日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG48] 海洋底地球科学

2024年5月29日(水) 10:45 〜 12:00 302 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:沖野 郷子(東京大学大気海洋研究所)、田所 敬一(名古屋大学地震火山研究センター)、座長:森重 学(東京大学地震研究所)、志藤 あずさ(岡山理科大学)

11:30 〜 11:45

[SCG48-09] 海洋プレート底部における小規模対流の開始:枯渇マントルの影響

*千田 紅葉1森重 学2田阪 美樹1 (1.国立大学法人静岡大学、2.東京大学地震研究所)

キーワード:海洋プレート、小規模対流、組成、密度、粘性率

長い間、古い海洋底では観測から得られる海底深度、熱流量が半無限体冷却モデルの予測から外れることが知られてきた。その説明として、海洋プレート底面の温度が一定であると仮定するプレートモデルが提唱されている。このプレートモデルの物理的な説明として、多くの先行研究で小規模対流が考えられているが、それらの多くは温度による影響のみに着目している。しかし、枯渇マントルが溶けていないマントルに比べて低い密度と高い粘性率をもつことからも分かるように、組成の影響も重要である。したがって、枯渇マントルの存在を考慮することによって小規模対流の振る舞いが変化することが期待される。本研究では、海洋プレート下における小規模対流開始時間への枯渇マントルの影響について数値モデリングを用いて調べる。
モデル領域としてプレート運動方向に垂直な二次元断面を設定し、最初一様に熱いマントルを地表面から冷やすという問題設定を考える。マントルの最上部に、溶けていないマントルと比較して低い密度と高い粘性率の両方、またはどちらか一方を持つ枯渇マントルを仮定する。温度と岩石の速度の時空間変化は、質量保存則、運動量保存則、エネルギー保存則の式を解くことによって得られる。小規模対流の開始時間は計算された温度と半無限体冷却モデルで予測される温度の差によって決定した。
その結果、小規模対流の開始時間は部分溶融による組成変化の影響を考慮した場合に遅くなり、その影響はマントルの温度が高くなるほど大きくなることが明らかになった。小規模対流の発生は枯渇マントルの有無に関わらず、マントルの温度が高くなるほど早くなる。しかし先行研究では、海底深度およびレイリー波位相速度の観測と対流安定性の解析から、枯渇マントルを考慮した場合、小規模対流発生はマントルの温度が低いほど早くなると示唆している。このような結果の違いは、対流安定性の解析が熱組成対流の複雑な振る舞いを完全には捉えられないことを示唆している。さらに、メルト溶融による粘性率変化がない場合、枯渇マントルの厚さの水平変化は早い段階で消えることもわかった。