17:15 〜 18:45
[SCG47-P06] 阿蘇・熊本地域の熱水溶存ガスの時間変化の連続観測
キーワード:熱水溶存ガス、地下水連続観測、深部起源ガス
Aizawa+(2021)で示された当該地域直下にある導電性流体ゾーンC1とC2から供給される深部起源流体は、布田川断層や阿蘇山の火道や周辺の断層を通して地表に到達していると考えられる。そこで、KUM観測点とASO観測点の熱水溶存ガスを連続観測し、深部起源ガスの供給状態が地震活動や火山活動に関連してどのように時間変化するかを考察する。
熱水を大気に触れないように採取してから溶存ガスを抽出し、最後に熱水を排水するための、自動採水・溶存ガス採取装置を製作した。気密が保たれた容器に二つの電磁バルブを取り付け、蠕動ポンプによって排水・吸水・ガス抽出を連続的に行うことができる。抽出した溶存ガスの一部は、市販の残留ガス分析用四重極質量分析計を野外観測用に改造した装置によって組成を分析した。測定された質量数スペクトルは、検出器の感度だけでなく分子のイオン化断面積とクラッキングパターンによって補正し、ガス種の濃度を決定した。質量数スペクトル中の酸素シグナルは溶存ガス中に含まれる大気起源ガスに由来するものと見なし、酸素シグナル強度を出力する標準大気量を計算して質量数スペクトルから差し引く(Giggenbach(1992))ことで、溶存ガス中の深部起源ガスの量を計算した。
KUMの溶存ガス組成は、2021年12月末から緩やかに変化し始め2022年4月に元のレベルに戻った。熱水中の大気起源ガスと深部起源ガスの割合は、2021年12月に緩やかに増加し始め、2022年2月末にピークを迎えた後、2022年4月には元のレベルに回復した。一方、深部起源ガス中の安山岩質マグマ起源と玄武岩質マグマ起源の割合は概ね一定であった。ASOの溶存ガス組成は、2021年10月ごろから不安定になり2021年12月に不可逆に変化した。熱水中の大気起源ガスと深部起源ガスの割合は、2021年12月に不可逆な変化を示した。一方、深部起源ガス中の安山岩質マグマ起源と玄武岩質マグマ起源の割合は概ね一定であった。両観測点の観測期間中、源泉や配管に人為的な操作による源泉への撹乱は記録されていないことから、この変化は溶存ガスの組成変化であると考えて良い。
KUMとASOの位置はおよそ40km離れているにもかかわらず、観測された溶存ガスの変化のタイミングが近接している。観測期間中に当該地域でマグニチュード3.5以上の地震は6回あったが、これらの発震日と関連しているようには見えないので、地震活動によって起きた変化ではないと考えられる。観測された帯水層中の溶存ガス組成の変化を引き起こす原因としては、地殻変動や火山活動が考えられる。当日は、2つの観測点の熱水溶存ガスを連続観測の結果を、地殻変動や火山活動と関連するかについて議論する予定である。
熱水を大気に触れないように採取してから溶存ガスを抽出し、最後に熱水を排水するための、自動採水・溶存ガス採取装置を製作した。気密が保たれた容器に二つの電磁バルブを取り付け、蠕動ポンプによって排水・吸水・ガス抽出を連続的に行うことができる。抽出した溶存ガスの一部は、市販の残留ガス分析用四重極質量分析計を野外観測用に改造した装置によって組成を分析した。測定された質量数スペクトルは、検出器の感度だけでなく分子のイオン化断面積とクラッキングパターンによって補正し、ガス種の濃度を決定した。質量数スペクトル中の酸素シグナルは溶存ガス中に含まれる大気起源ガスに由来するものと見なし、酸素シグナル強度を出力する標準大気量を計算して質量数スペクトルから差し引く(Giggenbach(1992))ことで、溶存ガス中の深部起源ガスの量を計算した。
KUMの溶存ガス組成は、2021年12月末から緩やかに変化し始め2022年4月に元のレベルに戻った。熱水中の大気起源ガスと深部起源ガスの割合は、2021年12月に緩やかに増加し始め、2022年2月末にピークを迎えた後、2022年4月には元のレベルに回復した。一方、深部起源ガス中の安山岩質マグマ起源と玄武岩質マグマ起源の割合は概ね一定であった。ASOの溶存ガス組成は、2021年10月ごろから不安定になり2021年12月に不可逆に変化した。熱水中の大気起源ガスと深部起源ガスの割合は、2021年12月に不可逆な変化を示した。一方、深部起源ガス中の安山岩質マグマ起源と玄武岩質マグマ起源の割合は概ね一定であった。両観測点の観測期間中、源泉や配管に人為的な操作による源泉への撹乱は記録されていないことから、この変化は溶存ガスの組成変化であると考えて良い。
KUMとASOの位置はおよそ40km離れているにもかかわらず、観測された溶存ガスの変化のタイミングが近接している。観測期間中に当該地域でマグニチュード3.5以上の地震は6回あったが、これらの発震日と関連しているようには見えないので、地震活動によって起きた変化ではないと考えられる。観測された帯水層中の溶存ガス組成の変化を引き起こす原因としては、地殻変動や火山活動が考えられる。当日は、2つの観測点の熱水溶存ガスを連続観測の結果を、地殻変動や火山活動と関連するかについて議論する予定である。