17:15 〜 18:45
[SCG46-P03] 蛇紋岩とかんらん岩の弾性波速度と電気比抵抗の測定から考察する沈み込み帯での流体移動

キーワード:超塩基性岩、物性、異方性
沈み込み帯で起こるさまざまな現象には水が関わっている.蛇紋岩の形成もそのうちの一つである.沈み込むプレートがマントルウェッジに水を放出する際,プレートの表面やマントルウェッジと水が反応し蛇紋岩が形成される.特にプレートの表面に形成される蛇紋岩は強く変形を受け,片理面が発達している.また片理面を持つ岩石は,片理面に沿ってクラックが発達することがよく知られている.そこで,本研究では片理の発達した蛇紋岩とかんらん岩の弾性波速度と電気比抵抗の方位依存性を調べることで,沈み込み帯での流体の移動経路や地震波異方性の成員について考察した.
本研究では,長崎県野母半島の変形したアンチゴライト主体の蛇紋岩と愛媛県別子村保土野谷の変形したかんらん岩を実験試料として用いた.これらの岩石は顕微鏡下でも強い鉱物の定向配列を示す.その試料を片理面に平行な方向と垂直な方向で加工した.それらの試料を用いて,静水圧下で弾性波速度(VP,VS)と電気比抵抗の同時測定を行い,岩石の方位依存性を評価した.P波速度は直交する3成分,S波速度は直交する3成分に対して2つの振動方向(合わせて6成分),電気比抵抗は直交する2成分の測定を行った.実験には容器内変形透水試験機を用い,封圧を5 MPaから200 MPaまで段階的に加圧し圧力効果を調べた.流体には0.5 mol/LのNaCl溶液を用い,流体圧は1 MPaに制御して室温下で実験を行った.
蛇紋岩,かんらん岩ともにP波速度は片理面に平行に伝播する方向が,片理面に垂直に伝播する方向よりも速い傾向を示した.またかんらん岩は,線構造に平行な方向は最もP波速度が速い傾向を示した.S波速度は片理面に平行に伝播振動する成分が,片理面を横切る伝播方向や振動方向に比べて速い傾向を示した.これらの結果は,片理面に平行な空隙が多く存在することで説明できる.これらの結果から,P波とS波の異方性を計算し,2つのサンプルについて比較した.P波とS波の異方性はともに蛇紋岩の方がかんらん岩よりも異方性が大きい傾向を示した.また,60 MPaまでの加圧によって異方性が急激に減少し,その後緩やかに変化することから,クラックの多くは60MPaで閉じたと考えられる.弾性波速度の異方性は200MPaまで加圧しても10%~20%程度残るが,200 MPaで多くのクラックが閉じたとすると,これは鉱物の異方性によるものだと考えられる.蛇紋岩の電気比抵抗は,片理面に垂直な方向よりも片理面に平行な方向で測った場合の方が1桁程度低い傾向を示した.一方,かんらん岩の電気比抵抗は片理面に垂直な方向と平行な方向でほぼ値が変わらず,蛇紋岩の垂直成分とほぼ同じ値を示した.
多成分の弾性波速度の解析からバルクの弾性定数テンソルを計算し,地震波速度極点図を作成した.この極点図から異方的な岩石中の地震波速度は,その伝播方向や振動方向に強く依存することが示された.電気比抵抗の結果から,かんらん岩よりも蛇紋岩のほうが,片理面に平行な方向のクラックの連結度が高く,より水を通しやすいと考えられる.これらの結果と地震波トモグラフィーの観測から,蛇紋岩の分布や沈み込むプレート付近での流体の移動の議論を行う.
本研究では,長崎県野母半島の変形したアンチゴライト主体の蛇紋岩と愛媛県別子村保土野谷の変形したかんらん岩を実験試料として用いた.これらの岩石は顕微鏡下でも強い鉱物の定向配列を示す.その試料を片理面に平行な方向と垂直な方向で加工した.それらの試料を用いて,静水圧下で弾性波速度(VP,VS)と電気比抵抗の同時測定を行い,岩石の方位依存性を評価した.P波速度は直交する3成分,S波速度は直交する3成分に対して2つの振動方向(合わせて6成分),電気比抵抗は直交する2成分の測定を行った.実験には容器内変形透水試験機を用い,封圧を5 MPaから200 MPaまで段階的に加圧し圧力効果を調べた.流体には0.5 mol/LのNaCl溶液を用い,流体圧は1 MPaに制御して室温下で実験を行った.
蛇紋岩,かんらん岩ともにP波速度は片理面に平行に伝播する方向が,片理面に垂直に伝播する方向よりも速い傾向を示した.またかんらん岩は,線構造に平行な方向は最もP波速度が速い傾向を示した.S波速度は片理面に平行に伝播振動する成分が,片理面を横切る伝播方向や振動方向に比べて速い傾向を示した.これらの結果は,片理面に平行な空隙が多く存在することで説明できる.これらの結果から,P波とS波の異方性を計算し,2つのサンプルについて比較した.P波とS波の異方性はともに蛇紋岩の方がかんらん岩よりも異方性が大きい傾向を示した.また,60 MPaまでの加圧によって異方性が急激に減少し,その後緩やかに変化することから,クラックの多くは60MPaで閉じたと考えられる.弾性波速度の異方性は200MPaまで加圧しても10%~20%程度残るが,200 MPaで多くのクラックが閉じたとすると,これは鉱物の異方性によるものだと考えられる.蛇紋岩の電気比抵抗は,片理面に垂直な方向よりも片理面に平行な方向で測った場合の方が1桁程度低い傾向を示した.一方,かんらん岩の電気比抵抗は片理面に垂直な方向と平行な方向でほぼ値が変わらず,蛇紋岩の垂直成分とほぼ同じ値を示した.
多成分の弾性波速度の解析からバルクの弾性定数テンソルを計算し,地震波速度極点図を作成した.この極点図から異方的な岩石中の地震波速度は,その伝播方向や振動方向に強く依存することが示された.電気比抵抗の結果から,かんらん岩よりも蛇紋岩のほうが,片理面に平行な方向のクラックの連結度が高く,より水を通しやすいと考えられる.これらの結果と地震波トモグラフィーの観測から,蛇紋岩の分布や沈み込むプレート付近での流体の移動の議論を行う.