09:15 〜 09:30
[SCG48-02] 実海域試験を通したUAVベースのGNSS-A観測システムのスペック評価

キーワード:GNSS-A、音響測距、海底地殻変動観測、UAV、飛行艇
日本近海において、海上保安庁は海底地殻変動観測網SGO-A(Seafloor Geodetic Observation - Array)を運用している。SGO-AはGNSS(Global Navigation Satellite System)と水中音響測距技術を組み合わせて海底地殻変動をセンチメートルレベルで検出することができるGNSS-A(Global Navigation Satellite System – Acoustic ranging combination)技術を利用している。SGO-Aから得た海底地殻変動観測データは、津波を発生させる可能性のある巨大地震のメカニズムを理解する上で極めて重要である。
GNSS-Aは、船舶やブイなどの海上プラットフォームとあらかじめ海底に設置してある海底基準局間の音響測距を繰り返し行い、海底基準局の位置を決定することにより海底の地殻変動を検出する。海底基準局は、海上プラットフォームからの音響信号を受信すると、その約1秒後に受信した信号をそのまま送り返す。この信号の往復によって、海上プラットフォームと海底局の間の測距が行われる。
現在、GNSS-A観測は主に調査船によって行われているが、他の海上プラットフォームとして飛行艇型のUAV(Unmanned Aerial Vehicle)の利用について研究が進められている(Yokota et al., 2023)。飛行艇型のUAVは、航空機として時速80km以上(船舶の約4倍)での高速移動が可能であることに加えて、海上にて離着水及び移動することが可能であるため、水中音響測距を行うGNSS-A観測に利用可能である。これにより、金銭、エネルギー、時間などのリソースの削減が可能になるほか、観測機器及びデータの高速移動によって観測データの頻度、リアルタイム性の向上などが臨まれる。本研究では、UAVにGNSS-A観測機器を実装し、実験水槽及び実海域におけるUAVベースのGNSS-A観測実験を通して観測システムとしてのスペック評価を行う。
理想的な環境下において音響測距が成立することの確認及び、音響測距が可能なUAVの姿勢等の特性の評価を行うため、2023年11月に東京大学柏キャンパスの生産技術研究所海洋工学水槽にて、UAVと水槽の底板に設置した疑似海底局との音響測距の予備実験を行った。UAVは水面に浮かべた状態で移動台車に固定し、水平方向に移動できるようにした。UAVを水平方向に移動し、水深約4mの疑似海底局との音響測距を行うことを繰り返した。試験の結果、音響の射出角が約30度から40度において音響通信が成立することが明らかになった。また、UAVに搭載されているソナーは、着水時の衝撃から保護するためポリカーボネートボードによって外装を保護されている。このボードの有無による影響を評価するため、衝撃保護用のボードを外して同様の実験を行ったが、ボードの有無による音響測距成立射出角及び音響信号への質への影響は見られなかった。
前述の水槽予備実験の結果を踏まえ、2024年1月に伊東沖にて実海域試験を実施した。伊東沖のSGO-Aの実際の観測点において、UAVに搭載された観測システムにて海底基準局との通信を行った。静止状態では安定した音響通信が可能であったのに対し、航行中では筐体付近に発生する気泡の影響により通信はできなかった。そこで、構造上気泡発生の原因となる衝撃保護用のポリカーボネートボードを取り外し、筐体の一部に改修を加える対策を行ったところ、不安定ではあるものの航行しながら海底基準局との通信に成功した。
以上より、実海域試験を通してUAVベースの観測システムにて航行しながら海底基準局との通信に成功した。一方で、UAV筐体付近における音響信号の妨げとなる気泡の発生など、今後の課題も明らかになった。
GNSS-Aは、船舶やブイなどの海上プラットフォームとあらかじめ海底に設置してある海底基準局間の音響測距を繰り返し行い、海底基準局の位置を決定することにより海底の地殻変動を検出する。海底基準局は、海上プラットフォームからの音響信号を受信すると、その約1秒後に受信した信号をそのまま送り返す。この信号の往復によって、海上プラットフォームと海底局の間の測距が行われる。
現在、GNSS-A観測は主に調査船によって行われているが、他の海上プラットフォームとして飛行艇型のUAV(Unmanned Aerial Vehicle)の利用について研究が進められている(Yokota et al., 2023)。飛行艇型のUAVは、航空機として時速80km以上(船舶の約4倍)での高速移動が可能であることに加えて、海上にて離着水及び移動することが可能であるため、水中音響測距を行うGNSS-A観測に利用可能である。これにより、金銭、エネルギー、時間などのリソースの削減が可能になるほか、観測機器及びデータの高速移動によって観測データの頻度、リアルタイム性の向上などが臨まれる。本研究では、UAVにGNSS-A観測機器を実装し、実験水槽及び実海域におけるUAVベースのGNSS-A観測実験を通して観測システムとしてのスペック評価を行う。
理想的な環境下において音響測距が成立することの確認及び、音響測距が可能なUAVの姿勢等の特性の評価を行うため、2023年11月に東京大学柏キャンパスの生産技術研究所海洋工学水槽にて、UAVと水槽の底板に設置した疑似海底局との音響測距の予備実験を行った。UAVは水面に浮かべた状態で移動台車に固定し、水平方向に移動できるようにした。UAVを水平方向に移動し、水深約4mの疑似海底局との音響測距を行うことを繰り返した。試験の結果、音響の射出角が約30度から40度において音響通信が成立することが明らかになった。また、UAVに搭載されているソナーは、着水時の衝撃から保護するためポリカーボネートボードによって外装を保護されている。このボードの有無による影響を評価するため、衝撃保護用のボードを外して同様の実験を行ったが、ボードの有無による音響測距成立射出角及び音響信号への質への影響は見られなかった。
前述の水槽予備実験の結果を踏まえ、2024年1月に伊東沖にて実海域試験を実施した。伊東沖のSGO-Aの実際の観測点において、UAVに搭載された観測システムにて海底基準局との通信を行った。静止状態では安定した音響通信が可能であったのに対し、航行中では筐体付近に発生する気泡の影響により通信はできなかった。そこで、構造上気泡発生の原因となる衝撃保護用のポリカーボネートボードを取り外し、筐体の一部に改修を加える対策を行ったところ、不安定ではあるものの航行しながら海底基準局との通信に成功した。
以上より、実海域試験を通してUAVベースの観測システムにて航行しながら海底基準局との通信に成功した。一方で、UAV筐体付近における音響信号の妨げとなる気泡の発生など、今後の課題も明らかになった。