17:15 〜 18:45
[SCG46-P19] 東北地方南部広域の広帯域MT観測網から推定した会津・米沢・吾妻地域地殻比抵抗構造

我々はこれまで東北地方南部で観測された広帯域MTデータを統合し、広域地殻比抵抗構造解析を進めてきた(本山 他, 2019 JpGU; Motoyama et al., 2020 JpGU; Wakao et al., 2023 JpGU)。しかし統合したデータセットは、会津・米沢・吾妻地域の観測が空白となっている。会津・米沢地域は、東北地方太平洋沖地震後に群発地震が活発化した地域であり、Okada et al. (2015) によると、この群発地震域では、深部から浅部への震源のマイグレーションが確認されている。また吾妻山の下深さ20-40 kmでは深部低周波地震が発生しており、どちらの領域も地震活動と流体との関連が示唆されている。しかしMotoyama et al. による比抵抗構造では、群発地震域は1000Ωm程度の高比抵抗を示しており、流体の存在を示唆する結果とはなっていない。一方、その地域のさらに深部15-40 kmには低比抵抗体が存在し、その低比抵抗体の境界部分に深部低周波地震の震源が位置するような構造が得られているが、観測点の空白から分解能の問題がある。本研究ではこの広帯域MT観測の空白域で新たに吾妻山の探査を目的として観測された広帯域MTデータ18観測点(Ichiki et al., 2021)を加え、Usui (2015)による4面体要素有限要素法を用いた3次元インバージョン解析を行い、広域地殻比抵抗構造を再解析した。
チェッカーボードテストを行い、新観測点周辺でのチェッカーブロックの境界の再現度が特に下部地殻付近で大きく向上した(Wakao et al., 2023 JpGU)。新しく得られた比抵抗構造では、会津・米沢地域の群発地震は高比抵抗領域と低比抵抗領域の境界に位置していることがより明瞭になった。群発地震より深部の20-45 kmに位置する低比抵抗体の比抵抗値の極小値は約5 Ωm程度である。この低比抵抗体の直上の深さ5-20 kmに地震波反射面が確認されており(鈴木, 2018 東北大学修士論文)、深部のマグマ溜まりから脱水した流体が浅部へと移動し、高比抵抗体と低比抵抗体の境界で群発地震が発生したことが示唆される。
今回新たに分かったこととして、吾妻山の直下に下部地殻から上部地殻まで連続する鉛直低比抵抗域を確認できた。そしてこの低比抵抗体は上記の会津・米沢群発地震域下の低比抵抗体と一体化している。Ichiki et al. (2021) では、吾妻山の直下5-10 kmに低比抵抗体(<3Ωm)が再現されており、本研究で得られた構造はこの低比抵抗体への深部からの流体の上昇経路を示すような結果となった。
現在は、深部の低比抵抗体の比抵抗値の信頼区間について解析を行なっている。その信頼区間推定に基づいて含水率についての定量的評価を行う予定である。
チェッカーボードテストを行い、新観測点周辺でのチェッカーブロックの境界の再現度が特に下部地殻付近で大きく向上した(Wakao et al., 2023 JpGU)。新しく得られた比抵抗構造では、会津・米沢地域の群発地震は高比抵抗領域と低比抵抗領域の境界に位置していることがより明瞭になった。群発地震より深部の20-45 kmに位置する低比抵抗体の比抵抗値の極小値は約5 Ωm程度である。この低比抵抗体の直上の深さ5-20 kmに地震波反射面が確認されており(鈴木, 2018 東北大学修士論文)、深部のマグマ溜まりから脱水した流体が浅部へと移動し、高比抵抗体と低比抵抗体の境界で群発地震が発生したことが示唆される。
今回新たに分かったこととして、吾妻山の直下に下部地殻から上部地殻まで連続する鉛直低比抵抗域を確認できた。そしてこの低比抵抗体は上記の会津・米沢群発地震域下の低比抵抗体と一体化している。Ichiki et al. (2021) では、吾妻山の直下5-10 kmに低比抵抗体(<3Ωm)が再現されており、本研究で得られた構造はこの低比抵抗体への深部からの流体の上昇経路を示すような結果となった。
現在は、深部の低比抵抗体の比抵抗値の信頼区間について解析を行なっている。その信頼区間推定に基づいて含水率についての定量的評価を行う予定である。