17:15 〜 18:45
[SCG48-P38] 東青ヶ島海底熱水性重晶石のESR及び放射非平衡年代測定
キーワード:年代測定、重晶石、ESR、放射非平衡、海底熱水
海底熱水域の活動年代は,鉱床の資源探査の可能性や,熱水を熱源として生きる生物群集の消長を議論する上で重要なデータを提供する.本研究グループは,熱水中のBaが海水中の硫酸イオンと反応して生成する重晶石 (BaSO4) を用いて,実用的に電子スピン共鳴(ESR)によって年代測定が行えることを初めて見出した.重晶石にはBaを置き換えてRaが含まれるため,Raを用いた放射非平衡 (226Ra-210Pb 及び228Ra-228Th) 年代も得られる.これら3つの手法を合わせて,これまで,沖縄及び伊豆,小笠原の各海底熱水域から採取された鉱石に含まれる重晶石の年代測定を組織的に行ってきた.
伊豆,小笠原諸島の一つである青ヶ島の東方で2015年に新たに海底熱水域(東青ヶ島海底熱水域)が発見され,採取された鉱石中に高濃度の金が含まれることがわかった.この濃集機構を調べるために研究が進められてきており,2023年6月に,海洋研究開発機構によって,海底広域研究船「かいめい」による KM23-08_09C 航海が実施された.この航海において採取された鉱石に含まれる重晶石を用いて,放射非平衡年代及びESR年代を求めることを試みた.今回,重晶石の含有量の高い試料を選び,Central Coneサイトから1試料,Eastサイトから2試料を分析した.
潜水艇で採取した鉱石試料を切断し、さらにその一部を割って数cmのサイズとした.脱イオン水に浸して質量を測定した後,乾燥させて質量を測定し,含水量を求めた.試料を砕いて20gを取り,低バックグラウンドガンマ線分光測定により,バルクのRa濃度を求めた.その後,化学処理により重晶石を抽出し,数段階のガンマ線の照射を行った.ESR測定を行って,SO3- ラジカルの信号強度を計測し,その線量応答から自然放射線による総被曝線量を求めた.さらに,抽出した重晶石を,低バックグラウンド純Ge半導体ガンマ線分光装置を使用して分析し,含まれる放射性核種(226Ra, 228Ra, 228Th, 210Pb)の定量を行った.求められた放射性核種の量から重晶石が受けた自然放射線の年間線量率を計算し,核種の年代による減衰を考慮して年間線量率の変化を計算し,ESR年代を求めた.また,放射非平衡年代を算出した.
得られたESR年代によれば,この熱水域は1000年ほどの歴史を持つことになるが,放射非平衡年代とは一致しない.重晶石の蓄積が最近まで継続していたためにこのような結果になったことが考えられる.
伊豆,小笠原諸島の一つである青ヶ島の東方で2015年に新たに海底熱水域(東青ヶ島海底熱水域)が発見され,採取された鉱石中に高濃度の金が含まれることがわかった.この濃集機構を調べるために研究が進められてきており,2023年6月に,海洋研究開発機構によって,海底広域研究船「かいめい」による KM23-08_09C 航海が実施された.この航海において採取された鉱石に含まれる重晶石を用いて,放射非平衡年代及びESR年代を求めることを試みた.今回,重晶石の含有量の高い試料を選び,Central Coneサイトから1試料,Eastサイトから2試料を分析した.
潜水艇で採取した鉱石試料を切断し、さらにその一部を割って数cmのサイズとした.脱イオン水に浸して質量を測定した後,乾燥させて質量を測定し,含水量を求めた.試料を砕いて20gを取り,低バックグラウンドガンマ線分光測定により,バルクのRa濃度を求めた.その後,化学処理により重晶石を抽出し,数段階のガンマ線の照射を行った.ESR測定を行って,SO3- ラジカルの信号強度を計測し,その線量応答から自然放射線による総被曝線量を求めた.さらに,抽出した重晶石を,低バックグラウンド純Ge半導体ガンマ線分光装置を使用して分析し,含まれる放射性核種(226Ra, 228Ra, 228Th, 210Pb)の定量を行った.求められた放射性核種の量から重晶石が受けた自然放射線の年間線量率を計算し,核種の年代による減衰を考慮して年間線量率の変化を計算し,ESR年代を求めた.また,放射非平衡年代を算出した.
得られたESR年代によれば,この熱水域は1000年ほどの歴史を持つことになるが,放射非平衡年代とは一致しない.重晶石の蓄積が最近まで継続していたためにこのような結果になったことが考えられる.