日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG46] 岩石―流体相互作用の新展開:表層から沈み込み帯深部まで

2024年5月28日(火) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:岡本 敦(東北大学大学院環境科学研究科)、武藤 潤(東北大学大学院理学研究科地学専攻)、片山 郁夫(広島大学大学院先進理工系科学研究科地球惑星システム学プログラム)、中島 淳一(東京工業大学理学院地球惑星科学系)

17:15 〜 18:45

[SCG46-P14] 水理-力学-化学連成モデリングによる亀裂内流体流動と岩石物性変化の解明

*澤山 和貴1 (1.京都大学大学院理学研究科附属地球熱学研究施設 )

キーワード:化学的風化、沈殿、浸透率、比抵抗、弾性波速度、Fault-valve model

断層中の流体流動は,その高い透水性と不均質性により,地下の熱・物質輸送を支配している。多くの先行研究から,亀裂内の流れには優先的な流路が形成されること(チャネリング挙動)が明らかとなっている。このチャネリングは,亀裂が閉じるにつれて顕著になる。この様な不均一な流れのため,流速が速いところでは鉱物の溶解が促進し,流れが停滞する領域では鉱物の析出が支配的になる。Fault-valveモデルでは,地震の繰り返し発生周期は鉱物の析出や間隙水圧の変動と解釈されることが多く,このような溶解・沈殿過程が断層強度回復と関連する可能性が考えられる。地質学的観測から鉱物脈形成の時間スケールを推定している例もあるが,地球物理学的観測と地質学的観測の定量的な相関は不明確なままである。地球物理特性(地震波速度や電気比抵抗など)は亀裂の表面状態や間隙水圧に非常に敏感であるため,遠隔モニタリングが可能な地球物理観測によって間隙水圧や化学的変質の程度を評価することができるモデルの構築が可能かもしれない。このため本研究では,水理-力学-化学連成モデリングを構築し,応力上昇や水-岩石反応に伴う亀裂内流体流動や岩石物性の変化を調べた。
まずシミュレーションの入力モデルとして,非整数ブラウン運動から花崗岩の天然亀裂形状に基づいて,フラクタル特性の異なる様々な断層モデルを数値的に生成した。各モデルに対して,half-space based dry contact modelを用いて変形を,modified local cubic lawを用いて亀裂内流体流動を計算した。化学反応はlevel-set法を用いて解析し,物理特性は,modified local cubic lawの考えに基づくresistor networkを用いて推定した。これらの手法では,低い計算コストと高い精度を維持しながら,より大規模な断層を用いた数値解析が可能である。
解析の結果,流路のクリティカルネックで壁面の削れが優先的に発生し,沈殿はより広い流域で発生することが示された。興味深いことに,浸透率は浸食の程度によって大きく変化したが,比抵抗と弾性特性はほぼ一定であった。これらの結果は,浸透率はクリティカルネックの開口部に非常に敏感であるのに対し,電気的・弾性的特性は接触面積により敏感であることを示している。鉱物の析出は接触面積を増加させるため,弾性特性は析出速度と相関があることも示された。