日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG48] 海洋底地球科学

2024年5月29日(水) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:沖野 郷子(東京大学大気海洋研究所)、田所 敬一(名古屋大学地震火山研究センター)

17:15 〜 18:45

[SCG48-P36] 北大西洋遠洋性粘土の地球化学的特徴およびレアアース資源としての可能性の検討

*高田 直翔1安川 和孝1、寺内 大貴1小笠原 光基1Tampah Marshel1森 駿介1吉田 頌1矢野 萌生2,1町田 嗣樹2,1、芦田 果奈2桑原 佑典1,2大田 隼一郎1,2藤永 公一郎2,1中村 謙太郎1,2加藤 泰浩1,2 (1.東京大学大学院工学系研究科、2.千葉工業大学次世代海洋資源研究センター)

キーワード:北大西洋、遠洋性粘土、レアアース泥、全岩化学組成、海底鉱物資源

レアアース元素に富んだ深海堆積物である「レアアース泥」は,南東太平洋および中央北太平洋の広域に広く分布している [1].レアアース元素は様々なハイテク産業に必要不可欠であるため,レアアース泥は新たな海底鉱物資源として注目されている [1].さらに2016年には,南鳥島周辺の日本の排他的経済水域内において,総レアアース濃度が6800 ppmに達する世界最高濃度のレアアース泥が発見された [2].また,中央および東インド洋においてもレアアース泥の存在が確認されている [3,4].これまで太平洋とインド洋においては,レアアース泥の分布や起源について多くの研究がなされてきた [1–5].しかし一方で,大西洋においてレアアース泥の存在が報告されているのは数地点の表層付近の堆積物のみであり [6],深度方向のレアアース濃度分布は明らかになっていない.
本研究では,過去にDeep Sea Drilling Project/Ocean Drilling Programにて北大西洋で採取された深海堆積物のコア試料を分析した.主要元素と微量元素をそれぞれXRFとICP-MSで分析し,全岩化学組成データセットを構築した.総レアアース濃度の最高値は,北東大西洋の海底面下330 mにおける868 ppmであった.元素間散布図から,北大西洋堆積物のレアアースに富んだ層では,生物源リン酸カルシウムだけでなく海水起源成分も,レアアース濃度を含む全岩化学組成に大きく寄与していることが示唆された.海水からのレアアース沈積を簡単なフラックスモデルで検討した結果,本研究で得られた堆積物の全岩レアアース濃度を説明するために必要となる堆積速度の条件が,各航海レポートから見積もった実際の堆積速度と整合的であることが示された.以上のことから,北大西洋におけるレアアース濃集は堆積速度に支配されていることが示唆される.他の海域も対象に含めたさらなる調査が必要ではあるものの,本研究で分析した範囲では,北大西洋遠洋性粘土のレアアース資源としての可能性は太平洋に比べると限定的であるといえる.

[1] Kato et al. (2011) Nature Geoscience, 4, 535–539. [2] Iijima et al. (2016) Geochemical Journal, 50, 557–573. [3] Yasukawa et al. (2014) Journal of Asian Earth Sciences, 93, 25–36. [4] Zhang et al. (2017) Journal of Rare Earths, 35, 1047–1058. [5] Liao et al. (2022) Chemical Geology, 595, 120792, [6] Menendez et al. (2017) Ore Geology Reviews, 87, 100–113.