がない。今回は、私たちの実験において確認した化学反応式を紹介する。
マントル岩の炭酸塩化実験
出発物質(カンラン石、アンティゴライト、ディオプサイド)が反応し残ることがある。また、出発物質のカンラン⽯やアンティゴライトに鉄が含まれるためマグネサイトとタルクに加えて、石英も共存する。マグネシウム端成分での実験は、MgO-SiO2-H2O-CO2 系での先⾏研究がある[Johannes (1969) American Journal of Science, 267, 1083-1104]が、大まかには整合的である。カンラン⽯とディオプサイド、蛇紋⽯とディオプサイドの系では、さまざまな反応を確認した。
脱水反応と固体体積の増加
実験結果は、蛇紋⽯の炭酸塩化では脱⽔反応を伴うことを⽰す。また、全ての実験条件において固相の体積は反応前に⽐べ上昇する。蛇紋岩への⼆酸化炭素を含む流体の付加は、脱⽔を引き起こすとともに、固体体積の増加を引き起こす。
カルサイト脈は?
天然で蛇紋岩に炭酸塩脈が伴われる現象は多く⾒られる。浅い場所では海洋底変成作⽤と呼ばれる海底に近い場所で、また、プレートの沈み込みにともない蛇紋岩も炭酸塩化する岩⽯が知られる。これらはオフィカーボネイトと総称される。多くの場合はカルサイトの脈が形成されるが、本実験では300℃以上では、少なくともマグネサイトかドロマイトのみが形成された。カルサイト脈を形成するためには、300℃以下の低温度か、流体がカルシウム成分に富んでいることが必要だと結論する。カルシウムの供給源としては、堆積岩や玄武岩が考えられる。
天然の蛇紋岩中には、炭酸塩脈が存在したり、蛇紋岩の角礫岩のマトリックスを炭酸塩が埋めたりすることが観察される。これらをオフィカーボネイトと総称する。オフィカードネイトは海洋コアコンプレックスで海洋底付近に上昇した海洋マントル起源の蛇紋岩や、変成帯でマントルウェッジ起源と考えられる蛇紋岩などに見られる。塩水には真水よりも多くの炭酸塩イオンが溶け込めるため、著者たちは、海水や沈み込み帯流体が蛇紋岩化と、その後に続く炭酸塩化を起こしていると想像する。一方、蛇紋岩の炭酸化が完全に進むと、リストヴェナイトと呼ばれる岩石に変化する。よく研究されているのはオマーンオフィオライトのリストヴェナイトである。これら蛇紋岩の炭酸塩化の条件を理解するために、マントル岩とH2O-CO2流体を反応させる実験を行なった。
実験方法
0.08-0.2GPa、200-400℃の条件でマントル岩+シュウ酸2⽔和物±ディオプサイドを⾦パラジウムカプセルに封⼊し、水熱合成実験装置を用いて反応させた。実験終了時は圧⼒容器を電気炉から離し、圧縮空気で空冷した。その後、カプセルに⽳を開け減った質量を流体中のCO2量とし、その後オーブンで乾燥させ流体中のH2Oの量とした。研磨した実験⽣成物をラマン分光分析装置と電界放出型⾛査電⼦顕微鏡で観察した。水熱合成装置は0.2GPa程度とマントルに比べて低圧領域であるが、使い方が簡便なため、反応を理解するために適していると考え炭酸塩化実験を行なっている。実験生成物はラマン顕微鏡と電界放出走査型電子顕微鏡で化学組成マッピングを用いて同定した。従来は、MgO-SiO2-H2O-CO2 系での実験がなされていた[Johannes (1969) American Journal of Science, 267, 1083-1104]が、その系にディオプサイドを加えた実験はこれまでに報告がない。今回は、私たちの実験において確認した化学反応式を紹介する。
マントル岩の炭酸塩化実験
出発物質(カンラン石、アンティゴライト、ディオプサイド)が反応し残ることがある。また、出発物質のカンラン⽯やアンティゴライトに鉄が含まれるためマグネサイトとタルクに加えて、石英も共存する。マグネシウム端成分での実験は、MgO-SiO2-H2O-CO2 系での先⾏研究がある[Johannes (1969) American Journal of Science, 267, 1083-1104]が、大まかには整合的である。カンラン⽯とディオプサイド、蛇紋⽯とディオプサイドの系では、さまざまな反応を確認した。
脱水反応と固体体積の増加
実験結果は、蛇紋⽯の炭酸塩化では脱⽔反応を伴うことを⽰す。また、全ての実験条件において固相の体積は反応前に⽐べ上昇する。蛇紋岩への⼆酸化炭素を含む流体の付加は、脱⽔を引き起こすとともに、固体体積の増加を引き起こす。
カルサイト脈は?
天然で蛇紋岩に炭酸塩脈が伴われる現象は多く⾒られる。浅い場所では海洋底変成作⽤と呼ばれる海底に近い場所で、また、プレートの沈み込みにともない蛇紋岩も炭酸塩化する岩⽯が知られる。これらはオフィカーボネイトと総称される。多くの場合はカルサイトの脈が形成されるが、本実験では300℃以上では、少なくともマグネサイトかドロマイトのみが形成された。カルサイト脈を形成するためには、300℃以下の低温度か、流体がカルシウム成分に富んでいることが必要だと結論する。カルシウムの供給源としては、堆積岩や玄武岩が考えられる。