日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG46] 岩石―流体相互作用の新展開:表層から沈み込み帯深部まで

2024年5月29日(水) 10:45 〜 12:15 301B (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:岡本 敦(東北大学大学院環境科学研究科)、武藤 潤(東北大学大学院理学研究科地学専攻)、片山 郁夫(広島大学大学院先進理工系科学研究科地球惑星システム学プログラム)、中島 淳一(東京工業大学理学院地球惑星科学系)、座長:中島 淳一(東京工業大学理学院地球惑星科学系)、武藤 潤(東北大学大学院理学研究科地学専攻)

11:15 〜 11:30

[SCG46-18] 沈み込み帯の条件におけるアンチゴライト蛇紋岩の摩擦特性

*竹縄 智広1武藤 潤1澤 燦道1、Julien Gasc2、Alexandre Schubnel2 (1.東北大学大学院理学研究科地学専攻、2.パリ高等師範学校)

キーワード:沈み込み帯、断層、アンチゴライト、摩擦特性

地震波トモグラフィーと変成岩岩石学から,沈み込み帯のマントルウェッジ領域は海洋スラブから放出された水との加水反応によって,アンチゴライト蛇紋岩が形成されていると指摘されている(Matsubara et al., 2009; Obara et al., 2011; Yamasaki and Seno, 2003).蛇紋岩が存在しうる領域では地震活動が観測されている.地震の発生様式や発生パターンには断層面の強度が影響するため,地球深部における地震活動の理解において蛇紋岩の摩擦特性について理解することは重要である.本研究では蛇紋岩の摩擦特性を明らかにするため,Griggs型固体圧変形試験機を用いて沈み込み帯の温度・圧力条件で蛇紋岩の摩擦実験を行った.実験試料には高温型蛇紋石であるアンチゴライトを主体とした蛇紋岩を用い,試料中央に長軸方向から45°のプレカット面を設定した.温度は500 ℃,封圧は500–1500 MPaとし,アンチゴライトの安定領域内で行った.剪断方向のすべり速度は0.14, 1.4, 14(μm/s)の3段階を設定した.実験の結果,蛇紋岩の摩擦強度は400 MPa未満を示し,いずれも安定すべりであった.摩擦係数は0.1–0.2程度と低い値となった.FE-SEM観察の結果,プレカット面(すべり面)が実験前に比べ平滑になっていた.また平滑な部分を拡大すると直径1 μm未満の細粒な粒子が表面を覆っている様子が観察された.さらにこの平滑な部分についてラマン分析を行ったところ,脱水の証拠は確認されなかった.本研究で得られた低い蛇紋岩の強度は,類似した条件で粉末試料を用いた先行研究(例えばProctor and Hirth, 2016)の報告に比べ低くなった.本実験で報告された蛇紋岩の摩擦特性は,マントルウェッジ周辺でのスロースリップイベントを含む多様な地震活動に影響を及ぼす可能性がある.