日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG47] 地殻流体と地殻変動

2024年5月28日(火) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:北川 有一(産業技術総合研究所地質調査総合センター地震地下水研究グループ)、小泉 尚嗣(滋賀県立大学)、笠谷 貴史(海洋研究開発機構)、角森 史昭(東京大学大学院理学系研究科地殻化学実験施設)

17:15 〜 18:45

[SCG47-P03] 地震に関連した気泡成長に伴う地下水位変化
-2004年1月~2010年9月の北海道谷地頭温泉の事例-

*服部 匠哉1柴田 智郎2楠本 成寿3 (1.京都大学大学院理学研究科、2.福岡大学理学部、3.京都大学大学院理学研究科附属地球熱学研究施設)

キーワード:地震に伴う地下水位変化、二酸化炭素、気泡成長、地震波の卓越周波数、表面波

地震発生に伴い、多くの場所で地震に関連すると考えられる地下水位の変化がみられることがある。このような水位変化は地震時の断層滑りに伴う静的体積ひずみ変化によるものであると考えられるが、体積ひずみ変化では説明できない事例も多く、他にも様々な水位変化メカニズムが提案されてきている。提案されているメカニズムの一つとして、地震時の地下水中での気泡核形成とその成長がある。地震後の地下水位変化と、気泡成長から予測される水位変化の比較を行っている研究はほとんどないため、本研究では水位変化メカニズムのなかでも気泡核形成とその成長に注目し、調査対象として二酸化炭素の付随が確認されている北海道函館市の谷地頭温泉5号井において2004年1月から2010年9月に記録された水位データを解析した。
水位データの解析から、2種類の変化の時間スケールが異なる水位変化が検出された。ひとつは、5回検出された地震後数日間水位上昇が継続するような水位変化で、もうひとつは地震後数分~1時間で終了するような水位変化で、これは3回検出された。まず初めに、これらの地震後の水位変化は帯水層の透水性変化によるものではないことを確認した。次に、地下水圧変化とのよい相関が報告されている広帯域地震計地震速度波形radial成分を調べると、数日間水位上昇が継続するような水位変化が生じた地震において0.10Hzから1.0Hzの地震波が卓越し、数分~1時間で終了するような水位変化が生じた地震において0.010Hzから0.10Hzの地震波が卓越していることが明らかになった。
地震波形の卓越周波数と温泉水への二酸化炭素の付随を考慮すると、地震後に数日間水位上昇が継続するような比較的長い水位変化は気泡核形成とその成長の寄与があると考えられる。したがって、地下水位変化がみられた地震の地震速度波形radial 成分を用いて地下水圧変化を推定し、気泡成長モデルにより気泡成長量を計算した。その気泡成長量から地下水位の変化量を見積もると、谷地頭温泉5号井において、2004年釧路沖の地震後に最大0.29mの水位上昇が生じるという結果が得られ、これは実際に観測された結果と一致した。また、地震後数分~1時間で終了する継続時間が比較的短い水位変化は気泡成長モデルでは説明が難しく、井戸内における地震波の増幅の寄与があると考えられる。