17:15 〜 18:45
[SCG48-P02] 海底地殻変動観測のための軽量-小型えい航ブイシステム「初号機」: 軽量・低ノイズ化の追求
キーワード:GNSS/音響測距結合方式、海底地殻変動、駿河湾、えい航ブイ
GNSS-音響結合方式(GNSS-A)の海底地殻変動観測に用いる軽量-小型のえい航ブイシステムを開発した。
GNSS-Aの海底地殻変動観測において、高精度・高効率の観測のために、短時間で広い範囲をカバーし、かつよくコントロールされた航跡を描ける海上システムが有効である(Ishikawa et al. 2020)。この点で専用船の船底にトランスデューサを内蔵し、高速(~7 knot)で航行しながら高いS-N比の音響信号を送受信できるハルマウントシステム (Sato et al., 2013)は大きな成功を収めている。ただしこのシステムには船底のトランスデューサと高価なジャイロコンパスを備えた専用の観測船が必要である。チャーターした小型船舶でも同じことができれば、観測はより簡便になり、その機会を格段に増やすことができる。またそれにより、観測精度の向上も期待できる。
そこで我々は、専用船を必要とせず、人力で運搬・取りまわしができ、高速で曳航しながら音響信号を送受信できる軽量-小型えい航ブイシステム「零号機」の開発を行った(生田ほかJpGU2023)。零号機はステンレスポールの骨組みとFRPでコートした発泡ポリウレタンの浮体を組み合わせ、重量25 kg、1.5 m ×1.7 m×0.4 mの軽量コンパクトなブイである。GNSSアンテナ、MEMSジャイロコンパス、音響トランスデューサ、ジャイロコンパス用のバッテリーのみを搭載し、他の記録機器、コントローラは全て母船に設置することで軽量化を計った。作業員2名程度で取り回しでき、5 knotに近い速度でえい航しながら十分な信号-ノイズ比で音響測距が可能であった。
その後、更なる軽量化と可搬性の向上、低ノイズ化を目指して「初号機」を製作した。初号機はアルミポールの骨組みにEVAフォーム/ポリエチレンフォームの浮体を組み合わせ、重量13 kg、0.9 m × 1.7 m × 0.3 mと更に軽量化、小サイズ化した。ジャイロコンパス用の電源も重量を減らすために除去し、母船からケーブルで給電した。FRPの外殻の除去は軽量化だけでなく音響ノイズの低減にも寄与し、5 knotにおける平均ノイズレベルは零号機の約1/3に低下した。零号機では浮体の水上部が風を受けて傾く傾向があったが、初号機は浮体の水上部を小さくすることで問題を解消した。
本発表では零号機と初号機を用いた駿河湾での2023年4月~2023年12月の5回のGNSS-A観測の結果(2024年2-4月でも3回実施予定)も紹介する。
<謝辞>
本研究はJSPS科研費22H01335の助成を受けたものです。東北大学木戸元之さまには初号機の設計に際して、また海上保安庁の渡邉俊一さまにはKinematicGNSS解析に際して有用なアドバイスをいただきました。記して感謝いたします。
<参考文献>
Ishikawa et al. (2020). History of on-board equipment improvement for GNSS-A observation with focus on observation frequency. Front. Earth Sci. 8:150. doi: 10.3389/feart.2020.00150
Sato et al. (2013). Interplatecoupling off northeastern Japan before the 2011 Tohoku-oki earthquake, inferred from seafloor geodetic data,J. Geophys.Res. Solid Earth,118, 3860–3869, doi:10.1002/jgrb.50275
生田ほか(2023).海底地殻変動観測のための超軽量-小型えい航ブイシステムの開発.JpGU2023, SCG52-02 abstract
GNSS-Aの海底地殻変動観測において、高精度・高効率の観測のために、短時間で広い範囲をカバーし、かつよくコントロールされた航跡を描ける海上システムが有効である(Ishikawa et al. 2020)。この点で専用船の船底にトランスデューサを内蔵し、高速(~7 knot)で航行しながら高いS-N比の音響信号を送受信できるハルマウントシステム (Sato et al., 2013)は大きな成功を収めている。ただしこのシステムには船底のトランスデューサと高価なジャイロコンパスを備えた専用の観測船が必要である。チャーターした小型船舶でも同じことができれば、観測はより簡便になり、その機会を格段に増やすことができる。またそれにより、観測精度の向上も期待できる。
そこで我々は、専用船を必要とせず、人力で運搬・取りまわしができ、高速で曳航しながら音響信号を送受信できる軽量-小型えい航ブイシステム「零号機」の開発を行った(生田ほかJpGU2023)。零号機はステンレスポールの骨組みとFRPでコートした発泡ポリウレタンの浮体を組み合わせ、重量25 kg、1.5 m ×1.7 m×0.4 mの軽量コンパクトなブイである。GNSSアンテナ、MEMSジャイロコンパス、音響トランスデューサ、ジャイロコンパス用のバッテリーのみを搭載し、他の記録機器、コントローラは全て母船に設置することで軽量化を計った。作業員2名程度で取り回しでき、5 knotに近い速度でえい航しながら十分な信号-ノイズ比で音響測距が可能であった。
その後、更なる軽量化と可搬性の向上、低ノイズ化を目指して「初号機」を製作した。初号機はアルミポールの骨組みにEVAフォーム/ポリエチレンフォームの浮体を組み合わせ、重量13 kg、0.9 m × 1.7 m × 0.3 mと更に軽量化、小サイズ化した。ジャイロコンパス用の電源も重量を減らすために除去し、母船からケーブルで給電した。FRPの外殻の除去は軽量化だけでなく音響ノイズの低減にも寄与し、5 knotにおける平均ノイズレベルは零号機の約1/3に低下した。零号機では浮体の水上部が風を受けて傾く傾向があったが、初号機は浮体の水上部を小さくすることで問題を解消した。
本発表では零号機と初号機を用いた駿河湾での2023年4月~2023年12月の5回のGNSS-A観測の結果(2024年2-4月でも3回実施予定)も紹介する。
<謝辞>
本研究はJSPS科研費22H01335の助成を受けたものです。東北大学木戸元之さまには初号機の設計に際して、また海上保安庁の渡邉俊一さまにはKinematicGNSS解析に際して有用なアドバイスをいただきました。記して感謝いたします。
<参考文献>
Ishikawa et al. (2020). History of on-board equipment improvement for GNSS-A observation with focus on observation frequency. Front. Earth Sci. 8:150. doi: 10.3389/feart.2020.00150
Sato et al. (2013). Interplatecoupling off northeastern Japan before the 2011 Tohoku-oki earthquake, inferred from seafloor geodetic data,J. Geophys.Res. Solid Earth,118, 3860–3869, doi:10.1002/jgrb.50275
生田ほか(2023).海底地殻変動観測のための超軽量-小型えい航ブイシステムの開発.JpGU2023, SCG52-02 abstract