16:15 〜 16:30
[SCG46-09] Network-MT法データを用いた紀伊半島における広域深部電気比抵抗構造推定

キーワード:電気比抵抗構造、紀伊半島、深部低周波地震、高温泉、Network-MT法
電気比抵抗は,物体の電気の流れにくさを表す物質に固有の物理量であり,流体や温度に敏感である.観測によって推定される地殻や上部マントルの比抵抗値は一般的に100~104[Ωm]程度を示し,間隙水と乾燥岩石の比抵抗値の間に分布する.温度変化による乾燥岩の比抵抗変化では間隙水に近い小さな比抵抗は説明できないので,これらの値は地下に間隙流体が少なからず存在する可能性を示唆する.間隙流体の量や組成,連結度といった状態を比抵抗値は反映するため,地下の流体分布状況を把握する上で比抵抗構造の推定は重要である.
紀伊半島は,西南日本の前弧側に位置し,活発な地震活動領域( 群発地震・深部低周波地震(微動)・スロースリップ)や多様な3He/4He同位体比の高温泉,深部まで伸びる巨大な酸性岩体などが存在する.これらについては,沈み込むフィリピン海スラブや深部流体との関連性が指摘されている.温泉の成分分析や地震波探査をはじめ様々な調査が行われてきたが,上記のテクトニックな特徴とスラブや深部流体との関係について統一的な解釈を得られるまでには至っていない.
この解決を目指し,比抵抗構造探査が複数行われてきた.最新の研究成果であるKinoshita (2018) では通常のMTデータを用いた3-Dモデリングが適用されている.しかし,その結果は、通常のMT法より広域深部の構造を知る上で優れるNetwork-MT法データを用いた2-Dモデリング[Yamaguchi et al. (2009)]と整合的ではなく,深部低周波地震発生領域の比抵抗値については特に異なる見解を示した.そのため, Network-MT法データを用いた3-D解析が待たれていた.
本研究では,Yamaguchi et al. (2009)で使用されたデータを含む紀伊半島において取得されたNetwork-MT法データを再解析し,紀伊半島で初となる,Network-MT法データを用いた3次元広域深部比抵抗構造モデルを推定した.これにより, 3次元的に複雑な構造を持つ紀伊半島の広域深部にわたる地下構造についてより信頼度の高い モデルを明らかにした.得られたモデルと先行研究との比較を行い,未解決であった深部低周波地震発生領域周辺の比抵抗値に関する問題の解明と,紀伊半島の地下深部から表層近くに至るまでの地下流体循環機構についての考察を行い,比抵抗構造モデルと他の地球物理データおよび地球化学データとの統合解釈を行った.本研究で得られた主な成果は以下に示す2点である.
1.先行研究で問題となっていた深部低周波地震発生領域における比抵抗値の決定
先行研究の比抵抗構造モデルと同一の断面では、熊野酸性岩体の一部と考えられる高比抵抗領域とスラブとの境界に深部低周波地震が発生している。
2.広域深部比抵抗構造から推定される紀伊半島での地下流体の寄与
紀伊半島の地下には、熊野酸性岩体と考えられる高比抵抗領域が存在し、地震波高速度領域や高重力異常領域ともよく対応する。また、その高比抵抗領域を囲むように低比抵抗領域が存在し,比抵抗のコントラストが明瞭に表れる西南西―東北東方向の断面を見ると,スラブ上面から地殻表層まで続く顕著な低比抵抗領域が存在した.紀伊半島では,熊野酸性岩体の縁を囲むように高い3He/4He同位体比を示す高温泉が湧出しており,そのことと整合的である.また,その低比抵抗領域のうちスラブ上面周辺では、低比抵抗領域中央部に西南西方向に広角で上昇するFast地震の震源密集域が存在し、流体の上昇経路となっている可能性を示した.また,そのFast地震の震源密集域の直上には,垂直に立ち上るまた別のFast地震の震源密集域が存在し,この領域は高比抵抗領域と低比抵抗領域の境界に位置した.こうした比抵抗構造と震源分布の対応により,紀伊半島の地下における流体の寄与について説明できる可能性を示した.
紀伊半島は,西南日本の前弧側に位置し,活発な地震活動領域( 群発地震・深部低周波地震(微動)・スロースリップ)や多様な3He/4He同位体比の高温泉,深部まで伸びる巨大な酸性岩体などが存在する.これらについては,沈み込むフィリピン海スラブや深部流体との関連性が指摘されている.温泉の成分分析や地震波探査をはじめ様々な調査が行われてきたが,上記のテクトニックな特徴とスラブや深部流体との関係について統一的な解釈を得られるまでには至っていない.
この解決を目指し,比抵抗構造探査が複数行われてきた.最新の研究成果であるKinoshita (2018) では通常のMTデータを用いた3-Dモデリングが適用されている.しかし,その結果は、通常のMT法より広域深部の構造を知る上で優れるNetwork-MT法データを用いた2-Dモデリング[Yamaguchi et al. (2009)]と整合的ではなく,深部低周波地震発生領域の比抵抗値については特に異なる見解を示した.そのため, Network-MT法データを用いた3-D解析が待たれていた.
本研究では,Yamaguchi et al. (2009)で使用されたデータを含む紀伊半島において取得されたNetwork-MT法データを再解析し,紀伊半島で初となる,Network-MT法データを用いた3次元広域深部比抵抗構造モデルを推定した.これにより, 3次元的に複雑な構造を持つ紀伊半島の広域深部にわたる地下構造についてより信頼度の高い モデルを明らかにした.得られたモデルと先行研究との比較を行い,未解決であった深部低周波地震発生領域周辺の比抵抗値に関する問題の解明と,紀伊半島の地下深部から表層近くに至るまでの地下流体循環機構についての考察を行い,比抵抗構造モデルと他の地球物理データおよび地球化学データとの統合解釈を行った.本研究で得られた主な成果は以下に示す2点である.
1.先行研究で問題となっていた深部低周波地震発生領域における比抵抗値の決定
先行研究の比抵抗構造モデルと同一の断面では、熊野酸性岩体の一部と考えられる高比抵抗領域とスラブとの境界に深部低周波地震が発生している。
2.広域深部比抵抗構造から推定される紀伊半島での地下流体の寄与
紀伊半島の地下には、熊野酸性岩体と考えられる高比抵抗領域が存在し、地震波高速度領域や高重力異常領域ともよく対応する。また、その高比抵抗領域を囲むように低比抵抗領域が存在し,比抵抗のコントラストが明瞭に表れる西南西―東北東方向の断面を見ると,スラブ上面から地殻表層まで続く顕著な低比抵抗領域が存在した.紀伊半島では,熊野酸性岩体の縁を囲むように高い3He/4He同位体比を示す高温泉が湧出しており,そのことと整合的である.また,その低比抵抗領域のうちスラブ上面周辺では、低比抵抗領域中央部に西南西方向に広角で上昇するFast地震の震源密集域が存在し、流体の上昇経路となっている可能性を示した.また,そのFast地震の震源密集域の直上には,垂直に立ち上るまた別のFast地震の震源密集域が存在し,この領域は高比抵抗領域と低比抵抗領域の境界に位置した.こうした比抵抗構造と震源分布の対応により,紀伊半島の地下における流体の寄与について説明できる可能性を示した.